3日前にアップした「彩の国さいたま芸術劇場」

の視察報告に続き、その翌日に訪れた横浜市いたち川の

視察報告をアップします。

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横浜市いたち川視察報告

                    さとうゆみ

 くらし建設委員会の視察で横浜市の「いたち川」を視察した。視察先に選んだ理由は、30年前から河川改修を進めてきた経験や水辺環境の保全への取り組みが、規模の似ている長久手の香流川に参考になるからである。


 いたち川は、横浜市栄区を流れる総延長約9㎞の小河川で、江の島に流れ込んでいく川である。川の氾濫が多かったため昭和45年から河川改修工事が進められてきた。水害はなくなったが、人口増加に伴う開発などにより徐々に自然性を失っていったため、昭和57年度から低水路整備による水辺の自然復元を開始した。低水路整備とは、約15m幅の河床に5~6m幅の低水路を設けたものである。河床を30~40㎝掘り下げ、低水路の両側に掘削土量とほぼ同量の土を盛土し、植生が繁茂する環境をつくっている。また、魚道の整備を行い、河川を横断する半すり鉢状の緩やかなスロープにより、魚介類がどこからでも遡上できるようになっている。魚道の表面に直径60㎝程度の玉石を46カ所取り付け、玉石の下流側に深さ5㎝程度の窪地を設け、魚介類が途中で休憩しながら遡上できる環境をつくり出している。上流の2.5㎞は、昭和62年に創設された国の「ふるさとの川整備事業」の認定を受け、水辺の環境整備が進められてきた。2.5㎞のうち、これまでに「稲荷森の水辺」「扇橋の水辺」「坊中の水辺」の3区域の整備がされている。今回は、「稲荷森の水辺」を歩いて視察した。歩いているとすぐ近くのあちらこちらからウグイスの鳴き声が聞こえ、カワセミの姿も見かけた。


「稲荷森の水辺」は、平成4年度から平成8年度にかけて整備が行われ、旧川と新川の間の土地を買収し、幅40~50m、約1haの水辺拠点を確保したのが特徴である。旧川は樹木が生い茂り自然を色濃く残していたことから旧川は極力自然の姿で残している。旧川の方へ水を多く流すことで従来からの環境を維持し、一部の水を新川に引き込むことで、中州を中心として左右に速い流れと緩やかな流れができ、植物など多様な河川環境が生み出されている。また、水辺南面に広がる「稲荷森」と旧川、新川とを一体整備し水辺から森まで連続性を持たせ生態系に配慮している。


草木の生い茂り具合にびっくり


自然がいっぱいで横浜ということを忘れそう


写真愛好家が設置したカワセミのとまり木




半夏生

「扇橋の水辺」は、平成8年度から12年度に工事が行われ、旧川と新川に囲まれた約1haの区域に背後の連続した保存緑地を活かした空間づくりと公園づくりを進めたことが特徴である。水際は、植生マットによるものと捨石によるものを主に使用し、植生マットには植物が繁茂し、捨石の間にも植生が回復してきている。旧川と新川の合流点には、アーチ型の人道橋「扇橋」を設置した。

 

「坊中の水辺」は、平成11年度から平成13年度に工事が行われた。ここでも旧川は極力自然の姿で残すため、平常時は旧川へ多く水を流し、環境保全、生態系の維持に配慮している。新川側は、緩やかな勾配で護岸を形成し、河川広場として治水安全度を確保するとともに、憩いの場、遊び場としても利用できる空間となっている。


 いたち川では川づくりにおける市民協働が進んでおり、市民が組織している水辺愛護会が清掃などの環境保全活動を行っている。愛護会は平成9年に制度化され、平成25年時点で市内に91、栄区内に16存在する。市は、年間7万円~14万円の管理費を各愛護会に、清掃、花壇づくり、草刈りなどを行ってもらっている。また、愛護会などの関係者が集まって組織された「いたち川OTASUKE隊」が、かわら版を年4回発行し、散策マップも作成している。「いたちかわかわらばん」には、いたち川の魅力や愛護会の活動などが載っており、現在66号まで発行されている。水生生物調査によると、いたち川に生息する種類は年々増えているという。ただ、発見される外来種の数も年々増え、平成23年度のデータでは7%に上っている。川やその周辺は、公園のような管理はせず、少し草刈りをする程度であるので、7月の時期は草木が高い位置まで生い茂っていた。いたち川の整備はこれまで各種賞を受賞しており、私は受賞する整備とはきれいに整えられたものだと思い込んでいたため、想像以上に草木が生い茂る様子に驚いた。しかし、これが多様な動植物が生息できる環境づくりであることを理解した。長久手市の香流川が市民に親しまれ、自然が守られる川であるよう、今回の視察を参考に考えていく。