先月、3年ぶりに行くことができた常任委員会の視察は大変勉強になりました。私の視察報告書をアップします。

《埼玉県三郷市視察報告》
 10月25日㈫、埼玉県三郷(みさと)市役所を訪れ、三郷市の掲げている「日本一の読書のまち」の取り組みを学んだ。三郷市では、平成18年に国立教育政策研究所の「生きる力を育む読書活動推進事業」の地域指定を受けて小中学校の読書活動が盛んになったことを契機に、平成22年11月に「読書のまち三郷・子ども読書活動推進計画」を策定し、平成25年3月議会で市長提案の「日本一読書のまち」宣言を全会一致で可決している。
 人口14万人のまちに公共図書館3館と公共施設内(コミュニティセンターや文化センター)の4図書室、駅前の予約図書受取カウンター1カ所がある。正規の市職員の司書が5人配置されており、正規職員の5人とは別に全小中学校に1校につき1人、児童生徒数の多い大規模校には2人の司書が配置されている。
 第2次の「日本一の読書のまち三郷推進計画・子ども読書活動推進計画」(令和3年度~7年度)を策定するにあたり、「何をもって日本一か」が議論され、以下の3つの読書密度の指標を導入し、数値の上昇をめざすことになった。
① 読書拠点÷市の面積=地域の読書密度
(読書拠点とは、図書館、図書室、予約図書受取カウンター、ふれあい文庫、小中学校、図書返却ポスト、ふれあいブックワゴンの訪問場所等の合計)
② 本との出会い÷市の人口=機会の読書密度
(本との出会いとは、図書館等での貸出冊数、学校図書館での貸出冊数、出張図書館サービスやブックスタートなどの各種事業の参加者数、ゆうびんコンクールの応募数、ふれあい文庫の蔵書数の合計)
③ 本と市民をつなげる人の数=人の読書密度
(本と市民をつなげる人の数とは、読書ボランティアの人数、子ども司書の人数、ふれあいブックサポーターの人数の合計。)

 読書活動を推進するため、ふれあいトライアングル事業に取り組んでいる。「ふれあい文庫」「ふれあいブックワゴン」「ふれあいブックサポーター」の3つである。「ふれあい文庫」は、市役所1階ロビーの他に、病院、スターバックスコーヒーやネッツトヨタのお店など、市内18カ所に設置している。ホテル東横インにも、まもなく追加する予定である。「ふれあい文庫」に置く本は寄贈された本で、寄付金で購入することもあるが、基本的に市の予算はない。「ふれあい文庫」にある本の入れ替えや手入れを行うのは「ふれあいブックサポーター」である。市は、ふれあいブックサポーター養成講座を開催し、ボランティアを増やしている。「ふれあいブックワゴン」は、司書が同乗し、幼稚園や小中学校、病院へ本を届ける車である。
 小学6年生を対象に「子ども司書養成講座」を開催しており、令和4年で11期約300名が受講した。年間を通した講座の受講を終えた子どもは、公共図書館での手伝い、おはなし会やイベントの手伝いを行い、大学生になっても関わり続けてくれる人もいるということである。
 ノンフィクション作家の柳田邦男氏を招いて文学講演会を行ったことがきっかけとなり、柳田氏が三郷市の読書活動応援団長となっている。五木寛之氏、林真理子氏、阿川佐和子氏など著名な作家を招いて、毎年文学講演会が行われている。
 新型コロナによる図書館休館中は、電子図書を充実させた。新型コロナの国からの交付金を活用して1万2,000冊の電子図書を購入している。
 三郷市における読書ボランティアは令和3年度に40団体441人、図書館読み聞かせボランティアは10人となっている。学校や地域での読み聞かせ、公共図書館での読み聞かせ、学校図書館の環境整備などを行い、平成29年に文部科学大臣表彰を受賞した団体もある。

 長久手市では図書館に指定管理者制度を導入し、民間事業者に管理運営してもらう方針を出しているが、三郷市では図書館3館を市直営で管理運営をしており、市直営からの変更は考えたことがないということであった。乳幼児期から本を親しむ目的で実施しているブックスタート事業について、三郷市では4カ月児健診時にほぼ全員に渡しているが、長久手市では中央図書館に取りにいかないともらえない体制となっており、もらっている人は対象者の約50%であることから、改善が必要だと考える。また、長久手市の中学校の学校図書館はお昼の15分間しか開いていないが、三郷市では児童生徒のいる時間帯は学校図書館が開いている。秋の読書まつり、全国から作文を募る「ゆうびんコンクール」の開催、読書活動を推進する講座や文学講演会の開催など、社会教育施設である図書館としての網羅的な取り組みが参考になった。第2次計画に盛り込んだ3つの読書密度の数値を高めていけば、本を貸すことにとどまらない魅力あふれる図書館となっていくことが分かった。