大宮妄想小説、BLです。

ご理解のある方のみ、どうぞ。

苦手な方、不快に感じる方はご遠慮下さい。

 

 

今作はこちらのサイドストーリー的なものになってます↓

未読の方は、こちらからどうぞ♡

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

智side



「とりあえず…
適当に置いといたからね。」


「…………………」



その日は結局。

引っ越しも
スマホ変更の手続きも。

屍みたいに動かない
役立たずの俺に代わって。

翔くんが全部やってくれた。





「っていうか俺、整理とか苦手だから…。
まじ色々使いづらいと思うけど……」


「…………………」

「スマホも…全部いらないって言うから
本当に誰も登録してた番号のデータ
新しいのに移さなかったけど…いいの?」


「…………………いい、」

「…………………」

「もう……電話、意味ねーから。」





和と繋がれない
電話なんて。



他の誰を
入れてたって。

もうなんも。
意味ないから。





「…とりあえず。
俺と会社だけは……入れといたから、」


「……………………」

「せめて…俺の電話には

出てもらわないと困るから…ごめん、」

「……………………」

「明日のは、どうしても予定ずらせないから…。
いつも通り迎えに行くよ?いい?」


「……………………ん、」





和がいなくなる毎日がくる、
とか。

全然…
考えられんくて。



当たり前のように
終わって。

当たり前のように
やってくる明日に。



気持ちも。
なにもかも。

現実に
追いつくことができんくて。



びゅんびゅん流れてく
夜の街の風景に。

和…って。
ぼんやりと、和の笑顔を想った。





ふと、目に入った。

和の住むマンション近くの
もうすっかり見慣れた景色に。

やっぱり。
大好きでたまんない人の名前。

口に出さずには
いられんくて。



一度口にした
愛しい人の名前に。

和への、どうしようもない想いが
後から後から溢れた。





「………………和、」





会いたい。
会いたい。


もう…このまんま。

会えないまんま
さよならすんのは。

絶対…絶対いやだ。





「…………翔くん、」

「……………………」

「翔くん……お願い、」

「……………………」

「今夜だけ…お願い…行かして。」






たった。
たった半年だったけど。

俺と和の恋を
唯一黙って受け止めて。



こうして
こっそり送ってくれて。

いつも俺らの味方でいてくれた
唯一の人。





「…………明日、8時。」

「……………………」

「いつもの…
マンション裏の所で待ってるから。」


「……………………ん、」

「社長には、電話しろって言われてるから。
10分後くらいに…いま帰ったって、言っとくからね。」


「………………あんがと。」





いつもと変わらない
街並みを抜けて。

いつものように
車を停めてもらって。

いつものように
こっそりと。

和が住んでる部屋へ向かう。





「………和、」





どんどん。
どんどん急ぎ足になってく足で。

はやる気持ちのまま
和の部屋の、インターホンを押した。





和。
会いたい。



早く…

早く和に会って…





………

………

………





…………和に、会って、





そんで…俺。

なんて言うんだろ。





「はい……え、あれ?智?」

「………………ぁ、」

「え、あれ?珍しいね。
来るって連絡、もらってたっけ?」


「……………ぁ…いや……」

「とりあえず入って。
誰か来たらまずいし。」






ココア用意するから
座ってて…って。

いつものように。

さっさとキッチンへ向かって
甘々なココア、作ってくれる和に。



別れよ…って。

もう終わりにしよ…って。



俺…そう、
言わねーとなんねーの?





「……大丈夫?
なんか、ヤケにボーっとしてるけど。」






心配そうに
覗き込んでくる。

どこまでも透き通った
とびっきり綺麗な、琥珀色の瞳。



初めて会ったあの時から。

心奪われて。
ずっと、好きでたまんねーのに。





「そんなに疲れてるんなら…
無理して今日、来なくていいのに。」






少し高めの、その声も。

伸びやかな歌声も。
くるんとしたその口元も。



大好きで。

ずっと、ずっと
大好きで。



今でも
その魅力に捕らわれてんのに。



もう。

俺のもん…じゃ
なくなんの?





「明日でも。明後日でも。
来れる時に来たらいいじゃない。」






―――明日も、明後日も。





和を待ってる、その未来に。



俺。

もう。



いないんだ。





「……ね、智。
ほんとに今日、どうし……っ……」






和の身体を
強 引 に自分の方へ 抱 き 寄 せて。

ただ、がむしゃらに。

和の唇を
貪 る ように キ ス をする。





「ん、っ………」





唇から伝わる
温もりに。

くしゃ…と 掻 き 抱 いた
柔らかなその髪に。



痛くて。
苦しくて。

胸が震えて。



こみ上げてくる涙を
かき消すように。

乱暴に。
和の口 内 をひ っ か き ま わ す。





どうか、いまだけ。





和の未来に。
俺、いられないんなら。

そんなら。
せめて。

いまだけでもいいから。





和の存在、全部に。

俺のこと。
刻ませて。





突然のことにびっくりして。

軽く抵抗する
和の手を取って。



その抵抗を 塞 ぎながら。

そのまるっこい指に
俺の指を 絡 めて。

深く、深く。
和の口内に 舌 を 絡 める。



ハァ…と唇を離した一瞬の
わずかな隙間で見えた真っ赤な頬に。

ぐいっと
和を抱きかかえて。

和に何も言わないまま。
まっすぐ、寝室へと向かった。