今議会に「長久手市景観条例の制定」の議案が出されています。長久手市では昨年度、景観法に基づく「長久手市景観計画」を作ったため、新たに条例を制定するものです。

景観を保全するという趣旨は悪い話ではないので、議案は可決の見込みですが、私は中身が乏しい印象を受けました。

条例案の第8条に景観形成重点地区の指定、第15条に景観重要建造物の指定等の手続、第17条に景観重要樹木の指定等の手続が明記されていますが、現時点で重点地区も建造物も樹木も全く候補がないということです。第10条では景観まちづくり団体の認定が明記されていますが、景観まちづくり団体も存在しないそうです。コンサルタント会社に729万円で委託して計画を作り、市民ワークショップも重ねてきたということですが、これらの候補が思い浮かんでいないのは疑問です。

《令和元年度決算書から》
・景観計画策定業務委託729万3000円
・景観ワークショップ報償金9万9000円
・景観計画策定委員報償金29万2000円

これから岡崎市や名古屋市緑区などの先進事例を参考にして進めていくということですが、岡崎城付近の町並みや緑区有松の町並みがあるところと違って、長久手市にそのようなものがあるのかな。

この条例の制定により高さ10メートル超や建築面積500㎡超の大きな建築等については届出行為が必要になるため、事前協議で制限をかけることができるということですが、年間10件程度のようです。

景観計画の中に、「御旗山、色金山、古戦場の間を相互に望む眺望を確保する」とありますが、高層マンションが建つのを阻止できるのかと言えば、法律を守った建設の阻止は難しいと思いますし、看板の乱立している状況が良くないということについても、看板を規制できるのでしょうか。第4条の事業者の責務も、第5条の市民の責務も「市が実施する良好な景観の形成に関する施策に協力するよう努めるものとする」という努力義務にとどまっていますから。

愛知県下で景観条例を制定しているのは10の自治体ということです。条例を制定したまま放置というわけにはいかないので、今後の長久手市の取り組みを見ていきたいと思います。

長久手市景観条例案→こちらをクリック
長久手市景観計画→こちらをクリック