ずうっとここにいて良いよ。声と共に出されたスープは世界中のどんな液体より温かかった。ひんやりとした機能性重視の205号室は彼女のフワフワした髪から想像し難い。アンバランスで美しかった。「アンバランスじゃないか。描き直せ。」美術の高山の声が頭の中をぐるぐる巡る。私は成績が良い。私には『成績が良い』しかない。スープをもう一口飲んだ。あれ、嘘、涙だ。涙が出ている。咄嗟に頭を守る。5秒経っても少しの衝撃もこない。わ、ごめんなさい、咄嗟に、あの、いつも泣いたら、叩かれてて、あ、これ言うのはダメで、毎回、ごめんなさい、とても声が小さくて、聞こえないですよね、ごめんなさい、咄嗟に手で、頭を、守ろうとしてしまったんです、あれ、温かい。腕だ。抱き締められている。ああ、世界で2番目に温かかった。少しだけ眠いかもしれない。頭の片隅で考えていた。



スープは残してしまった。明日食べましょう。うん。



なんのシャンプーを使っているのだろう。