今朝は、外交部会で新たに立ち上げた「国連改革・新国際秩序検討PT」において「日・NATO協力の意味と可能性」というテーマで、慶應技術大学総合政策学科の鶴岡路人准教授からご講演いただいた。

 

同PTは、外交部会で国連改革の提言をまとめた際に、国連改革や新たな国際秩序の検討の重要性に鑑みて、腰を落ち着けて、戦略的に検討・発信すべきという強い要望を受けて立ち上げた。先日の日米首脳会談ではバイデン大統領から、安保理改革が実現した場合には日本が常任理事国になることへの支持が表明されたものの、国連憲章の「旧敵国条項」は残ったままであり、日本の常任理事国入りはかなり厳しいというのが現状。また、ロシアによるウクライナ侵略により、紛争当事国が常任理事国の場合、国連は機能しないことも明確となった。ヨーロッパにはNATOがあるが、アジアにはNATOのような組織はなく、日本は、「日米同盟がある」という見方もあれば、「日米同盟しかない」という見方もある。

 

米国は年々内向きになっているという専門家による指摘もあるが、実際、オバマ大統領は「アメリカは世界の警察官ではない」と発言し民族紛争が増加、トランプ前大統領はアメリカファーストを掲げNATOやASEANとの距離を置いた。バイデン政権では、民主党左派が台頭し核大国のロシアとの対峙には慎重で、米国民もこれを支持。ある意味、ロシアの核の威嚇が米国に効いているという見方もできる。

 

我が国は、日米同盟を基軸としながらも、豪州やカナダに加え、欧州諸国との連携強化を視野に新たな国際秩序の形成というものを皆でしっかりと考え、実現にむけて歩を進めなければならない時期にきている。EU、英・仏・独はインド太平洋戦略を発表し、英は、同地域に空母クイーン・エリザベスを展開、日英円滑化協定で大筋合意し、次期戦闘機を日英協力で開発予定。CPTPP(「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」)にも加盟を申請している。また、仏は、同地域に原子力空母シャルル・ド・ゴール、独はフリゲート艦を派遣するなど、同地域への積極関与を強めている。

 

鶴岡准教授からは、集団的自衛権は、義務ではなく各国が持つ「権利」であり、NATOとの協力イコール集団的自衛権という狭い視点で捉えないほうがよく、仮に台湾海峡に米軍が参加した場合、「権利」として、イギリスやフランスが米国を助けることはあり得ること、また、NATOとの協力は、集団的自衛権をお互いに行使しあうというのが肝ではあるもののそれがすべてではないという話があった。様々な協力の仕方があり得るとして、例えば、装備品の協力として日本が持つ部品をNATOに供与することは一つの連携であり、日本が今後協力できる分野として、サイバー、インテリジェンスでの協力が挙げられた。

 

今月末、NATO首脳会議がマドリードで開催される。4月に林外相がNATO外相会議に初参加し、5月は山崎統合幕僚長がNATO参謀長会議に出席した。外交・防衛の話し合いの次に、首脳レベルでインド太平洋地域と欧州の安全保障について話し合うことは重要である。

 

来年、我が国はG7サミット主催国となる。NATO首脳会議で共有される内容をG7でも共有できる意味合いは大きい。アジアからは、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの首脳も呼ばれており、そこに日本の首相がいないというのは、逆に歯抜けのようで不適当であると考える。今後、日本は欧州の安保協力を含め欧州との連携強化というものを図ることが、インド太平洋地域、台湾海峡の平和と安定にも大きな意味を持つ。参院選の応援に影響が出る可能性はあるが、大きな国益を考えたら、総理の参加は不可欠であると思う。