<今回の内容>
1.ばらつきの小ささを表すSN比の計算式
2.静特性のSN比・その1:望小特性
3.静特性のSN比・その2:望大特性
4.静特性のSN比・その3:望目特性
5.静特性のSN比・その4:ゼロ望目特性
6.動特性のSN比(予告のみ)
1.ばらつきの小ささを表すSN比の
計算式
SN比とは「機能の安定性」を表す尺度のことで、
特に通信工学などで使われる
「出力信号」と「ノイズ(雑音)」の強度の
比率と同じ考え方です。
SN比=出力信号の強度/ノイズの強度
品質工学において、SN比は
「ばらつきの小ささ」を表す指標として用いられ、
SN比が大きければ大きいほどばらつきが少なく
品質が安定していると考えます。
SN比は取り扱う基本機能の形によって
計算式が違っております。
<静特性>
(1)望小特性: SN比=-10*log(Σy²/n)
(2)望大特性: SN比=-10*log{Σ(1/y²)/n}
(3)望目特性: SN比=10*log(m²/σ²)
=10*log{(Sm-Ve)/n/Ve}
※Sm=(Σy)²/n、 Ve=Σ{y-Avr(y)}²/(n-1)
Avr(y)はyの平均値(=Σy/n)を表します。
(4)ゼロ望目特性: SN比=-10*logVe
<動特性>
SN比=10*log(β²/σ²)
以下、各種類の事例でSN比の計算を
試みます。
2.静特性のSN比・その1:
望小特性
特性値が小さければ小さいほど良い特性を
「望小特性」と言います。
例えば、下表のようなデータでSN比を
計算してみます。
望小特性では、SN比の計算式が
SN比=-10*log(Σy²/n)
となりますから、この式を「SN比」の列の
「No.1」のセルに入力します。
入力した式の中の「SUMSQ(B4:E4)」という
関数は、B4の「26」からE4の「7」までの
4つのデータの自乗和、即ち「Σy²」に
相当します。
また、今は自乗和を取るデータ数が4つ、
即ちn=4ですから、計算式の末尾の「/n」が
「/4」に置き換わっております。
こうして、No.1の行のSN比が算出されました。
さらにセルF4の右下角をドラッグして
No.12の行まで計算式をコピーすれば、
全てのNo.に対してSN比が算出されます。
3.静特性のSN比・その2:
望大特性
特性値が大きければ大きいほど良い特性を
「望大特性」と言います。
先程と同じデータで望大特性のSN比を
計算してみます。
望大特性では、SN比の計算式が
SN比=-10*log{Σ(1/y²)/n}
となります。
つまり、望小特性での計算式の中の
「y²」が「(1/y²)」に置き換わった形ですから、
まず、1/y1から1/y4までのデータ表を追加し、
次に前述の望小特性での計算式で
引用先を変えれば、
簡単に望大特性のSN比が算出できます。
この式を「SN比」の列の
「No.1」のセルで演算させます。
No.1の行のSN比が算出されたら、
さらにセルF4の右下角をドラッグして
No.12の行まで計算式をコピーすれば、
全てのNo.に対してSN比が算出されます。
4.静特性のSN比・その3:
望目特性
一定の目標値mが設定されている特性を
「望目特性」と言います。
同じデータで望目特性のSN比を計算して
みます。
望目特性では、SN比の計算式が
SN比=10*log(m²/σ²)
=10*log{(Sm-Ve)/n/Ve}
となります。
但し、
Sm=(Σy)²/n、
Ve=Σ{y-Avr(y)}²/(n-1)
となりますが、Veの計算はExcelの中の
VAR関数を使って容易にできます。
※Avr(y)はyの平均値(=Σy/n)を
表します。
このように複雑な計算式を
エクセルシート上に作るのは面倒で、
括弧の数や位置を間違えてしまう恐れが
あります。
心配な場合は、予めSmとVeのデータを
別途作っておくと便利です。
まず、No.1でのSm=(Σy)²/nのデータを
求めます。
次に、No.1でのVeのデータをVAR関数で
求めます。
次に、SmとVeのデータを引用して
SN比=10*log{(Sm-Ve)/n/Ve}を
演算します。
かくして、No.1のSN比が求められました。
さらにSmとVeのデータの式をNo.2~12まで
コピーして算出します。
これらのSmとVeのデータを引用し、
SN比の計算式もNo.2~12までコピーして
算出します。
かくして、No.1~12までのSN比全てが
求められました。
5.静特性のSN比・その4:
ゼロ望目特性
望目特性の中でも
目標値が0に設定されている特性を
「ゼロ望目特性」と言います。
同じデータでゼロ望目特性のSN比を計算して
みます。
ゼロ望目特性では、SN比の計算式が
SN比=-10*logVe
となります。
この場合も前以てVeの値を求めておきます。
次に、SN比の計算式を作成して演算させます。
かくして、ゼロ望目特性でのSN比が全て
算出されました。
ここまで各種の静特性でのSN比の
計算方法を実行してみました。
6.動特性のSN比(予告)
動特性でのSN比の計算方法は、後に
動特性の章で実行しますが、計算式は
次のようになっております。
SN比=10*log(β²/σ²)
βは動特性の傾きで、単回帰分析で
回帰係数として算出できることは既に
触れた通りです。
また、σ²は誤差の分散で、これも
単回帰分析で算出できます。
従って、βとσ²の値を計算式に代入
すれば、SN比は算出できます。
本日はここまでとします。
ご精読、ありがとうございました。
次回は直交表への割り付けについて
学びます。
ご期待ください。
<参考文献>
広瀬健一・上田太一郎/共著
「Excelでできるタグチメソッド解析法入門」
同友館
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