私は今回の6月議会一般質問で「市が古民家を2つ所有することが必要か」を取り上げました。 

市は、市内に現存する江戸時代後期の建物部分を所有者から譲り受けて古戦場公園再整備に合わせて古戦場公園内に移築し、歴史民俗体験施設にするとともに国登録有形文化財の登録をめざしていました。しかし、移築に多額の費用がかかることから市は移築を断念し、現地(石田交差点付近)で保存活用することを決めました。古戦場公園には、計画している機能を実現するため、別の古民家を移築する考えを持っていたことから、市に古民家が2つ必要か質問しました。(※国登録有形文化財の登録をめざす場合は移築の技能を持つ人が限られるため多額の費用がかかるが、登録をめざさない場合の移築は費用を抑えられる)

質問の結果、移築予定だった古戦場の西側ゾーンには、江戸時代頃の別の古民家を探して移築するかもしれないし、古民家移築とは全く違う建物を建てるかもしれないし、何も建てないかもしれないという3つの選択肢があると明らかになりましました。

古戦場公園再整備は平成34年に供用開始予定であるため、今年度具体的な設計に入ります。古戦場公園内に古民家を移築する案は市民ワークショップで出された意見を反映したものです。移築を決めた後に開かれた有識者会議では「古戦場の時代のものと江戸時代の民家では時代が違うから古民家移築はふさわしくない」という意見と「長久手市には博物館がないので、貴重な文化財として古民家を確保できたならば移築して歴史民俗体験施設をつくろう」という意見の2つに分かれ、後者の意見が反映された形となっています。古戦場に移築しないとなると、今まで積み上げた議論が根底から異なってきます。これまでの経過から、市が突然違う建物に変更することはできないはずなので、当面「何も建てない」という選択肢が有力になってくるのではないでしょうか。現地保存する古民家の「保存活用計画」が平成34年頃にできるそうですから、市としてその内容とも整合性を合わせる必要があると思います。

「古戦場再整備基本計画」では、移築した江戸時代の古民家の横に収蔵庫を配置し、長久手小学校敷地内に長年しまい込んでいる民具などを移動し、展示する予定でしたが、移築予定の古民家を現地保存にするならば、収蔵庫も現地保存の方へ行った方が良いかもしれないと私は思います。

現地保存の古民家は、所有者から建物のみ譲り受けていて土地は現在借地であるという問題もあります。多額の修繕費がかかるという問題もあります。この建物は、明治時代に瀬戸の品野村から長久手へ移築され、構造から江戸時代後期のものと推定されるが、正確な移築からの年数や、建造からの年数は把握できないというのも不安です。しかし、県の担当者は、適切な修繕をすれば文化庁による国登録有形文化財の見込みがあると言っているそうです。

さまざまな問題が含まれているので、市が考えを整頓するとともに、再度市民の皆さんや有識者の皆さんと考える必要があると思います。この課題に取り組んでいたら、私には「博物館学芸員資格」があることを思い出しました。
古戦場再整備基本計画西側ゾーン(描かれている古民家は古戦場公園に移築されず、石田交差点付近で現地保存されることとなった)