1.官庁向けや電波測定車の
自動車設計エンジニアが
「西部警察」登場車両を設計!
かつて日産プリンス自販
(後のオーテック・ジャパン)で官庁用車両や
電波測定車などを設計していたエンジニア
福田正健(ふくだ・まさたけ)さん。
この経歴からして、福田さんは元々
車両に様々な機能を搭載させる設計が
本業であり、後に石原プロモーションからの
依頼で、同プロモーション制作の刑事ドラマ
「西部警察」登場車両の企画・開発を
担当されたのも、この方には打ってつけの
お仕事だったようです。
石原裕次郎さん扮する小暮課長の
愛車「ガゼール」以外のほとんど全ての
登場車両が、福田さんの設計によるもの。
・マシンX(母体はスカイライン2000GT)
・サファリ4WD(母体はVRG160型サファリ)
・スーパーZ(母体はフェアレディ280Z)
・マシンRS(後のマシンRS-3)
・マシンRS-1
・マシンRS-2
※上記3台のマシンRSをまとめて
「RS軍団」と呼びます。
(母体はスカイライン30DR型)
2.当ブログシリーズの主旨
本日からスタートするブログシリーズでは、
現在アシェット社から発売中のシリーズ
「西部警察MACHINE RS-1
ダイキャストギミックモデルをつくる」の
冊子に掲載された
福田さんのインタビュー記事を基に、
日産自動車がマシンRS-1を
刑事ドラマに出演する
役者ならぬ「役車」として、
どのように造り、送り出したのかを
探ってゆきます。
3.ヒントとしての「ボンドカー」と
母体としてのスカイラインを
どのように活かすか?
実は、福田さんはそれほど
海外のアクション映画を意識しては
いなかったそうです。
ただ、
例えば「007」のジェームス・ボンドが
乗る改造車「ボンドカー」のギミックを
自身で観ていたとしたら、
「同じ仕掛けを作ることはないが、
自分ならこういう使い方ができると
考えただろう」と福田さんは語っています。
また、母体であるスカイライン30DR型
(6代目スカイライン)についても、
「この車両の個性を活かすことよりも、
むしろどんな機能を盛り込めるかを
強く意識した」と福田さんは語っています。
例えば、RS-1のコクピットには、
こんな錚々たる機器類も装備しました。
(写真はマシンRS-1模型のコクピット内に
搭載されるPC、オシロスコープ等機器類)
※今となっては懐かしい
3.5インチフロッピードライブもあります!
自分の邪推ですが、恐らく福田さんは、
母体が既存車輌であっても
「これから自分は新しいスペックの車両を
作るんだ」という意識を相当強く
持っていたように感じます。
4.スカイラインのターボを
売り込みたい日産の戦略
福田さんの設計エンジニアとしての
「思い」はここで一旦置いておくとして、
日産の販売戦略に注目しましょう。
当時の日産で、スポーツカーとして
スカイラインの他にもシルビアが
ありましたが、当時のトレンドとして
「ターボエンジン」が市場に出始めて
いました。
そこで、日産もこの流れに乗り、
スカイラインのターボを売り出そうと
考えたのです。
(写真はマシンRS-1模型の
4気筒ターボエンジン部)
因みに、別ブログでご紹介した
「狩野モデル」による品質要素の分類で
言えば、ターボエンジン搭載という
「魅力的品質要素」で市場競争を有利に
したいというのが、当時の日産の
販売戦略の一環になっていた訳です。
スカイラインのイメージカラーは、
この頃から「赤と黒のツートンカラー」
と決まっており、これを自社が
スポンサードしている「西部警察」に
”カッコよく”登場させることで
話題性を高め、販売拡大に繋げようとも
考えていたようです。
(写真はマシンRS-1模型のボンネット部分)
日産にとっての石原プロモーションは
車両を注文してくれた「お客様」であると
同時に、自社製品を宣伝してくれる
頼もしい「広告代理店」でもあったのです。
5.当初から3台同時に
開発されていたRS軍団
スカイラインのターボが「西部警察」に
初登場したのはPartⅡの第15話で、
当初はマシンRS単独でしたが、
後にPartⅢの第16話でマシンRSが
改造によりマシンRS-3に生まれ変わり、
新顔のRS-1、RS-2と共に「RS軍団」として
登場しました。
こうして観ると、初めはマシンRSのみを
開発し、後にRS-3に改造し、
さらにRS-1、2を追加で開発したかのように
見えてしまいますが、事実は3台同時に
開発が進められていたのだそうです。
やはり、1台作っておいてから、後付けで
2台作り、それから各車両の役割分担を
決めることは困難であり、3台で「軍団」を
編成するのが既定路線だったようです。
マシンRS-1は指揮・戦闘用車両。
マシンRS-2は情報収集用車両。
マシンRS-3は情報分析用車両。
しかし、ここで福田さんに大きな難題が
降りかかってきます。
同じスカイラインRSターボ3台で、
各車両の外見の違いをどう打ち出すか?
それまでの福田さんのお仕事は、
マシンXにしてもサファリ4WDにしても、
車両の外見は殆どいじらず、機能の追加
だけでした。
しかし、同じ母体車両を3台使う「RS軍団」の
場合、そうは問屋が卸さなかったわけです。
6.難題に苦しむ中で
頼もしい助っ人が!
それまでは一人で「西部警察」関連を
担当していた福田さんも、この頃から
部下を持つようになりました。
その部下の方はモータースポーツに
造詣が深く、外見の差別化のために
当時流行っていたモータースポーツの
アイテムを追加することを提案するなど、
素晴らしいアシストをしてくれたそうです。
例えば、フロントバンパーの造形を
アフターパーツとして売り出すことが
モータースポーツの世界の流れに
なっていたことに目を付け、
そのような形の違ったアフターパーツを
装着することで各車両の個性を出し、
差別化していったのだそうです。
(写真はマシンRS-1模型のフロント部分)
自分は自動車にあまり明るくないので、
フロントバンパーの形状で見分けるのは
些か難しい気がします。
3台の中で唯一、ルーフにパトライトが
付いていないマシンRS-2が一番識別し易く
感じます。(笑)
今週はここまでといたします。
ご精読、ありがとうございます。
次週も続きをお楽しみに。
<参考文献>
「西部警察MACHINE RS-1
ダイキャストギミックモデルをつくる」
創刊号(2021.2.10/17合併号)P11
エンディング曲は勿論、
RS軍団のテーマ曲
「スカイラインフォーメーション」を
お楽しみください。
動画で3台のマシンの違いを
ご堪能いただけます。
※車両側面に「1」、「2」、「3」の番号が
描かれております。