人の行き交いが無いからとかそういう問題じゃないと思う。深夜特有の匂いとか、電波とか?私の高揚もあるかも。
とにかく深夜のデパート3階婦人服売り場は昼のそれと全く違う。異世界だ。異世界とかって言葉をあまり使いたくないんだけどな。
♫
スマホを見る。
【もうちょっと奥だよ。トイレの前だよ】
送られてきた通り進むしかない。怖いなぁ。ベタだけどこの時間のマネキンてめちゃくちゃ怖いな。進む。
トイレの前についた。
♫
【ごめん。少し戻って。エレベーター前】
逆方向じゃないか。おちょくられてる。3階を往復する。
あーー早く受け渡して帰りたい。クライアントは変な人が多い。従うしかないけど。
♫
【ごめんやっぱトイレの前】
♫
【アクセサリーショップのとこ来て】
♫
【2階でもいい?】
♫
【やっぱ4階】
♫
【トイレの前だってば】
♫
【早くしてね】
中々渡せない。私が本当に女性であり1人であり丸腰であることをどこかで確認してるんだろう。最近よくある。クライアントの若年化。日本はもうすぐ終わる。
♫
【そこでいいよ。そこで正座して待ってて】
正座して5分。前から13.4歳の男の子が歩いてきた。
「ありがとうおばさん。助かったよ。」
こんなことしちゃダメよ。あとお姉さんね。
どちらも口に出さず淡々と受け渡した。成長したな私。これを成長と捉えるのが一番怖いけど。
外に出ると空が白んでいた。今日から7月か。
任務日は牛丼をつゆだくで食べて帰ることにしている。
豚丼をねぎだくで注文した。
自分ルールは破ってナンボ。
秒で食べて電話。おはよ。7月も眠そうだね。起こしてごめんね。今から帰るね。どうしても今この瞬間に声が聞きたくなっちゃって。ふふ。
今年も連れてってね、海。