マイチが処刑された次の日から処刑塔の壁に紙が貼られるようになった。小さめの文字。機関からの御達しだろうが、マイチ以外のやつが字の読み書きなんてできるわけねぇだろ。俺たちに何か伝えたいんだろうがザマァみやがれ機関の犬が。涙が出てくる。


紙は、剥がしても剥がしても毎日貼られた。「マイチを返せ」と心の中で叫びながら剥がすことしかできなかった。「わかったから勉強しなよ笑」剥がす度にマイチの声が聞こえた。澄んでいるマイチの声が聞こえた。


いつものように紙を剥がした夕刻、ふと思った。この紙は一体いつ、誰が貼ってやがんだ。処刑塔の周りは真夜中まで常に俺たちや盗賊グループがウロウロしてんのに不思議と機関のやつを見ることがない。貼るやつを締め上げてボコボコにすりゃ紙を貼られることもなくなるだろう。監視だ。ナメやがって。見つけ出してやる。久々に心臓が高鳴るのを感じた。


満月が向こうの山に沈もうとする頃、半分夢の中にいた俺の視界の端に穴が現れた。え。穴だ。空間に穴。虫達がやけに静かになった。穴から青スーツを着たキノコ頭のヘンテコな男が出てきて紙を貼った。






「おい。」声をかけた俺に「わ!!!見つかっちゃったらもう辞めときますね!!!じゅうがつよっかです!!!来てください!!!お願いします!!!」めちゃくちゃデカイ声でそう言った男は駆け足で穴の中に入って消えた。怖。


なんだあいつ。バクバクする心臓を抑えながら紙を剥がした。次の日もその次の日も、もう紙が貼られることは無かった。


じゅうがつよっかってどういう意味だ。マイチならわかったのかな。