先月、教育福祉委員会で東京都世田谷区の「せたホッと」を訪れたときの私さとうゆみの視察報告をアップします。

 2016年8月8日、東京都世田谷区の「せたホッと」(せたがやホッと子どもサポート制度)を視察した。「せたホッと」は、子どもの人権を擁護し、権利を侵害された子どものすみやかな救済を図ることを目的に設置されている。区長及び教育委員会の付属機関となっている。「せたホッと」は、5年前に当選した現在の区長が実現させたいと考えていた施策である。区長選挙のマニフェストの1つに、子どもの権利を守るための子どもオンブズパーソンの設置があった。もともと世田谷区は、プレーパークやチャイルドラインの発祥の地であるなど、子育て支援施策は充実していた。チャイルドラインなど電話を使った相談は広がってきたが、子どもがかけ込める場所がなかったから「せたホッと」をつくりたいと思ったという。

世田谷区は、平成13年に東京で初となる「子ども条例」を制定している。平成23年12月、いじめによる自殺、体罰が全国で問題となっていたため、区内の子どもたちはどのような状況にあるのか区がアンケートを行った。その結果、相談救済機関の必要性を認識し、平成24年度には「世田谷区子ども条例」第3章に「せたホッと」の位置づけを追加する条例改正を行い、平成25年4月に「せたホッと」を設置した。

「せたホッと」は、世田谷区子ども子育て総合センター内にある。メンバーは子どもサポート委員3人(弁護士1人、家庭福祉や社会福祉専門の大学教授1人、教育制度学や子ども支援学専門の大学准教授1人)と相談調査員4人の体制となっており、区の子ども若者部子ども家庭課が事務局となっている。子どもの権利侵害に関する相談を受け、助言や支援を行い、個別救済のための申立て等により、関連機関との連携・協力のもと、調査、調整等を行い、問題の解決を図っている。18歳未満の子どもの権利侵害にかかる事案が対象である。相談内容は、学校のこと(対人関係、学校教職員等の対応、いじめ)が最も多く、虐待、不登校と続く。相談者は子ども本人からが約66%と最も多く、母親、父親、祖父母と続く。

平成25年度から開始し、現在3年が経過したが、ネコのマスコットキャラクター「なちゅ」(公募で選ばれた小学生の作品)の効果もあり、「せたホッと」の存在は区内のほとんどの子どもたちに知られている。日頃から児童館へ訪問したり、区民まつりに出展するなど、積極的な広報に努めている。小、中学校92校に年2回カードを配布し、別途リーフレットやレターも配布している。カード配布のあとには相談の電話がじゃんじゃん鳴るということである。

条例には「子どもサポート委員は子どもの権利侵害を防ぐために必要と認めるときは、関係機関などに対してそのための意見を述べることができる」とあり、平成26年度に子どもサポート委員の3人が区に意見表明を出した。特別支援教育の実情を書き、インクルーシブ教育の実現のために支援員の増員を求める内容である。それにより区は予算をつけ、大幅な支援員の増員がなされた。

「せたホッと」の運営費3300万円のうち半分は東京都からの補助金である。「せたホッと」ができた当初、学校は自分たちが批判されることもあるのではないかと警戒をしていたが、公正・中立の立場で活動する機関であることを認識し、最近では保護者と学校とで平行状態になってしまった事案に第三者として関与してほしいと学校から依頼が来るようになっている。

平成27年度、「せたホッと」は新規239件と前年度からの持ち越し65件の合計300件を超える事案があり、2047回の活動回数であった。学校や教育委員会、区役所の課、児童損談所や警察、病院、民生委員などの関係機関との連携も進めているということである。
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「せたホッと」を視察し、世田谷区は子どもひとりひとりが大切にされるまちであるという印象が大きかった。長久手市では、「子ども条例」もなく、人権擁護委員に子どもが直接相談できるような体制もなく、チャイルドラインは名古屋市内の相談員につながるものの、長久手市として子どもの人権を尊重する具体的な施策はない。学校と保護者で平行線になった事案、子ども間のいじめ、子どもが苦しい状況に置かれている親子関係などに対して、公正中立な立場で関与する第三者機関の存在がこれからますます求められるように感じる。1989年には、子どもの人権を守るために「子どもの権利条約」が国連総会で全会一致で採択された。子どもの権利条約でうたわれている4つの基本原則は「差別の禁止」「子どもの最善の利益」「生存および発達の権利」「子どもの意見表明権」である。子どもにとって最善の利益とは何かの視点で考えていく長久手市であるよう、調査研究を続けていきたい。

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