品質不良を早期解決! タグチメソッドをExcelで手軽に使いこなす<第16話> | 品質安定化設計ラボラトリー日記

品質安定化設計ラボラトリー日記

かつて開発業務で活用した「品質不良を開発・設計段階で未然に解決する」タグチメソッド(品質工学)を多くのものづくりエンジニアの皆さんに知っていただきたいと思い、そのために自分自身も学び直しながらブログでご紹介してゆきます。

<今回の内容>

1.ばらつきの小ささを表すSN比の計算式

2.静特性のSN比・その1:望小特性

3.静特性のSN比・その2:望大特性

4.静特性のSN比・その3:望目特性

5.静特性のSN比・その4:ゼロ望目特性

6.動特性のSN比(予告のみ)

 

1.ばらつきの小ささを表すSN比の

  計算式

 SN比とは「機能の安定性」を表す尺度のことで、

特に通信工学などで使われる

「出力信号」と「ノイズ(雑音)」の強度の

比率と同じ考え方です。

 

 SN比=出力信号の強度/ノイズの強度

 

 品質工学において、SN比は

「ばらつきの小ささ」を表す指標として用いられ、

SN比が大きければ大きいほどばらつきが少なく

品質が安定していると考えます。

 

 SN比は取り扱う基本機能の形によって

計算式が違っております。

 

<静特性>

(1)望小特性: SN比=-10*log(Σy²/n)

(2)望大特性: SN比=-10*log{Σ(1/y²)/n}

(3)望目特性: SN比=10*log(m²/σ²)

           =10*log{(Sm-Ve)/n/Ve}

※Sm=(Σy)²/n、 Ve=Σ{y-Avr(y)}²/(n-1)

 Avr(y)はyの平均値(=Σy/n)を表します。

(4)ゼロ望目特性: SN比=-10*logVe

 

<動特性>

 SN比=10*log(β²/σ²)

 

 以下、各種類の事例でSN比の計算を

試みます。

 

2.静特性のSN比・その1:

  望小特性

 特性値が小さければ小さいほど良い特性を

「望小特性」と言います。

 

 例えば、下表のようなデータでSN比を

計算してみます。

 

 

 望小特性では、SN比の計算式が

 

SN比=-10*log(Σy²/n)

 

となりますから、この式を「SN比」の列の

「No.1」のセルに入力します。

 

 

 入力した式の中の「SUMSQ(B4:E4)」という

関数は、B4の「26」からE4の「7」までの

4つのデータの自乗和、即ち「Σy²」に

相当します。

 

 また、今は自乗和を取るデータ数が4つ、

即ちn=4ですから、計算式の末尾の「/n」が

「/4」に置き換わっております。

 

 

 こうして、No.1の行のSN比が算出されました。

 

 

 さらにセルF4の右下角をドラッグして

No.12の行まで計算式をコピーすれば、

全てのNo.に対してSN比が算出されます。

 

3.静特性のSN比・その2:

  望大特性

 特性値が大きければ大きいほど良い特性を

「望大特性」と言います。

 

 先程と同じデータで望大特性のSN比を

計算してみます。

 

 望大特性では、SN比の計算式が

 

SN比=-10*log{Σ(1/y²)/n}

 

となります。

 

 つまり、望小特性での計算式の中の

「y²」が「(1/y²)」に置き換わった形ですから、

まず、1/y1から1/y4までのデータ表を追加し、

次に前述の望小特性での計算式で

引用先を変えれば、

簡単に望大特性のSN比が算出できます。

 

 

 この式を「SN比」の列の

「No.1」のセルで演算させます。

 

 

 No.1の行のSN比が算出されたら、

さらにセルF4の右下角をドラッグして

No.12の行まで計算式をコピーすれば、

全てのNo.に対してSN比が算出されます。

 

 

4.静特性のSN比・その3:

  望目特性

 一定の目標値mが設定されている特性を

「望目特性」と言います。

 

 同じデータで望目特性のSN比を計算して

みます。

 

 望目特性では、SN比の計算式が

 

SN比=10*log(m²/σ²)

  =10*log{(Sm-Ve)/n/Ve}

となります。

 

 但し、

Sm=(Σy)²/n、

Ve=Σ{y-Avr(y)}²/(n-1)

となりますが、Veの計算はExcelの中の

VAR関数を使って容易にできます。

 

※Avr(y)はyの平均値(=Σy/n)を

表します。

 

 このように複雑な計算式を

エクセルシート上に作るのは面倒で、

括弧の数や位置を間違えてしまう恐れが

あります。

 

 心配な場合は、予めSmとVeのデータを

別途作っておくと便利です。

 

 まず、No.1でのSm=(Σy)²/nのデータを

求めます。

 

 

 次に、No.1でのVeのデータをVAR関数で

求めます。

 

 

 次に、SmとVeのデータを引用して

SN比=10*log{(Sm-Ve)/n/Ve}を

演算します。

 

 

 かくして、No.1のSN比が求められました。

 

 さらにSmとVeのデータの式をNo.2~12まで

コピーして算出します。

 

 

 これらのSmとVeのデータを引用し、

SN比の計算式もNo.2~12までコピーして

算出します。

 

 

 かくして、No.1~12までのSN比全てが

求められました。

 

5.静特性のSN比・その4:

  ゼロ望目特性

 望目特性の中でも

目標値が0に設定されている特性を

「ゼロ望目特性」と言います。

 

 同じデータでゼロ望目特性のSN比を計算して

みます。

 

 ゼロ望目特性では、SN比の計算式が

 

SN比=-10*logVe

となります。

 

 この場合も前以てVeの値を求めておきます。

 

 

 次に、SN比の計算式を作成して演算させます。

 

 

 かくして、ゼロ望目特性でのSN比が全て

算出されました。

 

 ここまで各種の静特性でのSN比の

計算方法を実行してみました。

 

6.動特性のSN比(予告)
 動特性でのSN比の計算方法は、後に

動特性の章で実行しますが、計算式は

次のようになっております。

 

 SN比=10*log(β²/σ²)

 

 βは動特性の傾きで、単回帰分析で

回帰係数として算出できることは既に

触れた通りです。

 

 また、σ²は誤差の分散で、これも

単回帰分析で算出できます。

 

 従って、βとσ²の値を計算式に代入

すれば、SN比は算出できます。

 

 

 本日はここまでとします。

 ご精読、ありがとうございました。

 

 次回は直交表への割り付けについて

学びます。

 

 ご期待ください。

 

<参考文献>

 広瀬健一・上田太一郎/共著

 「Excelでできるタグチメソッド解析法入門」

 同友館

 

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