人の行き交いが無いからとかそういう問題じゃないと思う。深夜特有の匂いとか、電波とか?私の高揚もあるかも。


とにかく深夜のデパート3階婦人服売り場は昼のそれと全く違う。異世界だ。異世界とかって言葉をあまり使いたくないんだけどな。






スマホを見る。

【もうちょっと奥だよ。トイレの前だよ】

送られてきた通り進むしかない。怖いなぁ。ベタだけどこの時間のマネキンてめちゃくちゃ怖いな。進む。


トイレの前についた。



【ごめん。少し戻って。エレベーター前】

逆方向じゃないか。おちょくられてる。3階を往復する。

あーー早く受け渡して帰りたい。クライアントは変な人が多い。従うしかないけど。




【ごめんやっぱトイレの前】



【アクセサリーショップのとこ来て】



【2階でもいい?】



【やっぱ4階】



【トイレの前だってば】



【早くしてね】




中々渡せない。私が本当に女性であり1人であり丸腰であることをどこかで確認してるんだろう。最近よくある。クライアントの若年化。日本はもうすぐ終わる。





【そこでいいよ。そこで正座して待ってて】



正座して5分。前から13.4歳の男の子が歩いてきた。


「ありがとうおばさん。助かったよ。」


こんなことしちゃダメよ。あとお姉さんね。


どちらも口に出さず淡々と受け渡した。成長したな私。これを成長と捉えるのが一番怖いけど。




外に出ると空が白んでいた。今日から7月か。


任務日は牛丼をつゆだくで食べて帰ることにしている。


豚丼をねぎだくで注文した。


自分ルールは破ってナンボ。


秒で食べて電話。おはよ。7月も眠そうだね。起こしてごめんね。今から帰るね。どうしても今この瞬間に声が聞きたくなっちゃって。ふふ。

今年も連れてってね、海。