「キスはいいんだ」


「まぁ!いきなりその質問?そう、いいの。

私とキスできて嬉しい?」


「うん。とっても!」


「それはよかったわ」



小夜子はニッコリ笑ってくれた。

とは言ったものの、キスは許されているけど

キスまでしかできない、これは辛い。

キスすらできないのであれば、その先は考えない。

だけど、キスはできる、そのキスが濃厚であれば

あるほど、先に進みたくなる。でもできない。



それに、拒否権。

サディステックな小夜子の考えそうなことだね。

僕は彼女を拒めない。

彼女はそれを知っている

…だからこれを行使するのは小夜子。

なんだか先が見えてきた。

このままだと、僕は弄ばれる。

でも、実は彼女は僕に苦しめられたい一面を持っている。

僕はそれを最近知ったし、さっきもそう言っていた。

多分だけど、僕に変われ…ということだと思う。



だから難儀…もちろん我慢するのも難儀。

よく考えられてるね、このルール。



「でも…」


「でも?」


「我慢できなくなりそう」


「我慢?何を?」


「何をって、その先をさ…」


「だから、その先ってな~に?」


満面の笑顔を浮かべて聞いてくる小夜子。

完全に会話を楽しんでいる。

はぁ、これは小夜子の悪い癖…いい癖かな?


「交わる」


「交わる?何が交わるの?」


「僕と小夜子が」


「ふ~ん、貴方と私が交わるんだ~。

どう交わるの?交わったら私どうなっちゃうの?」


どこまで言わせたいんだ?

なんだか僕は赤面してきた。


「あらあら、顔が赤くなっちゃって。

あのね、貴方は私のことを考えるの。

私は貴方のことを考えるわ…わかる?」


「わからない」


「そう、わからないの、じゃあ知らない」


まだ、僕は小夜子に遠く及ばないみたい。


「いや、わかった!わかったよ!

僕は小夜子の事を考えてやればいいんだね!」


すると、小夜子は笑顔を浮かべる。


「そうよ、私はちゃんと貴方のことを考えるから」


あぁ、彼女が僕のことを考えて……なんて良いんだ!

ヤバイ、もうどうにかなってしまいそう。

まだ始まってもないのにこれはマズイんじゃないのか?

まぁ、それだけ僕は彼女の虜ってこと。

悪い気分じゃないね。