去り際、工事現場のあんちゃんは缶コーヒーをくれた。道を聞いただけなのに。そんな死にそうな顔をしてるのか俺は。
死相が出ていても仕方ない。親の死というのは簡単に乗り越えられるものではない。生命のほとんどが経験するあるあるだと思うと少し気が楽になる。
工事現場のあんちゃんに教えてもらった道を行く。あった。閑静な住宅街にはあまりに似合わない、無茶苦茶な配色センスの洋館。この小さな美術館に妹は展示されている。葬儀までに連れて帰らなければ。
ツナおにぎりを美術館の前に置いてみた。なんでだよ。匂いにつられて妹が出てきた。なんでだよ。嬉しくて葬儀会場までタクシーを2台使って行った。なんでだよ。会場で死んだはずの母親がアクエリアス飲んでた。俺と妹にしか聞こえないくらい小さい声で「風の谷のラピュタ」と言った。真冬なのに入道雲が出ていた。