今も変わらずに、

聴いた時から、ずっと好きな歌───


『Miles away』



こちらでは。



その頃の彼らを、

私が、

個人的に、

好きなように勝手に妄想したお話を、

投稿させていただいています。



ご興味のない方、

大変申し訳ありません…………💧



自己満足的に妄想したお話で、

決して事実ではありませんので───


お許しいただける方のみ、

お読み下さるよう、

お願い致します───(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)





















〈嵐を表現するあなたの深層〉


8月。

アリーナツアーがファイナルを迎えると、

俺は、

すぐに、

ブラジル・リオへと立つことになっている。



他のメンバーは、

まだ、

数曲ぐらいしか、

レコーディングが進んでいないようだけれど……


俺は、

その前に。


全てレコーディングを終わらせて。


リオから帰って来たら、

車椅子バスケの練習を開始することを、

予定に入れていた。



悩んでいる暇はない───



悩む………

というか、

考えている時間はなかった───






「……え?これ……何………?」


この日。

スタッフから渡された、

『Miles away』の歌割りの譜面に、

一瞬、

意味が分からなくて、

思わず、声が漏れた。



「大野さんからの『Miles away』は、自分のパートだけレコーディングしてもらって……と聞いてます」

「…え、嘘………マジで…?」

「なので、それが櫻井さん専用の楽譜です」

「ちょ……待って……これ、ほんとに俺なの?誰かと間違ってない?」


メロを思い出しながら、

頭で歌詞を繋げていくと───


その、 量の多さに、

まず、驚く。



「合ってます。大野さん、この歌にハモリを多用してますね。常にみんなが別のパートを歌うことになってるんですよ……全体像は、出来てからのお楽しみ……ってことらしいですよ」


あまりのことに、 

俺は、

暫し、呆然としてしまった。


「マジか……」


「いや、ちょっと正直。スタッフからも、だいぶこの歌割りには不安が出て、いろいろと提案したんですが…………」

「そうだよね………いつもと、全然、違う感じが……」

「大野さん、あの通りの方なんで……(笑) 頑として、譲らなかったんですよね(笑)でも、ま………大野さんがそこまで言うなら……と、スタッフも信じた訳です」

「そう…なんだ……」




所々にしか歌詞の書かれていない譜面。

全体像が、まるで見えてこない……


各メンバーの監修曲って、

こんなに………

やるもんなの……?



今はまだ、

全体像の見えない『Miles away』


この穴が空いたように見える譜面に、

理解出来ていない俺は、

不安が、

過ぎるけれど───



兄さんの頭の中には、

ちゃんと、

聴こえているんだろう………


この歌を、

5人で歌った声が───




「兎に角、1度、やってみましょう。まだ、この歌。大野さんしかレコーディング終えてないんですよね」

「……あの人、これ、先に終えてるんだ……」

「えぇ。きっと………スタッフから不安が出ているのを知ってるから、先に、自分のレコーディングを済ませたんじゃないですかね……レコーディングごとに他のメンバーの声と重ね合わせて、どんな風になっていくのか………っていうのを、こちらで、確認も出来るんで………いや、ほんと(笑)…スタッフが不安を口にしたせいで………至れり尽くせりです(笑)」


俺は、

兄さんの考える嵐に、衝撃を受けていた。



「そう、なんだ…………みんなが、別のパート……」



その上。

俺のパートに、

高音が多いことにも、若干の不安が………



「いや、ヤバイな……俺(笑)声出るかな………?」

録音ブースへと歩きながら、

俺は、呟いた………



すると。

「『大丈夫、出来るよ』」

と、急に声を掛けられて、振り向く。


怪訝に思っていると……

「大野さんが、みんなにそう言って……って、仰ってました(笑)」



見抜かれてる───



俺は、

兄さんの顔を思い出して、

思わず笑った。






9年振りのアリーナツアー。

そのファイナルを、横浜で迎える俺達。


アリーナに到着して、

楽屋へと急いでいた俺は、

マネージャーから離れて、先に楽屋へと向かった。


両手が塞がっていた為、

苦労してドアを開けようと、

ガチャガチャやっていると───

遠くから、

マネージャーが慌てて飛んでくる。


「すいません………というか。待って下さいよ。今日、すごい急ぎますね(笑)」

「ごめん。ちょっとね(笑)」


開けてもらって中に入ると、

不安そうに、

こちらを見つめている兄さんがいた。



ま。

そりゃ。


あんだけ、

楽屋のドアをガチャガチャやられたら、

誰がやって来たのかと、

不安になるよな……(笑)



俺を見て、

安心したように笑う。


「おはよう」

俺が、声を掛けると。


「おはよう(笑)……変な人来たのかと思って、びっくりした……(笑)」


「ごめんごめん。冷たいうちに……と、思って(笑)これ、よかったら………」


ここに来しなに、

マネージャーにコンビニによってもらって、

買って来た両手に持ったカフェラテの1つを、

兄さんの前のテーブルに置いた。



きょとんとして、

そばに立つ俺を見上げる。


「え?これ……俺に?」

「そ。ちょっと、甘いかもね……」

「いや、そんなの……全然……ありがと、翔くん」 


「自分のを買うついでだから」

そう言って、俺も座ると。


「……今日、早いんだね」

兄さんが、少し不思議そうに聞いてくる。


「ふっ……何?自分の方が早いじゃん……(笑)」

「いや、ま、俺は、そう……だけど…………何か、あった?」


戸惑ったような目で、俺を見る。



こんな風に、

俺が、

いつもより早く来る時は、

決まって、

何か、

兄さんに話がある時が多いから…………



「うん。何か……って程でもないんだけど………(笑)」


ちょっと心配げに俺を見ている兄さんに、

少し申し訳なくなって、

言葉を続けた。



「あれ、すごいね………『Miles away』どうやって、あれになったの?」


俺を見ていた兄さんの目が、

そっと横へ逸れて、小さく笑った。


「翔くん、もう録ったんだ」

「何言ってるのよ。その為に、あなた、早くしてくれたんでしょ?」


この人が、

先に、

『Miles away』のレコーディングを終えた……

と、聞いて。


最初に感じたのが、

それだった───



この人のことだから。


俺が、

リオに行く前にレコーディングするだろうと、

あの歌を、

先に、やってくれたのだ。



俺の言葉に、

兄さんは、否定も肯定もせずに笑う。



「いや、でも……すごいよ、あれは。よく思い切ったねぇ……」


「いっつも、全部歌うから、すごい時間かかるじゃん?あれだったら、みんな、早く済むかな……と、思って……それだけだよ」


カフェラテに手を伸ばしながら、

そう言って、

ストローを咥える兄さんを見ながら……


俺も、

自分のに手を伸ばした。



いやいや。

それだけじゃないだろ……

と、思うけど。


それ以上、

あまり言わないのが、

この人で………



「あなたは、どの辺歌ってるの?」

「………どの辺…って……(笑)難しいこと聞くなぁ……」

「だって、俺。ほぼ、主旋律じゃない?……あなた、どこ歌ってんのよ?」

「ふふっ……(笑)教えない。出来上がってからのお楽しみだよ」

と、面白そうに笑う。


「ふっ……何でよ(笑)教えろよ」

俺がそう言うと、

面白そうに、

くっくっくっ…と、余計に笑う人──


「だいたい、さ。出だしも、俺だったし…ちょっとびっくりしたよ」


その言葉に、

ちらりと俺を見た、兄さん。


俺と目が合うと。


目を見たまま、

ゆっくりと、

何かが解れていくように、

この場にそぐわない程の、優しい表情をした。



「翔ちゃんに、歌って欲しかったの……ここは」




俺に言う……

と、いうよりは。


まるで。


自身に言うように、

小さく、そう呟く。



急に、

あなたの空気が少し変わったことに。


この時の俺は、

何となく、

妙な感覚を覚えた…………



あなたが、

何を、

今思ったのか、

と、考えていて……



飲んでいたカフェラテを、

口から、こぼしてしまう程───




「……わっ!ちょっ………翔くん」


兄さんが、

ティッシュを持って、

慌てて俺のそばに寄って来て、

俺からカップを取り上げて、

テーブルに置いて………


口を拭いてくれる。



「………(笑)何やってんだよ。服、汚れちゃうよ……」



笑っているあなたから、

そのティッシュを受け取って。



「ああ~、もう、早く洗わないとシミになるよ」

その視線を感じながら。


俺は。


自分で、

軽く口を押さえた───





あなたの考える嵐。


それを表現することに、

俺は、応えられただろうか───