本日、国防議連を開催し、東海大学海洋学部の山田吉彦教授より、1月末に石垣市が行った尖閣諸島周辺海域での海洋環境調査に関して緊急報告をしていただいた。

 

1月29日から30日にかけ、山田教授は石垣市委託事業として、サルベージ船で尖閣周辺海域に接近し、海保と緊密な調整・連携の下、同領域の海洋調査・尖閣諸島の景観調査を行った。なお、本調査は石垣市がふるさと納税で得られた税収で実施された。

 

本講演では、海上保安庁と中国海警局間の通信や海警船が映されたレーダー映像など、現場の緊迫した様子を見ることができた。さらには尖閣諸島へ接近した美しいドローン映像の数々も投影され、普段見られる空撮映像とは全く異なる風景を見た。

 

山田教授によれば、調査では様々な計測器具やドローンが用いられ、尖閣諸島周辺の基本的な海洋データが採取された。ドローン映像からは、魚釣島の南側斜面がヤギにより著しく食害を受けている状況が確認され、土壌が保水力を失い、斜面が崩落している状態となっていた。また、北側の海岸線には中国漁船・台湾漁船由来を含むゴミの漂着も見られ、環境が悪化している状態を把握できた。

なお、調査の合間には、1945年に米軍からの機銃掃射に遭い、尖閣諸島に漂流した遭難者に対する慰霊も行われた。

 

海洋調査に際し、調査船は海保巡視船に囲まれていたため、中国海警局から調査隊への直接的な妨害や実力行使は行われなかった。尖閣周辺に派遣されている巡視船が高い法執行力をもって調査隊を保護できたことは、日本が持つ優れた警備能力を世界にアピールすることにつながったと考えられる。

 

一方で、尖閣諸島周辺の調査ではまだ多くの課題が残る。

①    本調査はあくまでも石垣市が行ったものであり、活用できるヒト・モノ・カネが限られている。

②    周辺海域から得られるデータは極めて限られているため、希少な植生物の詳細な調査は未だにできていない。また、より接近したエリアからの海洋DNA等も採取できていない。

③    戦時中に遭難し、島に埋葬された方々の御遺骨はまだ収集できていない。

 

参加議員からは、米国との連携を深めるべく、より尖閣諸島において施政権を行使すべきであるとの声があがった。これは、市町村単位で調査を行うのではなく、環境省・国交省・厚労省・各種専門機関が中心となり、国主導の研究を行うことで示すことができるだろう。また、このような調査では、より詳細なデータを入手するため、上陸も視野に入れて議論を進めるべきだ。価値観を共有する国々と協力して調査をすることも検討できるだろう。

他方、このような調査を実施するとなれば、高度な政治的判断も必要になる。今後、提言等を行うことで、国防議連一同、尖閣諸島に対する日本の施政権を強化できるような議論を進めたい。