昨日、自民党国防議連で「新型コロナウイルス対応における自衛隊の災害派遣」について議論した。 まず、感染拡大都道府県の入院患者数の現状確認を行った。

 赤線枠で示している通り、病床に対する各割合は、大阪が54.6%、北海道が46.7%。また、重症者数の割合は、大阪が49.5%、北海道が10%(最新では70%を超)である。また、新規感染者数の割合は、以下の資料の通りである。

 大阪の病床占有率は異常な状態に陥っていることがわかる。厚生労働省から北海道旭川市の災害派遣につい開始したとの説明が行われた。参加の国会議員から「本来であればもっと早い方が良かったのではないか?」との意見が出た。また、「市、道との連携をもっと取るべきではないか?旭川医大の対応は間違っている。地域医療を担う病院が重症患者を受け入れず、更に吉田病院に派遣していた医員を引上げる等、これは医療崩壊を助長することに繋がる。」との意見が出た。それに対し「厚労省審議官が、直接旭川に行き、受入れのお願いを行ったが、承諾を得ることができなかった。」との報告が行われた。更にそれに対し、「自衛隊は最終手段であるので、できる限りそうならない様に対応していく必要がある。国立病院の受入れ、医師の派遣については、ある程度の強制力を持った特措法の改正が必要ではないか?」との意見が出た。 自衛隊の災害派遣を要請する前に国立病院、公的病院、私立病院の順で連携し、対応できる環境を作っていく必要がある。 

 

続いて、政府から大阪の状況説明が行われた。府では、新たに重症病棟が30床必要なため、15日を目処に準備中である。これらを24時間可動させるためには130名の看護師が必要となり、現在、府では50名確保している。さらに、現在知事会広域連合を通じて26名確保しているが、合計76名であるため、54名の看護師が足りない状況である。この不足の全てを自衛隊から派遣することは、自らの持ち場である各病院での対応や、隊員のケアも行わなければならないため困難である。

 

 席上、国会議員からは、「大阪府の対応には疑問がある。30床準備するのであれば、もっと早い段階で人員の確保を同時に行うべきではないか?」「府知事から、大臣に直接電話して災害派遣の要請があったとの話もあるが、中部方面総監或いは第3師団と調整を行うべきではないか」との意見が出た。防衛省からは「現時点では、大阪府知事から正式な災害派遣要請は出ていないが、新たな病床は、15日から運用開始である。自衛隊の人員には限りがあるが、できる限り努力していく」との説明が行われた。 さらに、宿泊施設の配食状況の資料に関して「本当に、自衛隊が行わなければならない仕事か?」との意見が出た。自衛隊の本来任務は国防であり、公共性・緊急性・非代替性の3要件を確認しなければならない。

 

7月下旬に、統幕の統括官と厚労省の局長が、新型コロナウイルス対応に関する災害派遣の基準を策定し、連名で事務連絡を出しているとのことだ。これらを徹底する必要がある。 因みに、自衛隊の医療体制の状況は、自衛隊中央病院、地区病院、防衛医科大学で、これまでに新型コロナウイルス感染者1,003名受け入れてきた。現在は、48名の入院患者の対応に当たっている。自衛隊全体では、看護官が、約1,000名、看護師(技官)が約700名所在しているが、自衛隊病院の運営、部隊等における隊員の治療等も継続していかなければならないため、災害派遣には限度がある。それでも、今後、全国的な感染拡大、同時多発的な対応が必要になる可能性が高い。3要件に照らし合わせて、やむを得ない場合は派遣できるように備えなければならない。今冬が正念場だ。