思ったより二回りくらい狭い部屋に案内されて笑ってしまった。合ってます??って聞きそうになった。こんなもんなのか。椅子が一脚、机が一台、机の上にスイッチがぽつん。
本当に【そのためだけの部屋】なんだ。
窓も無い。そうか地下か。
黒服が出て行く。
私と、スイッチのにらめっこが始まる。決心さえつけば一瞬で終わる。確かに簡単なお仕事だけども。これを簡単なお仕事として承れる人の神経を見習いたい。
いや見習っていかなければならない。自分で望んだことなんだから。時計くらい置いておいてほしい。どのくらい経ったんだろう。
私の名前は秋永優衣。岩手県出身の28歳。豊島区在住。平成2年4月4日生まれ。O型。趣味はスノーボード。特技は人見知りしないこと。最近はバーで知らない人と話すのがすごく楽しくて、免許を取るために教習所に通ってて、料理を勉強中。まだ始めたてなんだけどね。けど野菜炒めと肉じゃがはマスターしたよ。恥ずかしいんだけど去年まで実家を出たことなくて、料理とか洗濯とか全部お母さんにやってもらってたの。けど毎日つまんなくなっちゃって。充実感がほしくて。フッと。力を抜いた。瞬間にポチリと押した。
遠くで空気が震える。気がしただけだ。私が感じ取れるはずがない。
黒服が入ってくる。
「報酬です。ご確認願えますか。後から1枚足りないなどと言ってくる方が多くて。」
別に確認なんていい。焼肉もお寿司も食べたくないし。
汗ぐっしょ。シャワー浴びたい。