玉村方久斗(たまむらほくと) 「鵜飼」

 鵜飼も解禁になり、いよいよ本格的な
シーズンになってきました。

 


 茶掛け風の掛け軸です。

 水面から獲物を狙っている鵜と、
水中で獲物を捕らえた鵜を、臨場感

溢れる表現です。

 上部の鵜の目の表情がするどく、獲物を
探しているようにも思えます。

 真ん中、横に帯のような模様を描き、
ここからは、水中というように見えます。

 そして、この墨色の帯があることで、画面を
引き締めていると思います。

 また、白い胡粉で、水の流れを表現しています。

 鵜のほんの一瞬の動きを見逃すことなく
捉えていて、非常に面白いと思います。

 こういうユーモアも方久斗の画の特徴の

一つです。

「玉村方久斗」(たまむらほくと)
  戦前は(二十歳代)、日本美術院に所属。
 賞等をとり、将来を嘱望されました。

  歴史画に自分の主観を入れすぎ、一向に
 改めないため、横山大観らに嫌われます。
 
  それでも、自分を貫きたいため、
 美術院を脱会します。

  それからは、個展を中心に活動する
 ことになります。
 
 そして、他人とは、異なった表現や、
 モチーフで対象を描きます。
  そのため、異色の作家といわれました。

  また、美しい色彩を出そうと、いろいろな
 絵の具を試みました。

  大切に保管された画は、今、書き下ろした
 ような鮮やかさがあります。
 
  平成 19年11月3日から
 平成20年2月17日迄、神奈川県立近代美術館

 および京都国立近代美術館で、「玉村方久斗」展
 が開催されました。

  そのことにより、ほとんど無名に近かった、
 方久斗の名も知れるようになりました。