金森 得水(紀州藩田丸領家老、茶人、歌人)
 「春雪 あ王由き能 かく面白き 春へ尓者 故登葉の者那母 
  左喜そ呂ふへき」
 (あわゆきの かくおもしろき はるへには ことはのはなも
  さきそろふへき)
 淡雪がこのように面白い春には、人でも多く、話し声も
 賑やかになるに違いないとうような意味か。
 長與 (得水の本名、これを用いるのは特に珍しい)
 得水は、私の最初のブログで紹介しました。幕末の勢州田丸の人。
茶人として、一部には知られていますが、歌人としても優れていました。
和歌集に、「那智山瀧歌百種」「北野奉納梅百種」「草人木百種」
「富士百種」、「茶器物名漫吟五十首」等があります。
玄甲舎の改修の際、出てきたものです。そのため、存在が確認
されていなっかった。
 また、得水は、茶道具等も作っていました。今も、茶碗、茶杓、
香合、蓋置、花入れ等が遺され、茶道愛好家に珍重されています。
 これらは、またの機会に紹介させていただきます。
 新しい年を迎えたので、得水の新年を詠ったものを、少し紹介
します。

(艸人木百首より)
一 あら玉乃 春越以者比て 多川るか奈 
  茶や我多免の 気ふ能く春利子
 (あらたまの はるをいはひて たつるかな 
  ちゃやわがための けふのくすりこ)

  新しい年を祝って茶を点てている。
 お茶は私にとって、今日の薬のようなものである。

二 者流奈連や 夜越古めて煎る 茶能由け毛 
  霞て窓尓 多ち所米尓計李
 (はるなれや よをこめてにる ちゃのゆげも 
  かすみてまどに たちそめにけり)
  春だなあ。夜ふかく点てるお茶の湯気も霞んで
 窓に立ち染めっている。

三 若水越 夜ふかく汲天 茶遠煎礼伐 
  かま能音己そ 者流免幾尓け連 
 (わかみずを よふかくくみて ちゃをにれば 
  かまのおとこそ はるめきにけれ)
  若水を、夜深く汲んで、茶を煮ていると
 釡の音でさえ、春めいてくるようだ。

(北野奉納梅百首より)

一 春きぬ斗 人者志らし越 年能内尓 
  雪遠ゝかして うめ者左支介利
 (はるきぬと ひとはしらじを としのうちに
  ゆきをゝかして うめはさきけり)
  春が来たことを、人は知らないけれど、年の内に
 雪を侵して梅は咲き出した。

二 以可奈禮婆 春能故与美と 奈留梅乃
  冬の日数遠 古免亭左く羅む
 (いかなれば はるのこよみと なるうめの
  ふゆのひかずを こめてさくらむ)
  どのような春の暦となるのか。梅が。
 冬の日数を秘して咲いている。(梅の咲く二月は
 日数が少ない)

三 古よ美奈き 奥山里能 有米の花
  咲可受伐何尓 者流遠志留遍支
 (こよみなき おくやまさとの うめのはな
  さかずばなにに はるをしるべき)
  季節の解りにくい奥山里に咲く梅の花。
 梅の花が咲かなければ、何によって春を知るのだろう。

金森 得水(紀州藩田丸領家老、茶人、歌人)
 「春雪 あ王由き能 かく面白き 春へ尓者 故登葉の者那母 
  左喜そ呂ふへき」
 (あわゆきの かくおもしろき はるへには ことはのはなも
  さきそろふへき)
 淡雪がこのように面白い春には、人でも多く、話し声も
 賑やかになるに違いないとうような意味か。
 長與 (得水の本名、これを用いるのは特に珍しい)
 得水は、私の最初のブログで紹介しました。幕末の勢州田丸の人。
茶人として、一部には知られていますが、歌人としても優れていました。
和歌集に、「那智山瀧歌百種」「北野奉納梅百種」「草人木百種」
「富士百種」、「茶器物名漫吟五十首」等があります。
玄甲舎の改修の際、出てきたものです。そのため、存在が確認
されていなっかった。
 また、得水は、茶道具等も作っていました。今も、茶碗、茶杓、
香合、蓋置、花入れ等が遺され、茶道愛好家に珍重されています。
 これらは、またの機会に紹介させていただきます。
 新しい年を迎えたので、得水の新年を詠ったものを、少し紹介
します。

(艸人木百首より)
一 あら玉乃 春越以者比て 多川るか奈 
  茶や我多免の 気ふ能く春利子
 (あらたまの はるをいはひて たつるかな 
  ちゃやわがための けふのくすりこ)

  新しい年を祝って茶を点てている。
 お茶は私にとって、今日の薬のようなものである。

二 者流奈連や 夜越古めて煎る 茶能由け毛 
  霞て窓尓 多ち所米尓計李
 (はるなれや よをこめてにる ちゃのゆげも 
  かすみてまどに たちそめにけり)
  春だなあ。夜ふかく点てるお茶の湯気も霞んで
 窓に立ち染めっている。

三 若水越 夜ふかく汲天 茶遠煎礼伐 
  かま能音己そ 者流免幾尓け連 
 (わかみずを よふかくくみて ちゃをにれば 
  かまのおとこそ はるめきにけれ)
  若水を、夜深く汲んで、茶を煮ていると
 釡の音でさえ、春めいてくるようだ。

(北野奉納梅百首より)

一 春きぬ斗 人者志らし越 年能内尓 
  雪遠ゝかして うめ者左支介利
 (はるきぬと ひとはしらじを としのうちに
  ゆきをゝかして うめはさきけり)
  春が来たことを、人は知らないけれど、年の内に
 雪を侵して梅は咲き出した。

二 以可奈禮婆 春能故与美と 奈留梅乃
  冬の日数遠 古免亭左く羅む
 (いかなれば はるのこよみと なるうめの
  ふゆのひかずを こめてさくらむ)
  どのような春の暦となるのか。梅が。
 冬の日数を秘して咲いている。(梅の咲く二月は
 日数が少ない)

三 古よ美奈き 奥山里能 有米の花
  咲可受伐何尓 者流遠志留遍支
 (こよみなき おくやまさとの うめのはな
  さかずばなにに はるをしるべき)
  季節の解りにくい奥山里に咲く梅の花。
 梅の花が咲かなければ、何によって春を知るのだろう。