- episode2 -
細やかな記憶は多々ある。
順不同ではあるが、まだ4才にもならない頃からみっちり教育をされていた。
色の覚え方、箸の持ち方、コトバ。
もちろん出来なければ怒られる。幼いながらに、まだこんなに頑張らなくてもいいのではないかとも思っていた。
だか、今となり身に付いていることで褒められる事が多くとても感謝している。
ただ、コトバに関してはわざと壊すこともある。
episode1に続き、次に私の中でのきっかけとなる大きな出来事。
幼稚園に入学する際に受けた試験。
幼稚園にも試験というものがあり、臆病で恥ずかしがり屋で人見知りだった私にとっては一大事であった。
知らない子供達がぞろぞろ歩いているだけで恐怖でしかなかった。
試験はとても簡単なもので、およそ幅40センチ程度の線と線を飛び越えるだけのものだった。
ぞろぞろ並んでいる連中は軽々と飛び越えていく。当たり前かのように飛び越えていく。
徐々に順番が近づき、私は顔の血の気が引いていた。
母に問いかけた。
『どうしてあの子達は下も見ずに、前だけ向いて飛び越えられるの?これ飛び越えなきゃ幼稚園に合格出来ないなんて決まりはないんでしょ?』
『ジャンプすればいいだけだよ、跨ぐだけ。簡単なことだよ』
と、笑いながら母は言った。
もう帰りたかった。
最悪幼稚園に合格出来なくてもそれでいい。小学校から通えればいい。そうも思った。
いよいよ私の番になった。
先生達が見守る中、名前を呼ばれ、僅か40センチの線と線を飛ぶことになった。
恐ろしいものだった。
たかが40センチの線かもしれないが、その線と線の間は崖っぷちで落ちたら死ぬかもしれない。
もし線と線の間に足がついてしまったら、私の人生は崩れ落ちる。
そう思った。
足がすくんで中々線を越えられない。
冗談抜きで何十分も飛べなかった。
母親の手を借りても、先生の手を借りても飛べなかった。
どうしてこんなことができないのと、大人達が思っていることは薄々感じていた。
結局私は飛べなかった。
幼稚園には合格したものの、試験を合格することはできなかった。
その頃の私には度胸のどの字もなかった。
想像力だけは人一倍あった。
未だに母親からはその時の話をされ、笑い話にされているが、私には何も考えずに無邪気に飛び越える事が本当に出来なかったのだ。
どうしてあんな簡単なことが出来なかったのだろうかと、今なら思えるが、
そう思えるようになってしまった自分は幾つか歳をとり、
様々な角度や方向から、モノをみることを覚えた。それと同時に大切な何かを失いつつあるようにも感じた。
幼稚園に入園して
すぐ覚えた一番好きな歌は、
翼をください
であったのだ。