大宮妄想小説、BLです。

ご理解のある方のみ、どうぞ。

苦手な方、不快に感じる方はご遠慮下さい。

 

 

今作はこちらのサイドストーリー的なものになってます↓

未読の方は、こちらからどうぞ♡

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

智side



”これはなんだ。”



三年前の、あの日。

珍しく社長から呼び出されて
なんかしたかな…って思いながら
向かった事務所の、社長室の机の上には。



多分…
初詣に行った日の。

二人で境内を歩いてるとことか。
一緒に車に乗り込むとことか。

車の中…
ほんの一瞬だけ。

帰り際に唇を重ねた時の
俺と和の写真が載せられた。

”熱愛”ってどでかく書かれた
一枚の原稿が乗っていた。





”…………………これ、”

”今朝、週刊誌から送られてきたよ。
明後日の分に、これを載せるらしい。”


”……………………”

”……別れろ。” ”やだ。”




和のことだけは。

それだけは絶対。
なにがあっても譲れんくて。



食い気味に
返事をする俺に。

社長だって
負けてはなかった。





”…今回だけは、目を瞑ってやる。” 

”……………………”

”この記事も揉み消してやるから。
だから別れろ。”


”……………次は、” ”次はじゃねーんだよ。”

”もう知られてんだ。
どんな手使ってでもまた撮るに決まってんだろ。”


”………………でも、”

”その度に金で揉み消すか?
お前のためだけにそんな使えねーぞ。”


”……………………”

”…今日の仕事、全部キャンセルしてる。”

”……………………は、”

”家帰って荷物まとめろ。
新しい所は櫻井に押さえさせたから。”


”…………………新しい、って、”

”部屋、今日中に引っ越せよ。”

”………………は?”

”スマホも、番号変えとけ。
もう二度と連絡取んじゃねーぞ。”


”ちょ…待ってよ、”

”先にスマホからの方がいいか。
おい、櫻井に『終わったらこのままショップ行け』って伝えろ。”


”……はい。” ”待てって!!!”





思わず荒げた声に。

社長室のドアが開いた瞬間
びっくりした顔で、目を見開く翔くんが見えて。

震える手を
ぎゅ…っと握りしめる俺に。

淡々とした口調で。
社長が言葉を続ける。





”これくらいしないと。
またついてこられたら困るだろ。”


”…ざけんなよっ!
俺は…っ!まだ…っ!”


”……一生、ネットのおもちゃにさせるか?”

”…………っ、”

”こんだけはっきり顔が映ってんだ。
相手が誰かなんて、すぐ分かんだろうな。”






ちょっと待てよ…って。

さっきから
心は置いてけぼりで。

全然ついていけてないのに。



畳み掛けるように。

次から次へと
どんどん社長は話を進めていく。





”人気沸騰中のSatoshi Ohnoの恋人。
しかも男…そりゃ、すぐに拡散されるだろうな。”


”……………………っ、”

”普通の生活もできなくなって。
職場も追い込まれて。
人生、全部めちゃくちゃにされて。”


”………………………”

”あることないこと、なんでも書かれて。
消してもすぐ、どっかで拡散し続ける。”


”………………………それ、は、”

”一生…ネットの暇つぶしにされるぞ。”

”………………………”

”こいつがそうなっても…
お前は、別にいいんだな。”






トン…トン…と
社長が指で叩き続けるそこに映る。

俺の隣りで
屈託なく笑ってる和の笑顔に。

なんにも。
言葉が出なくなった。





”お前のせいで、こいつの人生
めちゃくちゃになってもいいんなら何も言わないが…”


”………………………俺、の、”





俺の、せいで。
和の人生がめちゃくちゃになる。



社長の言葉が
頭の中にぐわんぐわん響いて。

苦しくて。
苦しくて。

うまく
息ができなくなった。





”……おい、櫻井を呼べ。”

”………………失礼します。”

”後は頼んだぞ。
何かあったらすぐ知らせろ。”


”……………………はい。”





一ミリも動けない俺に。

翔くんが近寄って
そ…っと、俺の腕を引っ張る。





”…………智くん、”

”…………………”

”智くん……行こ。”

”…………………”

”……別に俺も、恋愛するなとは言ってない。”

”………………………”

”ただ…その相手くらいは考えろ。”

”………………………”

”イメージに傷がつきすぎる相手は困る。”





イメージって、なに。



傷って。

困らない相手って、なに。



俺は。
他の誰でもない。

和じゃなきゃ…



和が、いいのに。





”来月、新曲の発表があるんだ。
それまで大人しくしてろ。”






最後に吐き出された
社長の言葉に。

結局。
なんにも言えんくて。



ぱりん、て

心が割れそうになった直前。

ぐい…っと
強引に引っ張られた力にされるがまま。
 

翔くんに引きずられるように

部屋を出た。