「首相動静」までもが「特定秘密」なのか──自民・小池氏発言に波紋 | TABIBITO

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政府が「特定秘密保護法案」と一体で法制化をすすめようとする「国家安全保障会議(日本版NSC)」創設関連法案が28日、衆院国家安全保障特別委員会で実質審議入りした。
 
その質疑の中で、質問に立った自民党の小池百合子広報本部長は首相の一日の動きを報じる「首相動静」について、「日本は機密への感覚をほぼ失っている平和ぼけの国。首相動静とか各紙に出ているが、国民の知る権利を超えているのではないか。何を知り、何を伝えてはいけないか精査をしっかりしてほしい。」と述べ見直すべきだとの考えを示した。
 
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小池氏は見直すべき理由として、「米紙では日本のように大統領の詳しい動静は載らない」ことを挙げた。
機密を漏らした公務員らに厳罰を科す特定秘密保護法案をめぐり、国によって秘密の範囲が拡大解釈され情報統制が強まる懸念が出ているだけに、発言は波紋を呼んでいる。
 
 ◆「朝日」10月28日付
 ◆「東京」10月29日付
 
小池氏の発言について、菅官房長官は28日の記者会見で、報道各社が掲載する首相動静の記事について「重要情報の場合もあるが、特定秘密保護法案に規定する要件にはあたらない。当然(特定秘密の)対象にならない」と述べた。
また、発言への感想を問われた菅氏は、「首相動静は(報道機関が)懸命な努力をして報道される。取材で公になる首相の動向だ」として、首相の面会時間や相手は機密情報になり得ないとの認識を示した。
 ◆「読売」10月28日付
 
 
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今日の「日刊スポーツ」の「政界地獄耳」は「平和ボケ語る小池の秘密ボケ」と題して次のように書いている。
 
「……
★早速、官房長官・菅義偉が会見で火消しに及んだのは、こんなことまで秘密にしようとしているのかと小池発言が逆効果と受け取られかねなかったからだ。というのも小池は第一次安倍内閣の首相補佐官(国家安全保障問題担当)でこの問題に取り組んできた第一人者の1人。それがこんな理屈では先が思いやられるということだろう。
★そもそもこれは何かと秘密が多い政治の世界で逃げも隠れもせず堂々とオープンにするという首相サイドの覚悟の表れが発露だろう。意図的に官邸で面会して新聞に名前を載せたい向きもあるだろうし、財務省・麻生太郎の首相時代は夜会食する高級店に注目が集まった。
それも含めて一挙手一投足に集中し、国民に見せることが目的。海外にないどころか、我国の民主主義の進歩した部分では
ないか。国会議員の秘密ボケのほうが問題だ。」
 
 
たとえば、昨今、原発問題や消費税増税問題など、国の重要問題で、メディアの批判が弱く、政府との癒着があるのではないかと懸念されているが、「首相動静」をなくすことになれば、今でも「ゆるい」関係なのに、さらに「緊密」な関係になりかねない。
 
「新聞労連・東京新聞労組ニュース『推進』№.44」(6月26日付)によれば、安倍首相と会食したマスコミ経営者や幹部たちで「動静」に載った一覧(1月~7月1日まで)は以下の通りだ。

1月 7日 読売新聞グループ本社の渡辺恒雄会長=パレスホテル内の日本料理店「和田倉」
     8日 産経新聞の清原武彦会長、熊坂隆光社長=ANAホテル内の日本料理店「雲海」
   10日 時事通信の田崎史郎解説委員=赤坂の日本料理店「陽羅野家」
2月 7日 朝日新聞の木村伊量社長=帝国ホテル内の中国料理店「北京」
   14日 産経新聞の清原武彦会長=ホテル「ザ・プリンス」内の中国料理店「陽明殿」
   15日 共同通信の石川聡社長=白金台の日本料理店「壺中庵」
3月 8日 日本経済新聞の喜多恒雄社長=帝国ホテル内のフランス料理店「レ・セゾン」
   13日 日本テレビの粕谷賢之報道局長=赤坂のレストラン「アークヒルズクラブ」
   15日 フジテレビの日枝久会長=芝公園のフランス料理店「クレッセント」
   22日 テレビ朝日の早河洋社長、幻冬舎の見城徹社長=首相公邸
   28日 毎日新聞の朝比奈豊社長=ホテル「椿山荘」内の日本料理店「錦水」
4月 4日 時事通信の田崎史郎解説委員、読売新聞の小田尚論説委員長、朝日新聞の曽我豪政治
                部長=永田町の中国料理店「聘珍楼」
    5日 日本テレビの大久保好男社長=帝国ホテル内の宴会場「楠」
5月 7日 時事通信の西沢豊社長、田崎史郎解説委員=パレスホテル内の日本料理店「和田倉」
    8日 読売新聞グループ本社の渡辺恒雄会長、日本テレビの大久保好男社長(他に長嶋茂雄
                氏、松井秀喜氏も同席)=首相公邸
   14日 中日新聞の小出宣昭社長、長谷川幸洋論説副主幹=西麻布のフランス料理店「彩季」
   15日 読売新聞グループ本社の渡辺恒雄会長=パレスホテル内の日本料理店「和田倉」
6月12日 NHKの島田敏男解説主幹、産経新聞の石井聡論説委員など報道各社の論説委員・解説
               委員ら=赤坂の中国料理店「赤坂璃宮」
6月20日 河北新報の一力雅彦社長、福井新聞の吉田真士社長、信濃毎日新聞の小坂壮太郎社
               長、静岡新聞の大石剛社長、京都新聞の白石方一会長兼社長=ホテルオークラ内の中国
               料理店「桃花林」
7月 1日 読売新聞の飯塚恵子論説委員ら=ホテルグランドパレス内の日本料理店「千代田」
 
 ◆「憲法メディアフォーラム」7月10日付「東京発  読者の疑念招く新聞社トップと首相の会食」から抜粋
 
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 「動静」で、首相が誰とどこで会食しているのかがわかると、「首相が精力的にマスコミ幹部と会ってご馳走しているんだな~。消費税増税を批判する記事を書かないようにさせるためかな、それとも集団的自衛権かな…」とか、国民は注意するだろう。
また、「5月14日 中日新聞の小出宣昭社長、長谷川幸洋論説副主幹=西麻布のフランス料理店『彩季』」とあるのを見て、「おおっ!ついに、安倍首相は、なにかと“うるさ方“の『東京新聞・中日新聞』を黙らせようというわけか。いや、待てよ、そうだ長谷川副主観は、もう『規制改革会議』の委員になってるじゃんか~」などと、いろいろ考えをめぐらせることができる。
いわば、不十分とはいえ、かろうじて国民の監視の目が注ぐのである。
 
 
自民党の石破幹事長が、13日に、BS―TBSの番組で特定秘密保護法の「知る権利」について、「国家の安全保障に重大な支障を与える情報まですべて国民が知る権利にあたるか、というとそうでもない」と述べ、「一定の制限があり得る」としたうえで「知らしめたことで、国家の存立、国民の生命、財産、公の秩序が揺らいでしまうものに対しては、国家は国民に対して秘密は守る義務を負っている」と発言した。
 ◆「朝日」10月14日付
 
 
はたして「首相動静」を知らしめることで、国家の存立、国民の生命、財産、公の秩序が揺らいでしまうのだろうか。
石破氏や小池氏の発言を聞くと、自民党や政府の考えは、「知る権利」を制限する方向に協力にシフトしているとしか考えられない。
 
石破氏や小池氏の頭の中では、政府を監視したり、チェックしたりするようなものすべてが「『知る権利』を超えている」ものに該当し、都合の悪いものはなんでも「秘密」にしたいのではないだろうか。
「『知る権利』を超えている」というが、まさに「『秘密』にする限度を超えている」といいたい。
 
 
国民の世論は反対が多数派である。特定秘密保護法案に対するパブリックコメントの結果は、異例の9万件が寄せられ、反対が8割であった。また、この間の各種世論調査も「反対」が「賛成」を大きく上回っている。
 ◆「特定秘密の保護に関する法律案の概要」に対する意見募集の結果
 
にもかかわらず、国民の声を無視して、「知る権利や自由を制限せよ」と声高に発言するのか。まるで、アメリカの方に向かって「機密はブロックしますから大丈夫ですよ」と言っているかのようだ。
 
なんとなく、秘密保護法案の正体が垣間見えた気がする。
 
 
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