<第1話>会社と社会の繋がり | 品質安定化設計ラボラトリー日記

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かつて開発業務で活用した「品質不良を開発・設計段階で未然に解決する」タグチメソッド(品質工学)を多くのものづくりエンジニアの皆さんに知っていただきたいと思い、そのために自分自身も学び直しながらブログでご紹介してゆきます。

第1章 基礎知識としての

     会社の仕組み

(1)会社の数字と

  ステークホルダーの関係

 株式投資家、特に自分のように

全くの初心者でさえも、気になるのは

株式銘柄=会社の実態です。

 

 まず、会社の目的とは何か?

 

 大抵の人は

「利益の追求」と考えがちですが、

根本の目的は「社会への貢献」であると

言えます。

 

 そのために、会社は資金や事業の上で

様々な人々と関りを持ってこそ

運営できます。

 

 投資家からすれば、

「果たしてこの会社は

社会貢献のために資金運用や事業を

健全に行い、成長できるのだろうか?」

というところが気になりますが、

会社でも個人でも健全度の基として

「人との繋がり」が重要な意味を持ちます。

 

 このように会社と関わっている

「利害関係者」のことを

「ステークホルダー」と言いますが、

具体的には下記のような会社との関りを

持つ人々を指します。

 

Ⅰ.消費者:

 お金を支払って商材を得る。

Ⅱ.従業員:

 職を得て生活を維持する。

Ⅲ.取引先:

 原材料を売ったり商品を買う。

Ⅳ.金融機関:

 資金援助で手数料を得る。

Ⅴ.株主:

 出資して会社の成長を期待する。

Ⅵ.監査法人:

 決算書を精査して会社の信頼性を保証する。

Ⅶ.地方自治体:

 税金を徴収して地域社会に還元する。

 

 特に、

「株主」は会社のオーナーとして

出資はしますが、経営のプロとは限りません。

 

 そこで、出資された資金を

株主の代わりに運用して利益を増やすのが

「経営者」です。

 

 経営者の仕事には、

株主に代わって会社の将来に関する

「意思決定」をすることと、

実際の業務を進める「業務執行」の

2つがあります。

 

 このように、

経営者は株主から預けられた資金の運用を

任されますが、その運用の結果を

定期的に株主に報告しなければなりません。

 

 投資家=株主がこのような報告を

受けられなかったら、

自分達が出資した資金は有効に運用され、

リターンが期待できるのか?

会社は健全に存続され、

自分が保有する株式の価値は

維持できるのか?

心配になります。

 

 その報告のために作成、利用されるのが

決算書であり、「会社法」に基づき、

株主以外にも税務署、地方自治体、

金融機関などのステークホルダーに

提出されます。

 

 決算書には下記のものがあります。

Ⅰ.貸借対照表

Ⅱ.損益計算書

Ⅲ.株主資本等変動計算書

Ⅳ.キャッシュフロー計算書(上場企業のみ)

 

 では、現実の会社では

どんなステークホルダーが

存在するのでしょうか?

 

 例えば、会社四季報に記載された

三菱重工業の2021年3月期のデータで

ステークホルダーの構成を見てゆきます。


 この会社の場合、

一般の「消費者」というものは

存在しません。

 

 【従業員】の欄には、

従業員数が

子会社も含めて79,974名、

三菱重工業単独で14,553名、

平均年齢が41.3歳、

平均年収が859万円と記載されております。

 

 つまり、この会社は

親会社も事業を行っている

グループ会社なのです。

 

 取引先として、

【仕入先】の欄には

三菱商事、住友商事、三菱電機が記載され、

【販売先】の欄には

防衛省、関西電力、民間航空機が

記載されております。

 

 この辺りは【特色】や【連結事業】の欄と

照らし合わせて見ると、会社の事業実態が

より立体的に見えてくると思います。

 

 金融機関として、

【証券】の欄には

4市場に上場、

幹事証券会社は日興、野村、大和、

三菱UFJモルガンスタンレー各証券会社、

株主名簿管理人として

三菱UFJ信託銀行、

会計監査人(直近決算の監査法人)として

あずさ監査法人が記載され、

【銀行】の欄には

三菱UFJ、三菱UFJ信託、みずほ、三井住友、

三井住友信託の各銀行が記載されて

おります。

 

 【株主】の欄には、

2021年9月期のデータとして、

単元株主数236,861名、

株主名簿上位10位の持ち株数

(及び持ち株比率)として

日本マスター信託口座4,352万株(12.9%)、

日本カストディ信託口座1,739万株(5.1%)、

明治安田生命保険800万株(2.3%)、

野村信託銀行信託口座652万株(1.8%)・・・

等が記載され、その他に

発行済株式総数に対する比率として、

外国籍の個人または法人の持株比率27.0%、

50単元未満の株主の浮動株比率23.9%、

投資信託に組み込まれている比率9.3%、

大株主10位と役員持株及び自己株式の

単純合計である

「少数特定者持株」比率30.9%が記載されて

おります。

 

 端的に見れば、

最も持株比率が高いのは大株主と役員及び

自己株式の比率で、次が外国株主の比率、

その次が我々のような

小口の個人投資家の比率で、それに比べて

投資信託の組込比率は遥かに低く、

このことから三菱重工業のような上場企業は

大株主と役員・自己株式の力が最も強い

ことが判ります。

 

 ある投資家から聞いたことですが、

東証一部上場企業は大口の機関投資家が

多額の資金を投入し、互いに情報戦を

仕掛けて市場を引っ搔き回しているので、

小口の個人投資家が少額資金で参戦しても

到底勝ち目はないとのことでした。

 

 なお、

ステークホルダーではありませんが、

【株主】の欄の下に【役員】の欄があり、

主だった役員の氏名が記載されており、

その中には「社外取締役」も含まれます。

 

 2015年から東京証券取引所で導入された

コーポレートガバナンス・コードに従い、

上場企業は社外取締役を2人以上

選任することが勧告され、

選任していない会社は理由説明が

義務付けられております。

 

 コーポレートガバナンス(企業統治)とは、

「企業の組織ぐるみの不祥事を防ぐため、

社外取締役や社外監査役など、

社外の管理者によって

経営を監視する仕組み」と定義されます。

 

 この仕組みでは「社外取締役」が、

次に述べる監査法人(社外監査役)と共に

経営の健全化を図り、

会社の信頼性を保証する仕組みに

なっております。

 

 監査法人としては、

上記の通りあずさ監査法人が記載されて

おりますが、2015年3月期では

新日本証券が担当しており、

証券会社が担当することもある実態が

判ります。

 

 会社の決算書が経営者によって

恣意的に粉飾されたりしていない

健全なものであることを保証するのが

監査法人と公認会計士によって行われる

「会計監査」という業務なのです。

 

 地方自治体の記載はありませんが、

【本社】と【支社】、【事業所・工場】の各欄を

見れば、どの地方自治体と繋がりがあるか

見当が付きます。

 

 以上、三菱重工業における

ステークホルダーの実例を

会社四季報の最新版で確認してみました。

 

 

 本日はここまでといたします。

 

 ご精読、ありがとうございます。

 

 次回は親会社と子会社の関係について

学びます。

 

 お楽しみに。

 

<参考文献>