外交防衛委員会で質問に立った。内容は以下である。

 

・防衛力の抜本的強化

・有事における個人防護

・防衛研究開発

・公共インフラと防衛

・防衛費と建設国債と税制

・在外赴任者の円安、物価対策

・継戦能力と弾薬

・継戦能力と予備自衛官

・施設整備

・北朝鮮ミサイル対処

・日中首脳会談

・日韓関係

 

【防衛力の抜本的強化】

総理は、有識者会議や衆予算委の場で、防衛力の抜本的強化について発言しているが、この防衛力の抜本的強化は自衛隊の能力強化が中心、幹であることを忘れてはならない。増加した予算に幅広い研究開発予算や公共インフラ経費を入れてしまっては、防衛力の抜本的強化どころか水増し、水ぶくれ状態になってしまう。

研究開発や公共インフラ整備は、あくまで自衛隊の能力発揮をサポートする位置付けであり、真水部分は自衛隊の能力強化とすべきだ。

 

【有事における個人防護】

個人防護装備について、自衛官は鉄帽や防護マスクを持っている。しかし、防衛省の事務職員は鉄帽も防護マスクも持っていない。それどころか、官房長官や総理大臣ですら防護装備を持っていない。危機管理に携わるような主要官庁の役人や政府要人は有事においてこそ活動することを踏まえ、個人防護装備の備蓄について検討すべきだろう。

 

【防衛研究開発】

防衛関係の研究予算が圧倒的に不足している。例えば、量子技術の研究開発においては政府全体で約800億円の予算が付くが、防衛省には0.22億円しかない。AI技術に関しては政府全体で1600億円だが、防衛省は32億円しかない。

加えて今年、7省庁が延長要望する研究開発税制は、いわば重要性の高い研究から低い研究までごちゃ混ぜの研究開発税制であり、エマージェンシー技術である防衛関係の研究開発も同じ税控除枠内であった。これでは有識者会議や世界のトレンドと合っておらず、この税制のままではエマージェンシー技術である防衛関係の研究開発が進まない。リスクを軽減するためにも防衛関係の研究開発には補助金だけではなく7~8割の軽減税率にするといったようなインセンティブが必要となるだろう。

防衛研究開発と日本学術会議の壁も高い。日本においては、学術会議により防衛に関する研究開発へ携わることが制約されているが、その一方で日本学術会議と共産党配下中国科学技術院との覚書が存在している。また、中国では軍近代化に向けての軍民融合が国家一丸となって進められており、日本との温度差は広がるばかりある。

防衛研究開発に関する各省庁の予算取りや日本学術会議の壁は高いため、防衛省単独ではなく他省庁やNSSを絡めて話を進める必要があるだろう。

 

【公共インフラと防衛】

公共インフラ整備は防衛の観点を踏まえて検討する必要がある。例えば、南西諸島においては、滑走路の長さと厚さの関係から最新の輸送機であるC-2ですら宮古島と石垣島の滑走路しか使用できない。滑走路だけでなく港湾も同様に水深と艦艇喫水の関係による制限という問題点を有している。国交省はBbyCの観点から公共インフラ整備を進めているが、そこに防衛の観点を取り入れて、真に仕える公共インフラを検討してもらいたい。

 

【防衛費と建設国債・税制】

自衛隊関連の物品・施設について、有事において損耗する可能性があるため建設国債は認められないと言った古い因習は見直すべきである。

警察等公務員の官舎施設では建設国債が認められているが、自衛隊の官舎はダメ。海保の巡視船や文科省の人工衛星には建設国債は認められているが、海自の艦船や自衛隊の人工衛星はダメ。これでは国民が納得できない。

有識者会議ではこれらの財政基盤と枠組みを含めて議論してほしい。

 

佐藤は、防衛納税、防衛費を国民が負担するインセンティブの一つとして防衛納税もありと考える。例えば、ふるさと納税の趣旨は「お世話になった防衛へ、これから応援したい防衛へ力になれる制度」というようにそのまま地方を防衛に置き換えることができる。実際に、埼玉の狭山市では空自入間航空祭での一万席や五千円席が返礼品として取り扱われている。国民が一定程度国防に関与する、国民が自分の国を守るために自分の国を手助けしたい。その気持ちを形にできるよう検討してみてはどうだろう。そしてそれが国庫に入って補正予算の財源となるならば、隊員の処遇改善にも繋がる。

来年でなくても良いので、防衛納税も検討して打ち出してほしい。

 

佐藤は、国防費・防衛費を国民が負担することに関して正面から問うのは今だと考える。

防衛財源を安定的に確保する必要があるが、国防は国民全体で支えるために国民に負担してもらうことも必要となるだろう。

 

【在外赴任者の円安、物価対策】

防衛省からの海外赴任者は、防衛駐在官や警備官以外では約200名の教官や留学生、連絡員がいる。それら海外赴任の多くは長期出張扱いとなり、旅費法上は全てが単身赴任扱い。その一方で、他国の軍関係者と交流するには配偶者の帯同が必須であるとともに、小さな子供は日本に置いていけないことから、家族で赴任することが常態となっている。単身赴任扱いの長期出張では当然かなりの足が出る。それに加えて、国家公務員等の旅費に関する法律に基づき、長期出張における日当及び宿泊費は60日過ぎると20%減、90日過ぎると30%減となる。この円安では生活費に加え家賃がかなり響いている状況である。

各省庁の努力のおかげで30%減はなくなるとの話だが、2割減は引き続き残っており、防衛省は更に他の役所と違って配偶者同伴でないと仕事にならないという点もある。防衛省は財務省とも連携しながら、実情に沿った様々な対策を検討してもらいたい。

 

【継戦能力と弾薬】

12式地対艦ミサイル(12SSM)を1000発保有するという報道があるが、火薬庫を作るには大きな格納地域が必要となる。

また、ミサイルの場合は対象をロックオンするシーカも劣化するので10年しか保管できないといわれる。更に、現在の訓練環境において12SSMは一年に一発、米国の射場でしか撃てていない。仮に1000発を保有した場合、10年後には990発を廃棄することとなってしまう。

防衛力の抜本的強化には、火薬庫や射場等のロジ面も考えてやらないと絵に描いた餅になる。これら諸問題を解決するには苦労が伴うが、それでもやらなければならない。

 

【継戦能力と予備自衛官】

予備自衛官も大事な継戦能力であるが、日本では予備自衛官の定員は4万6千しかなく、海空の予備自実員は500名しかいない。他国の海軍空軍で予備役がこれほど少ない国はあまりない。自衛官は不死身ではないため予備自衛官を確保する必要がある。防衛力の抜本的強化というなら、予備自衛官制度の見直しは急務である。

 

【施設整備】

二万三千ある自衛隊の施設の内なんと4割が現在の耐震基準以下の建物であり、約9割が築20年以上の施設である。継戦能力と抗堪性の観点から施設は重要であるが、その費用投資は南西諸島の施設整備に集中している現状がある。全国の自衛隊員からすると近々の問題であり、全国的な施設老朽化対策が必要である。

 

【北朝鮮ミサイル対処】

隊法83条の3の弾道ミサイル破壊措置命令では、AIS情報等で、日本漁船が多数操業している接続数域や排他的経済水域にミサイルが着弾することが判明しても打ち落とすことができない。これは警察権に基づく公共の秩序維持の観点からも課題となる。法理論上、警察権に基づく公共の秩序の維持、邦人の安全確保は、隊法84条の3で在外邦人等の保護措置が可能なように、日本の領域だけでなく、接続水域や排他的経済水域でも警察権に基づく公共の秩序の維持を行使することは排除されないのではないのか。

日本上空を通過してグアムに着弾する恐れがあるミサイルについて、自衛隊は打ち落とす能力があっても今の枠組みでは打ち落とせない。ただ、それでグアムの米国人に被害が出れば、日米同盟に大きな影響が出かねない。同盟とは、価値観・リスク・負担の共有がなければ成立しないのだ。

ただ、存立危機事態を認定し、防衛出動を発出するには、対処基本方針案の作成や国会の事前承認等が原則であり、弾道ミサイル対処に事務処理が追いつくのか疑問である。また、国会の事後承認等緊急の場合があるが、五党協議や閣議決定から、存立危機事態であっても武力攻撃事態でない場合は国会の事前承認が必要となっている。

佐藤も、五党協議の責任者の一人として悩みながら作成した経緯がある。これから共同反撃を議論するにあたり、どういった形でミサイルに対応するか検討すべきだ。

 

【日中首脳会談と日中関係】

自民党部会では、習近平の権力が高まったからこそ、首脳会談の重要性は高まったとの説明があったが、本当にそうだろうか。G20で日中首脳会談の可能性が指摘されているが、日中関係の懸案事項は増加していることを忘れてはならない。首脳同士が会うことは一般論では理解できる。ただ、そのタイミングというものがあるのが外交だ。

今年8月4日、波照間島の目と鼻の先、日本EEZ内で中国によるミサイル弾着事案等も言語道断だが、なぜミサイルを撃たれた日本大使が中国に呼び出されて、日本は在京大使に電話抗議なのか。

ミサイルだけでなく、尖閣諸島への海警艦船による領海侵入、中国艦船はトカラ海峡を国際海峡と主張して領海侵入繰り返している。東シナ海のガス田櫓増設、日本産食品の輸入禁止問題、ALPSSY処理水問題、深刻な人権問題、何一つ解決していない。今まさに中国当局により不当に拘束されている日本人もいるのだ。

トゲを抜かずに首脳会談を開いては日本の外交に傷がつく。外務大臣は先頭に立って一つでもトゲを抜けるよう環境整備すべきである。また、トゲが抜けていないのに首脳会談を開くのなら国民へ説明が必要だろう。せっかく日中首脳会談をやっても国民の評価が得られず、逆に日本がすり寄ったような評価になることを懸念している。

 

【日韓関係】

日韓関係も同様にトゲがあることを認識する必要がある。

2018年、韓国が主催した国際観艦式では、韓国が日本側に失礼な物言いがあった。自衛艦旗を掲載しないよう事実上求めかつイスンシンの旗を韓国海軍が掲げるという親善には相応しくないことがあった。今年11月6日の国際観艦式では、韓国から参加する補給艦は、自衛艦旗を掲げた総理が乗る護衛艦に敬礼をするのか。また、イスンシンの旗は掲げないと言うことを担保できているのか。

また、国際観艦式に親善目的で韓国の補給艦が参加するからと言って、韓国艦艇による海自哨戒機に対するレーダー照射事案がなかったことにしてはならない。海自哨戒機隊員の命が危険に晒された事案であり、これは分けて考えるべきである。さらに、韓国の前政権が、国際基準に合致しない対日本火器管制レーダー照射基準を作成したとの報道を韓国側は否定していない。

元徴用工問題に関する解決策においては、日韓間で協議中とのことだが、「関連する日本企業の賠償請求問題は、日韓請求権協定で解決済み」という、この原則は守らないといけない。よって、日本企業による謝罪や寄付などの債務が存在するということは認められない。そこは譲ってはいけない一線である。