そう言うとマジシャンは右手にコインを握った。


「それじゃよく見ててくださいね。」


なぁマジックバーとやら、コインが消えるマジックなんざ40年の人生で何度見たことか。とは言えない。ふむふむそれらしい顔をして右手に魅入る。これが1番疲れない。悲しい。どっちが客だか。


「1、2、はいっ!!」


窓の外。向かいのビルが音も無く消え去った。


マティーニのおかわりをください。