無事に行政視察を終えました。


以下、私の個人的な感想に基づく秦野市視察レポートです。

静岡県磐田市の視察レポートは後日アップします。


【視察レポート】

8月3日(水)文教福祉委員会の行政視察で神奈川県秦野市役所を訪れた。視察の目的は、秦野市教育研究所が取り組んでいる「幼小中一貫教育」と「2学期制」、「教育研究所事業」を学ぶことである。教育委員会教育部指導課の職員からお話しを聴いた。秦野市教育委員会の管轄下に「教育総務部」と「生涯学習部」の2つの部があり、「教育総務部」の下に教育総務課、学校教育課、教育指導課、教育研究所がある。

秦野市は人口約17万人のまちであり、議会事務局の職員は11人、市議会議員は26人であった。長久手町長選挙と同日の8/28に秦野市議会議員選挙があるため議員はお忙しい様子であった。



神奈川県は県を挙げて教育に力を入れている。現在の秦野市長は元市議、元県議という経歴を持ち、議員の時代から教育に高い関心があり、市長になられた後も熱心に取り組んでいる。今の市長の前は市役所の職員上がりの方が2人続けて市長であったそうで、民間の目線で改革をすすめていることも注目されている。



「幼小中一貫教育」

現在、秦野市には幼稚園が14園、小学校が13校、中学校が9校ある。それぞれの地区ごとの幼稚園、小学校、中学校が徒歩数分で行ける近さに立地しているという特徴があり、幼小中一貫教育をすすめるには好条件が整っている。市内に幼稚園は公立幼稚園が10園、認定こども園が4園あり、厚生労働省の管轄下となる保育園は対象としていない。

「幼小中一貫教育」では、小学1年生、中学1年生といった環境が大きく変化する時期に勉強や人間関係でつまずくことがないよう配慮されている。また、連続性のある学習を保障することで学力の向上を目指すことを目的としている。例えば、幼稚園で、小学校低学年の生活科、音楽、図工、体育につながる内容を取り入れたり、小学5,6年生の教科書を中学校の教師に配布したりしている。「幼稚園の教諭は幼稚園の教諭」、「小学校は小学校の教師」、「中学校は中学校の教師」とバラバラになりがちであるが、秦野市では指導者間の意思疎通を図ることを積極的に行っているとを感じた。これにより、社会科の歴史は小学校でどこまで習ったか、中学校はどこから習うかなどのすり合わせをするなど、結果的に子どもたちのためになっていると思う。長久手町ではこのような指導者間での意思疎通は十分図れているであろうか。長久手町内には、厚生労働省管轄の保育園が文部科学省管轄の幼稚園の倍ほどあり、小学校と中学校も隣接して立地していないため、秦野市の条件とは異なる部分がある。しかし、必ず近くに立地していないとできないということはないので、長久手でも検討の余地はある。



「2学期制」

秦野市では平成16年度から学校2学期制を導入した。平成16年度には小学校3校(市内に13校ある)で開始し、平成17年度には小学校3校に加えて中学校1校(市内に9校)が導入。平成18年度には小学校3校、中学校3校、幼稚園3園(市内に14園)に拡大した。

結論から言うと秦野市では約5年間2学期制を導入し、現在はすべて3学期制に戻している。

実際に開始する前、2学期制のメリットとして考えられていたことは「2学期制の場合は、3学期制での学期末短縮日課を組む必要がなく、授業時間の確保がより可能となること。」「7月、12月に教師が評定作業や通知票の作成を行わない分、個々面談の業務などに集中でき、ゆとりある教育活動が可能になること。」「夏季休暇が前期の途中の位置づけであるため、学びの連続性を重視し夏季休業の有効活用ができること。」「7月、12月の児童への面談が充実できること。」などである。しかしながら、「授業時間の確保がより可能である。」と考えられたことに関しては、結果的に3学期制と大きな差はなかった。通知票を夏休み前には出さないのは不安だと多くの保護者から意見が出て、結局夏休み前に成績の状況表を出すことになり、教師のゆとりが生まれるわけではなかった。後者の2点についても、必ずしも2学期制でなければできないことではなかった。学期が長くなることによって定期テストの試験範囲が広くなるといった子どもたちの直面するデメリットも出てきた。保護者の立場から年に2回の通知表では子どもの学習状況や学校での様子が分かりづらいと感じることも少なくなく、浸透させるには長い期間がかかるようである。

秦野市の今の3学期制の姿は、実際に2学期制を導入した研究成果を踏まえた上での洗練されたものである。2学期制を取り入れてみるというのは安易なことではないので、秦野市の行動力を高く評価し、その研究結果を参考にしたい。



「教育研究事業」

教育研究所では「里地里山自然環境活用学習研究」という事業で、全幼稚園、全小、中学校において自然体験学習に取り組んでいる。教育委員会が昆虫や鳥の図鑑のような冊子、自然環境に関する冊子を作成しており、市全体での関心の高さを感じた。秦野市の自然環境を生かした自然体験学習を幼稚園、小学校、中学校ですすめている。また、教育研究所刊行の資料として算数、漢字、言語力、英語のプリント集のような冊子がある。計算なら計算だけが、漢字なら漢字だけがそれぞれ一冊に小学校1年生から中学校3年生までの9年間で習う項目がすべて含まれており、教師一人に一冊配布される。教師が必要だと思うところをコピーして子どもたちに配布し、活用するようである。きちんと冊子になっているものなので予算が結構かかるかのではと思い質問すると、庁舎内のコピー機でコピーして冊子にしているので年間約5万円ほどで作れるそうだ。子どもが、どこの時点でつまずいたのか気づくためのきっかけともなるそうである。これらのことは長久手にはない取り組みであり、良いところは取り入れていきたい。



冒頭に市長は民間の目線で取り組んでいると書いたが、1つの事例として秦野市役所の敷地内にコンビニを誘致するという珍しいことを行っている。周辺の市場調査をした上でこの場所で採算が合うと判断して誘致をした。役所の敷地内にコンビニができたのは日本初だとのこと。通常のコンビニとしての機能だけでなく、24時間開いているコンビニで「住民票」「戸籍謄本」「印鑑証明」などの申請と受け取りができる。また、レジのカウンターには図書返却ポストがあり、図書館で借りた本を返却できる。本棚には総合計画や白書、教育委員会が作成した冊子が並んでおり、住民が行政を身近に感じられる工夫がされている。さらに、市内の障害者施設で作ったお豆腐を販売するスペースを設け、市内で採れた野菜も売っている。コンビニの建物外側の壁には掲示版を設置し、催し物案内のポスターが貼られている。夏休み後には子どもたちの描いた作品が掲示されるとのこと。このコンビニは行政と住民をつなぐ役割を果たしており、画期的である。





さとうゆみオフィシャルブログ「きらめく未来づくり日記」Powered by Ameba
教育研究所刊行の算数プリントの冊子など



さとうゆみオフィシャルブログ「きらめく未来づくり日記」Powered by Ameba
敷地内のコンビニで24時間申請手続きと受け取りが可能。



さとうゆみオフィシャルブログ「きらめく未来づくり日記」Powered by Ameba
コンビニで図書館の本の返却ができる。



さとうゆみオフィシャルブログ「きらめく未来づくり日記」Powered by Ameba
市の総合計画などが住民の身近に。



さとうゆみオフィシャルブログ「きらめく未来づくり日記」Powered by Ameba
障害者の施設でつくったお豆腐を販売。