空気感染しないはずのコロナ。なぜ、マスクや換気が必要なのか?
疑問を抱いてきましたが、その理由を示す論文を見つけましたのでご紹介させていただきます
遅くも秋には起きると想像されている『コロナ第2波」対策につながれば幸いです
ノーベル賞受賞者山中伸弥教授が以下の論文で
コロナ感染は飛沫や接触感染よりも、微小飛沫(エアロゾル)による感染が重要であり、マスク着用が感染拡大に効果的である、と指摘されておられます。
このことは、2003.04.21に報じられた
【SARS速報】 香港のSARSマンション集団感染、下水から浴室へのエア逆流が主因か
4月20日午後1時現在で急性重症呼吸器症候群(SARS)の累積患者数が1380人、死者が88人に達した香港で、患者総数の4分の1を占めるマンション集団感染事例の詳細な解析結果が発表された。香港衛生省は、感染拡大の主因は下水溝内の空気が浴室に逆流し、ウイルス粒子が撒き散らされたためと推定した。
下水管を介してのエアゾール感染である
(SARSとは、コロナウイルスに感染することで発症する「重症急性呼吸器症候群(SARS: severe acute respiratory syndrome)」のことを指します。SARSは2002年11月に中国広東省で生じた)
新宿や渋谷あたりの雑居ビルのある、キャパクラ・ホストクラブでの集団感染や、感染不明の原因がこのエアゾール感染である可能性が高いかもしれないと考えるくまであります。
見た目、清潔そうなトイレ、入浴施設・・・・・困ったなぁ
山中教授の論文以下に掲載させていただきました。ぜひ、一読ください
山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信
感染様式と対策3月下旬における日本人の行動調査
Muto et al., Japanese citizens' behavioral changes and preparedness against COVID-19: An online survey during the early phase of the pandemic. Pros One 6月11日オンライン版
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0234292
(内容)
新型コロナウイルスに対する対策として日本人が自主的にとった行動を解析した調査結果。調査は3月26日から28日までオンラインで行われ、20歳から64歳までの11342人から回答が得られた。その結果、回答者の80%以上が、3蜜を避ける、大勢の集まりに行かない、頻繁の手洗いを行っており、70%以上が、咳エチケットやマスクの直用を行っていた。このような対策を取るきっかけとして一番多かったのは、2月上旬のダイヤモンドプリンセス号での集団感染(23%)と3月上旬の世界各国への感染拡大(22%)であり、次いで多かったのは2月下旬の首相による全国一斉休校要請(14%)であった。これら一連の出来事により、多くの日本人が感染対策を自主的に始めたことがわかる。一方で、約20%の回答者は、感染対策に対して消極的であり、30歳未満、男性、外交的、低い所得、と相関があった。
(コメント)
iPS細胞研究でもお世話になっている武藤教授らの論文。3月下旬には多くの日本人が感染対策を自主的に行っていたことが、感染拡大の抑制に貢献したことを支持する結果。個人的には、3月29日の志村けんさんのご逝去に非常に大きな衝撃を受けました。
クラスター対策班からの報告
(内容)
押谷先生らクラスター対策班からの報告。国内で4月までに確認された61クラスターのうち、18例(30%)は医療施設、10例(16%)は介護施設等であり、医療・介護施設等で薬半数を占めた。他は、レストランやバーが10例(16%)、職場が8例(13%)、ライブコンサート、合唱団、カラオケなどの音楽関係が7例(11%)、ジムが5例(8%)、葬儀等が2例(3%)、機内が1例(2%)であった。
クラスターの原因となった1次感染者は22例で確認され、6例は20歳代、5例が30歳代であった。22例中9例(41%)では、クラスター発生時に1次感染者は無症状、もしくは発症前であった。1次感染者の発症日とクラスター発生日の関係を見ると、前日が最も多く、次いで当日、2日前の順であった。
(コメント)
国内におけるクラスターを解析した重要な論文。
・1次感染者の多くは20歳代、30歳代
・年齢に関わらず、クラスター発生時に1次感染は無症候、もしくは発症前
の2点は、今後の対策を考える上で貴重な情報である。
マスクの重要性(6月16日)
Zhang et al., Identifying airborne transmission as the dominant route for the spread of COVID-19. 米国科学アカデミー紀要 6月11日オンライン版
https://www.pnas.org/content/early/2020/06/10/2009637117
(内容)
新型コロナウイルス拡大の中心は、武漢からイタリア、そしてニューヨークと移行した。この3か所における対策と、感染者数の動向を比較検討した。その結果、Social distanceやLockdownの効果は限定的であり、イタリアでは4月7日に、ニューヨークでは4月16日にFace maskの着用が義務付けられてから、感染者の減少が促進された。新型コロナウイルス感染症においては、飛沫や接触感染よりも、微小飛沫(エアロゾル)による感染が重要であり、マスク着用が感染拡大に効果的であると考えられた。
(コメント)
シカゴの小山先生に教えて頂きました。マスクを外さなければならない食事時の対策が重要と考えられます。
アメリカ透析施設医療従事者の追跡調査
アメリカ・シアトル州におけるPCR陽性率の推移
―略させていただきましたー
子供の感染性は低いか?
学校の再開に関する論点をまとめたNature誌のニュース。感染の感受性、他人への感染性、そして感染後の症状についてまとめている。
子供は感染しにくいか?
日本を含む世界各地のデータでは、20歳未満の感染者の割合は非常に少ない。しかしこれは、子供は軽症や無症状が多く見逃されている可能性がある。先日紹介した下記の論文では、大人と子供では感染率は変わらないと報告している。しかし別のScience誌の論文では、15歳未満の子供の感染率は20歳から64歳の大人と比べると1/3程度と報告している。
子供は感染させにくいか?
フランスアルプスでのクラスター解析では、9歳の子供が感染し症状が出た後に、3つの学校と1つのスキー教室に参加したが、誰ににも感染させなかったと報告されている。オーストラリアの未公表の研究では、家庭での新型コロナウイルス感染例において、子供が最初の感染者であったケースは8%のみ、一方でH5N1鳥インフルエンザの時は50%が子供が最初の感染者であったという。
一方、別の未査読の論文は、子供のウイルス量は大人と変わらないと報告している。しかし、オーストラリアの小学校や高校での解析解析では、子供や生徒からの感染はほとんど無かったことを報告している。
子供は感染しても軽症か?
多くの研究者が、子供は感染しても軽症、もしくは無症候であることで一致している。しかし、その理由について様々な考えがある。一つの仮説は、ウイルスが細胞に侵入するときに利用するACEタンパク質が、子供の細胞ではあまり作られないというものである。証明するためには子供の肺組織が必要で、実際にはなかなか手に入れることが出来ない。
別の仮説は、子供は他のコロナウイルスによる普通感冒に最近、感染したことがあるので、新型コロナウイルスに対してもある程度の免疫を持っている可能性を指摘する。しかし、新生児でも軽症や無症状が多いことは、この仮説では説明できない。
他の仮説では、子供においては、新型コロナウイルスに対する免疫反応が、ウイルスを攻撃するが、免疫反応の暴走を誘導するくらいは強くないと考えている。
一方で、子供においても重症化することはある。特に、川崎病に似た症状が、ニューヨークやロンドンから報告されている。もともと川崎病が多い日本、韓国、中国では、小児の新型コロナウイルス感染が見逃されている可能性が指摘されている。
小児でも発症率は同じか
(内容)
武漢での感染爆発を受け、深圳市では感染者の同定と隔離を徹底しておこなった。1月14日から2月12日に、深圳疾病対策予防センターは391名の感染者と1286名の濃厚接触者を同定した。感染者の平均年齢は45歳、男性が187名、女性が204名。91%は同定時、軽症または中等症。2月22日現在、3名が死亡し、225名が回復。回復日数の中間値は21日。症状発生から隔離までは平均4.6日。接触者においては、発症から隔離までの時間が、平均1.9日間短縮された。同居と旅行同行による接触者では、2次感染の発生率が高く、それぞれ6.27倍と7.06倍であった。家庭内での2次感染率は11.2%。子供でも7.4%であり、有意差は無かった。しかし、小児では重症化することは少なかった。再生産数(R)は0.4、Serial interval(1次感染から2次感染までの時間)は平均6.3日(標準偏差4.2日)であった。
実効再生産数(Rt)の推定方法
実効再生産数(Rt)が経済活動再開の指標
―略させていただきましたー
抗体検査に関する考査
抗体検査に関して様々な議論があります。JAMAとScienceというアメリカを代表する医学雑誌、科学雑誌の論評を基に、考察したいと思います。
JAMA誌の論評は概ね、好意的。PCR検査は、今、ウイルスに感染しているかを調べるが、抗体検査はこれまでに感染したかを調べる。無症状で感染に気付かなかった人を見つけることが出来る。抗体検査を自治体として初めに採用した一つがコロラド州のサンマグエル州。8000人の住民を調べたが、結果が判明した4757人中、陽性は26名、陽性疑いが70名であった。個々で用いられた抗体検査はELISAと呼ばれるもので、抗体の量を測定することが出来る。陽性疑いは、抗体量が低い例で、感染して日が浅く、抗体が十分にできていない可能性がある。
https://www.sanmiguelcountyco.gov/590/Coronavirus
一方、Lateral flowと呼ばれる、陽性か陰性化だけを判定する多くのキットが、企業や大学で作られてる。FDAは、3月末に、FDAの承認無しで、これらのキットを提供しても良いと70以上の企業に通知した。これらの検査は、感染後、日の浅い人では陰性と判定される可能性が高く、現在進行形の感染を疑う人への検査としては不適切である。しかし、過大宣伝しているケースもあるため、今後、規制を強める予定である。また世界中のキットを集めて、客観的に評価しようとする活動もある。
https://www.finddx.org/covid-19/sarscov2-eval-immuno/
抗体ができている人の血液(血漿)は、重症患者に輸血することにより治療効果が期待されている。
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2763983
アメリカでは、回復した人に呼び掛けて血漿を集めようとしている。
https://ccpp19.org/index.html
また医療従事者や介護施設従事者に対する抗体検査も期待されている。抗体ができている人では、再感染や他の人に感染させるリスクが低いと考えられるからである。
新型コロナウイルスへの対策として行われている社会活動の制限をいかに緩和していくか。この重要な問題にも抗体検査は必須である。人口の半分くらいが抗体を持つようになると、感染の拡大は遅くなり、制限を緩めることが可能となる。
ただ、新型コロナウイルスは出現して半年に満たないので、わからないことだらけである。抗体ができたら本当に再感染しないのか、抗体がどれくらいの期間、持続するのか不明である。世界中で協力して、これらのデータを集める必要がある。
一方、Science誌の論評は辛辣です。ドイツや米国・カリフォルニア州の、抗体検査の結果、PCR検査で報告されている10倍や50倍くらいの人が抗体陽性であったとする発表に対し、その信頼性を疑っている。科学的には、抗体検査は擬陽性が生じるので、陽性の判定された人の多くが、実際には感染したことがない可能性を指摘している。さらに政治的に、これらの発表をしている人の中に、経済活動の早期再開を主張している人もいることから、恣意的な解釈がされているのではないかとも指摘している。
(コメント)
批判はありますが、PCR検査に比べて、大量の検査をより安全に行うことが出来る抗体検査は、今後の対策を決める上で極めて重要と私は考えています。検査の信頼性を科学的に検証することに、少しでも貢献したいと思います。
以下略させていただきました。
コロナについては、まだ、わからないことばかりでありながら、マスコミは正しいとは言えない情報ばかり流します。通販のコマーシャルと何ら変わりません。
教授はスーパーマーケットに行くときの注意事項を示していられます
今後、もし、近くでコロナ患者が出た場合など
食べ物を介して感染したという報告はない。しかし、食べ物や買い物の表面についてるウイルスが手を介して接触感染する可能性がある。食料品等の買い物では次のことに留意。
・他の客と1.8メートル以上の距離を開ける
・カートや買い物カゴの取っ手の部分を消毒する
・店を出た後は、すぐに手洗い、もしくはアルコール消毒
・使い捨てのバックはすぐに捨てる。繰り返し使えるものは、数日たってから使う。
・食品の袋はアルコール消毒する
・高齢者や持病がある場合は、人に頼むか宅配を利用。もしくは、高齢者用の専用時間帯を設けている店を利用する。
ご苦労様です