総務くらし建設委員会視察報告   さとうゆみ

7月26日㈬、市役所庁舎の建て替えについて学ぶため、京都府八幡市を訪れた。八幡市の人口は6万9,660人であり、人口約6万1,000人の長久手市と同規模の自治体である。市の面積も、八幡市が24.35㎢、長久手市が21.55㎢と類似している。

八幡市役所の旧庁舎は、昭和53年建築の鉄筋コンクリート造地下1階、地上4階建てであり、平成25年の耐震診断でIs値が0.27と基準を満たしておらず、大地震が起こった場合に建物が大破または倒壊するおそれがあったため、建て替えが決定した。平成27年に「八幡市庁舎整備検討特別委員」が設置され、平成29年に「公共施設等総合管理計画」を策定する中で現在地での建て替えを決定している。平成30年に基本計画策定、平成31年に基本設計完了、令和2年に実施設計完了・建設工事着手、令和4年に建物竣工、令和5年1月10日に開庁した。

新庁舎整備の3つの基本方針は「安心・安全な庁舎」「利便性の高い庁舎」「市民に親しまれ開かれた庁舎」であり、防災庁舎として想定される災害への万全な備えを施すとともに、シビックプライド(愛着と誇り)によるまちづくりの起点の場となる庁舎として整備された。新庁舎は、CFT造地上7階で延床面積1万1839.60㎡である。京都大学名誉教授で大阪芸術大学芸術学部建築学科教授の門内輝行氏が八幡市新庁舎整備アドバイザーとなっている。総事業費は約68億円で、このうち約22億円は国の時限的な財政措置(市町村役場機能緊急保全事業)で賄っている。発注は、基本設計先行型DB方式(実施設計・施行一括)を採用している。維持管理についても、施設管理、清掃、警備、受付案内、電話交換を一括発注、複数年契約に切り替えている。

八幡市は、桂川、宇治川、木津川の3つの川が合流する国内では他にほとんど例を見ない地形を有している。川の決壊時に八幡市役所は6mまで浸水すると想定されているため、1階に執務スペースを設置していない。最大浸水高6mより高い6.2mに2階フロアレベルを設定し、業務継続を可能としている。




人命搬送、救助等を可能とするヘリポートを設置している。


ライフラインが寸断しても1週間の自立運営ができるよう非常発電機等が屋上に設置されている。



災害対策への迅速な対応を図るため、5階に市長室、危機管理室、災害対策本部に転換する大会議室を集約している。






大地震時の機能継続を考慮し、1階に柱頭免震構造を採用。免振装置により、地盤と建物を切り離し、揺れを伝わりにくくする構造である。可動床は地震時に水平方向に最大で約60㎝移動するよう設計されている。


3階、4階には市民が利用できる市民プラザが配置されている。




執務エリアには、自然採光や自然換気など必要な開口を設け、日射対策として縦ルーバーを設置し、最大で50%の日射を遮ることが可能。


旧庁舎


長久手市役所本庁舎は、昭和42年に建設され、築56年が経過している。建設当時の人口は約8,300人だったが、現在は人口6万人を超えており、職員の事務スペースの著しい不足と、建物の老朽化が大きな課題となっている。市役所は、大規模災害時に災害対策本部が設置され、中枢的な役割を果たしていく場所であるため、防災拠点となるべく整備が求められている。市は、平成27年に市役所庁舎の建て替えの方針を出しているが、令和5年の今日まで特段進んでいない。市は令和13年度まで貯金をして、それ以降に建て替えを行う方針しているが、課題を抱えたまま再送りすることが良いかどうか、改めて検討する必要があると考える。八幡市役所の職員の皆さんは、平成30年に大阪北部地震を経験していることもあり、防災に対する意識が非常に高いと感じた。庁舎建て替えを行うにあたり、さまざまな自治体へ視察に行かれたということで、工夫が重ねられた充実した庁舎となっていた。旧庁舎の解体費を約8億円と見込んでいたところ、アスベストが出るなどして大きく膨らむ試算となっているそうで、建て替えの際には解体についても十分考慮する必要があると理解した。今後、長久手市役所庁舎を建て替える際の参考にしたい。