「あと質問はある?」


「ペナルティーって?」


破ることはないと思うが聞いてみることにした。

世の中絶対なんてことはそうないものだ、

特に時間なんて、何かの拍子で遅れてしまうこともあるだろう。

聞いておいて損はない。

それで、緊張感も高めないといけない。


「ペナルティーね、私もこればかりは悩んだわ。

例えば、貴方が遅れてきたとするとね、

マイナス30分されるの」


「じゃあ、その日は60分だけになるってこと?」


「そう!週に1回の出会いが30分も無くなるのよ。

辛いことよね。

それで、破ったルールによってペナルティーも違うのよ」


「えっ?例えば」


「時間外に干渉したら180分」


「うそ!2週間も会えなくなるの?」


「そう、こればかりは気をつけなくちゃいけないわね」


「じゃあ…」


「じゃ~あ?」


ミスした…この流れはさっきのそれだ。

小夜子は、何故かそういうことを察するのが上手い。


「あの、その、我慢できずに交わってしまったら?」


小夜子はニッコリ笑顔を浮かべる。


「そうね~、貴方が我慢できずに、

小夜子をめちゃくちゃにしてやりたい!

ってしちゃったらね」


「…うん」


さっきも話したが、

どうも小夜子はそういう願望も持ち合わせているらしい。

その二面性も小夜子の魅力である。

いつも、攻めてる小夜子にそんなこといわれたら、

言われたほうはたまらない。

また、そう言うことにより、相手に想像させるのだ。

小夜子はそうやって、自分のことを思い込ませ満足する。

そして、困惑した様子をみて、なお満足する。


「900分」


「うそ?」


「ほんとよ。だから、我慢できなくなっちゃったら、

激しく、私が壊れちゃうくらい激しく…ね、

3ヶ月も会えなくなっちゃうんだから」


「……うん、そうする」


「まぁ、私、そんな話してたら…濡れてきちゃった」


「マジで?」


「冗談よ」


「ハハッ…」


僕のは疼いている。


「あとは?」


「もう大丈夫」


「ほんとに?」


「ほんとだよ」


「じゃあ、今週は私がメールを送るわ。

楽しみに待っててね!」


「うん、楽しみにしてるよ」


「スタートは明日からだけど、

私たち、同じ学校で同じ学部だから、

そこは気をつけないとね」


「小夜子こそ」


「私は大丈夫よ、貴方が心配だわ」


「大丈夫だって!ねぇ、小夜子…」


「な~に?」


あぁ、まただこの笑顔は理解されている

……でも、続ける


「最後に交わらない?」


「だ~め」


「いじわる」


「私だって……」


めずらしく小夜子は切なげに俯く…、

その頬は若干赤く染まっているように見えた


「まぁ、お預けよ。

じゃあね。バイバイ」


そう言って小夜子は帰っていった。

あの素っ気無い別れ方は逆に

僕と離れたくないって事を思わせた…辛い。

そもそも、お預けっていつまでだろう?

それより、あの言葉……

あながちさっきの事は冗談じゃなかったのかもしれない。

そう…多分ほんとに濡れてたんだ。

小夜子のことだから、僕にそれを気づかせたんだろう。

うん、ヤバイね…どうしようか。



翌日、僕は学校で思いもよらないことに

苦しめられることになる。

問題は7と8



僕が小夜子を殺したいとおもうはずがない。

でも、小夜子の方は僕を殺したい程の

感情にかられることがあるみたい。

逆に僕は死にたくなるほど小夜子を求めたことがある。

この1週間で1日だけ会わない日があったのだが、

僕はそれに耐えられず発作的に死のうとしたことがあった。

会っても会わなくても危険な関係、それが僕と小夜子。



しかし、これで僕は自殺できなくなった。

自殺をするには小夜子を殺さないといけない。

さっきも言ったけど僕にjはそんなことはできない。

小夜子は自殺なんて考えない。



僕が思うに、この恋愛の結末は

小夜子が僕を殺して、小夜子が死ぬんじゃないかと思う。

僕の最後は小夜子に殺される…本望である。

でも、小夜子は…いや、小夜子は僕を殺せて

嬉しいと思ってくれるに違いない。

これはいいね!

でも、それをするにはまだ早い…。

まだ、その境地じゃないと思う。



……ん?このルール漏れがある……



「もし、仮に事故や病気で死んでしまったら?」


「そうなのよ、後を追わないといけないけど、

そうすると矛盾しちゃうの、自殺はできないのよ」


「あぁ、なるほど、でもそうすると7も矛盾だよ」


「あら、ほんとだわ…どうしようかしら」


「じゃあ、変えよう。どうせ、僕は小夜子のいない世界になんて

生きていけない」


「私だってそうだわ…でも、貴方、大丈夫なの?」


あぁ、そういうことか!?

小夜子は僕の心配をしてくれていたんだ!

それで…僕は思わずにやけてしまう


「大丈夫。だって僕は小夜子に…」


「ほんとに!ありがとう」



小夜子は理解したみたい。

僕は自殺なんかしない。小夜子に殺されるんだ。


ルール8

もし、相手が死んでしまった場合、後を追うこと



「これで、私たち運命共同体よね!」

「キスはいいんだ」


「まぁ!いきなりその質問?そう、いいの。

私とキスできて嬉しい?」


「うん。とっても!」


「それはよかったわ」



小夜子はニッコリ笑ってくれた。

とは言ったものの、キスは許されているけど

キスまでしかできない、これは辛い。

キスすらできないのであれば、その先は考えない。

だけど、キスはできる、そのキスが濃厚であれば

あるほど、先に進みたくなる。でもできない。



それに、拒否権。

サディステックな小夜子の考えそうなことだね。

僕は彼女を拒めない。

彼女はそれを知っている

…だからこれを行使するのは小夜子。

なんだか先が見えてきた。

このままだと、僕は弄ばれる。

でも、実は彼女は僕に苦しめられたい一面を持っている。

僕はそれを最近知ったし、さっきもそう言っていた。

多分だけど、僕に変われ…ということだと思う。



だから難儀…もちろん我慢するのも難儀。

よく考えられてるね、このルール。



「でも…」


「でも?」


「我慢できなくなりそう」


「我慢?何を?」


「何をって、その先をさ…」


「だから、その先ってな~に?」


満面の笑顔を浮かべて聞いてくる小夜子。

完全に会話を楽しんでいる。

はぁ、これは小夜子の悪い癖…いい癖かな?


「交わる」


「交わる?何が交わるの?」


「僕と小夜子が」


「ふ~ん、貴方と私が交わるんだ~。

どう交わるの?交わったら私どうなっちゃうの?」


どこまで言わせたいんだ?

なんだか僕は赤面してきた。


「あらあら、顔が赤くなっちゃって。

あのね、貴方は私のことを考えるの。

私は貴方のことを考えるわ…わかる?」


「わからない」


「そう、わからないの、じゃあ知らない」


まだ、僕は小夜子に遠く及ばないみたい。


「いや、わかった!わかったよ!

僕は小夜子の事を考えてやればいいんだね!」


すると、小夜子は笑顔を浮かべる。


「そうよ、私はちゃんと貴方のことを考えるから」


あぁ、彼女が僕のことを考えて……なんて良いんだ!

ヤバイ、もうどうにかなってしまいそう。

まだ始まってもないのにこれはマズイんじゃないのか?

まぁ、それだけ僕は彼女の虜ってこと。

悪い気分じゃないね。