玄関の時計が6時半を指していた。
車のキーがない。いつも通りのはずの朝が、たったそれだけで音を立てて崩れていく。縦列駐車の後ろにある自分の車は、前の車を動かさないと外に出られない。母が「ない、ない」と言いながらカバンをひっくり返す姿が焦燥感を倍にした。
「今日はマズい。初めての突発遅刻になる…」
そう思った瞬間、頭のどこかで資産運用のチャートがちらついた。“遅刻は信用の値崩れ”。
投資の世界では、一度崩れた信頼を取り戻すのは大変だ。会社でも同じ。遅刻は小さな出来事に見えて、信用の下落幅は深い。
バスの時刻表を調べ始めたその瞬間、
「あった!ここにあった!!」
と母の声。
時刻はすでにギリギリだった。結果、30分遅刻。顔が火照るほど情けなかった。
早朝バイト初日の朝。
“ここで遅刻したら本業に間に合わず、辞めざるを得ないかもしれない”
その恐怖が妙にリアルだった。
「ここは1億円を手に入れるかどうかの分岐点だ」
そう思うのは大げさではない。
本業のキャリアは、長い目で見れば確実に自分の生涯年収を左右する。年収が10万円変われば、40年間で400万円。昇給や役職による差まで考えれば、1億円の差になることだって本当にある。
目を閉じて、明日の動きをイメトレする。
起床 → 防寒着を着て家を出る → バイト現場 → 定刻で退勤 → 車へ戻る → 本業へ直行
「これなら間に合う」
自分にそう言い聞かせた。
「今、このタイミングで遅刻なんて…何かの警告か?」
そんな気にもなった。でも、冷静に考えればこれはただの偶然じゃない。
・早朝バイトと本業の両立に潜むリスクの“事前通知”
・生活リズムを整えないと信用資産が毀損するという“示唆”
これはむしろ、「事故る前に修正しろ」という、ありがたい“先行指標”だ。
投資でもそうだ。
不自然な値動きは、大きな下落の前触れになることがある。
人間の生活も同じ。
小さなトラブルは、大事故の前の“揺れ戻し”だ。
僕は決めた。
“信用投資”を優先しよう
明日は絶対に遅刻しない。
その意思は、株の“ロスカット”と同じだ。
損失を最小限に食い止め、未来を守るために必要な判断。
人はよく、お金には敏感なのに、
「時間」と「信用」という、より価値の高い資産を軽視する。
今日の遅刻は、僕にそれを思い出させてくれた。
そして、僕はエンジンをかける前に深呼吸しながら思う。
“これを乗り越えたら、たぶん人生はもっと良い方向に動き出す。”