昨日、国防議連を開催し、「新領域」における技術安全保障に関して、同志社大学特別客員教授の兼原信克氏にご講演いただいた。






 現在の軍事においては、宇宙やサイバーなどの「戦闘支援空間」と考えられていた領域が「戦域」に変化した。宇宙・サイバー空間は現代戦遂行において必要不可欠な分野であり、有事の初期段階ではこれらが無力化される可能性もある。そのため、宇宙領域ではどこにどの衛星が飛んでいるかを把握する能力の向上が鍵だ。また、サイバー領域では行為主体が不明である点に加え、「光の速さ」で重要インフラを攻撃することが可能だ。そのため、政府は事態が発生したあとに対応するだけではなく、平時から積極防御を展開しなければならない。


 これらの領域を含む軍事技術の発展のためには、日本の科学技術の参画が不可欠である。現在の日本では「科学が軍事や安保に使用されてはならない」という風潮が学術界の中で強く、「科学技術及び基礎研究」「産業技術」「軍事技術」が分断されている。そのため、学術・民間研究で優れた技術が生まれたとしても、それを軍事に適用する仕組みが整っていない。


 分断を解消するためには、米国のDARPAのような仕組みが望ましい。先端技術の分野では、民間が研究を行なったとしても利益が得られないとなれば研究は打ち切られてしまう。そのため、政府以外にこの技術を拾い上げられる主体はいない。DARPAは、「国の安全のため」ということで、30年〜50年先を見越して様々な技術に投資し、ベンチャー企業育成にも力を入れている。しかし、予算面で課題は残る。日本の科学技術予算全体が4兆円である一方、防衛に充てられている研究費はわずか2000億円だ。米国では、なんと研究開発予算全体の6割が軍事技術研究(約12兆円)にあてられている。また、大学や研究機関も国防に関わることに対する抵抗感があることも否定できない。


 今後日本が先駆けとなる防衛技術を生み出すためには、「科学技術の進歩それ事態が国防の根幹である」という哲学が政府、そして世間に定着することが必要である。