ここ10数年、僕は2人の男から急にあだ名をつけられることになった。
「佐藤」なんていう平凡な名前なので幼い頃から「満春」(みつはる)という下の名前を絡めた呼ばれ方をすることが多かった。
見た目も特にパンチがないので呼ばれ方も特段、変わったものはなかったのに、だ。
僕が40年生きてきて
覚えている範囲で一番最初にあだ名をつけた男は、若林だ。
当初、彼は僕のことを1歳上ということもあり「佐藤君」と呼んでいた。呼んでいたはず。
「佐藤君」だった時期は半年か、おそらくそれ以下だったと思う。
一番最初につけられたあだ名「妖怪パブロンインポ」
そう、「妖怪パブロンインポ」
佐藤満春よりも明らかに長い、そして口に出しにくいあだ名だこと。
説明しよう。
(おそらく3600の初期にこんなことを話しているかもしれないけどもう覚えていない。
ありましたよね、きっとね)
「佐藤が全然眠らない」ことに気が付いた彼はそこをとにかく気にかけていて。
眠れない夜は本当に怖い。ただ、楽しい夜もある。
一口に「困った」で処理をするのは乱暴だったようにも思えるし、便利じゃんとすら思ったこともある。
ただ日に日に眠れない夜にとんでもない孤独に陥っていること、そしてとにかく起きている時間を意識するようになった。
そこで僕が一番最初にとった作戦
「パブロン作戦」だ。
あの大正製薬のパブロン。風邪薬だ。
風邪薬は副作用で眠くなることを知っていた僕は毎日のようにパブロンを飲み続けた。
風邪もひいていないのに、毎日。
なんでもない日はパブロンを。風邪をひいた日はちょっと高いパブロンを。
仕事のうまくいった日は一番高いパブロンを飲んだりしていた。
若林という男と僕は毎日のように(しかも1日10時間以上一緒にいる日も)会っているわけで
僕がフリスク感覚でパブロンを飲んでいる違和感にも彼だけが気がついていた。
(このあたりの話はANNの初期に出てきたかもしれないなあ・・)
一回、パブロンの錠剤を口に入れて水で流し込もうとしたところ
口から錠剤が落ちて水をごっくんと飲んで終わったことがあって
四畳半の我が家でゲラゲラ笑ったのを覚えている。
で、だ。
僕が少食であまりこだわりもない、眠らない、性に対してもドライだという3点
この生命力の無さを一言で表現したあだ名、それこそが
「妖怪パブロンインポ」
である。
当時26歳か27歳だと思うが僕の人生初のあだ名だ。あだ名とはいえ、2人でしか会ってないから、他の人に広まることはなかったけど。
以後、彼からはいくつもあだ名をつけられるのだがそれはまた別の機会に・・・。
ちなみに今お仕事相手の方など多くの方に「サトミツ」」と呼んでいただいくことも多いのだが
それを一番最初に呼び始めたのも若林である。妖怪パブロンインポのほうが先に伝わらなくてよかった。
現在は「糖蜜」が最新。「さとうみつはる」の「とうみつ」だと思われる。
ちなみに、もう一人僕にあだ名をつけたがるのが春日。
不眠症の件とは全く関わってこないので遍歴だけ明記しておくと
「サトミツボーイ」→「ミツボーイ」→「ミツB」→「便器男」→「魚のほうのオジサン」
魚のほうのオジサン、とはこちら側の「オジサン」という呼びかけに対する返答(春日語の呼応タイプに分類されます)
2回目にしてだいぶ本線からずれ込んだが、眠れないことでそんな面白あだ名が生まれたこともあったというお話。
ちなみに、後に大ブレイクをする若林青年がMCをしている医学番組で
「風邪薬を中毒的に飲んでしまう人は危険」
という特集が組まれ
「佐藤じゃねえか!」
と思ったこともあったとのこと。