東京商工リサーチ「不適切な会計・経理を開示した上場企業」調査を読んで要約し分析私見 | 日米公認会計士・日米税理士・公認不正検査士・行政書士·国家公務員1種試験経済職合格者福留聡のブログ

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日米公認会計士・日米税理士・公認不正検査士・行政書士·登録政治資金監査人・国家公務員1種試験経済職合格者 福留 聡が会計、税務、監査、政治、経済、経営、時事、主催の東京法律会計士業交流会等含め記事にします。


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下記が東京商工リサーチ「不適切な会計・経理を開示した上場企業」調査の記事です。
下記によると
①不正会計は新興市場の会社から東証1部の会社へシフトしている。
②年度ベースで不正会計の件数は最多である。
③不適切会計の動機は粉飾が最多
④発生当事者別では子会社関連会社が最多
⑤製造業が最多
⑥会計士からの指摘による発見が多い。
と要約できます。
子会社関連会社は親会社より人数少なく、親会社のコントロール、内部統制がききにくい。
会計士からの指摘による発見が多いことから以前より会計監査は厳格になり機能している。
http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20160210_01.html

現在、不正会計の出版も企画中です。企画が通過したら会計処理中心に詳細な分析をしたいと思います。

公開日付:2016.02.10

 上場企業で2015年度に「不適切な会計・経理」を開示した企業が、2月9日までに43件に達し、2007年4月の調査開始以来、年度ベース(4月-3月)での最多記録を更新した。
 開示企業は新興市場が減少した半面、東証1部、2部上場企業が28件(構成比65.1%)に増えた。また、「不適切な会計・経理」の内容は「経理処理の間違い」など単純なミス以外に、「着服横領」、「業績や営業ノルマ達成を動機とする架空売上」、「循環取引」など、コンプライアンス意識の欠落や業績低迷を糊塗した要因も多い。産業別では、前年度に続き製造業の増加が顕著で、国外に製造拠点や営業拠点を多く展開するメーカーを中心に不適切会計が多く見られた。


  • 本調査は、自社開示、金融庁、東京証券取引所などの公表資料を基に「不適切な会計・経理」で過年度決算に影響が出た、あるいは今後影響の可能性があることを開示した上場企業、有価証券報告書提出企業を対象に集計した。
  • 業種分類は、証券コード協議会の業種分類に基づく。

年度別推移、2015年度は期中で過去最多を突破

 2007年度以降の「不適切な会計・経理」を開示した企業数は、2013年度から漸増傾向をたどっている。2015年度は2016年2月9日までに43件に達し、年度末まで約2カ月を残し調査開始以来、最多記録を更新した。

内容別、「粉飾」が最多の18件

 不適切な会計の内容(動機)は、利益水増しや費用支払いの先送り、代理店への押込み販売や損失隠しなど、業績や営業ノルマ達成のための「粉飾」が18件(構成比41.9%)で最多だった。
 次いで、経理ミスなどの「誤り」が12件(同27.9%)、会社資金の「着服」が10件(同23.3%)と続く。子会社が当事者のケースでは、親会社向けに業績や予算達成を偽装した不適切会計が多く見られた。また、役員らが関与した「役員への不正な利益供与」や、「元従業員による不正行為による会社資金の着服横領」など、コンプライアンス意識の欠落した事例など不適切会計は多様化している。

発生当事者別、「子会社・関係会社」が20件でトップ

 発生当事者別は、「子会社・関係会社」が20件(構成比46.5%)で最多だった。子会社幹部による売上原価過小計上や、在庫操作さらに支払い費用の先送りなど、いわゆる粉飾目的の不正経理のほか、子会社従業員による架空取引を装った着服横領もあった。目が行き届きにくい子会社・関係会社でのコンプライアンスが徹底していないケースが目立つ。
「会社」は、会計士から経理処理のミスを指摘されたものが大半を占め、また「従業員」では、着服横領のほか、代理店に対する押込み販売など、営業成績のプレッシャーに圧されて架空取引に手を染めるなど、過度の成績至上主義が動機となったケースも多い。

産業別、製造業が18件に大幅増加

 産業別の最多は製造業の18件(構成比41.8%)だった。インフラや半導体事業で利益の水増しを行っていた(株)東芝(TSR企業コード:350323097、法人番号:2010401044997)のほか、代理店に対する押込み販売による売上高の過大計上を行った曙ブレーキ工業(株)(TSR企業コード:290001102、法人番号:8010001034724)など、自社の利益を優先するための不正経理が行われていた。

市場別推移、東証1部が20件でトップ

 2013年度までは業歴が浅く財務基盤が比較的弱い東証マザーズ、ジャスダックなどの新興市場が目立ったが、2015年度は国内外に子会社や関連会社を多く抱える東証1部・2部の大手企業に不適切会計が集中した。大手企業の子会社で従業員による着服横領や、業績達成のため不正会計を行うケースが目立った。


 2015年度は、(株)東芝の不適切会計が大きな話題となった。企業がコンプライアンスを放棄し、経営者、従業員自身の慢心と保身により多くの投資家が損失を被った。多額の課徴金の支払いに加え、歴代経営陣の刑事告発も検討されるなど、社会的な信用失墜だけでなく不適切会計で支払う代償が大きいことを改めて示した。
 金融庁と東京証券取引所は2015年3月5日、上場企業に独立性が高い社外取締役2人以上を選ぶよう促すなど企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)を決定した。株主の権利・平等性の確保のほか、適切な情報開示と透明性の確保、内部通報制度の整備など5項目からなり、上場企業が守るべき行動規範を網羅したものだ。
 経済のグローバル化によりマーケットが広がった反面、不祥事は企業存亡の危機に直面することもある。企業が社会の信頼を得るためにも、経営者はコンプライアンスを徹底する高潔な決意が求められる。また、グループ会社を含めた従業員に対して明確な経営ビジョンを示し、その実現のためにもコンプライアンスを浸透させる重い責任もある。2015年度は投資家への影響度が大きい東証1部、2部上場企業の不適切会計・経理の開示が28社と全体の65.1%を占めている。規模の大小に関係なくコンプライアンスの根幹を見直す時期が来ているようだ。