本日、自民党本部で国防議連を開催し、ミサイル防衛「敵基地反撃能力(ミサイル阻止応力)のアセット」をテーマに勉強会を実施した。

まず、杉山元空幕長から、空の観点からヒアリングを行った。

敵基地攻撃は、「Kill Chain」と言われる様に、攻撃行動に関わる一連の活動を段階化して考え、
①目標の捜索、発見、識別
②目標情報の伝達
③攻撃地点への遷移
④攻撃・撃破
この鎖の一つの輪全てが機能しなければ成果が得られない。

①について、例えば、北朝鮮の弾道ミサイルの移動式の発射装置は、捜索、発見、識別というのが困難であり、現状、偵察衛星や偵察機を用いる。偵察衛星は、分解能に拠る部分が大きく、分解能が1mであれば「車がある」、50㎝~1mであれば「車種」、10㎝程度であれば「車の細部」までわかるという具合だ。また、偵察機の場合は、グローバルホークによる合成開口レーダーや電子赤外線センサーを用いて、特に電子光学赤外線センサーによって広い範囲を捜索し10万㎢規模で大まかに捕らえ、合成開口レーダーで見つけていくのが現実的だ。将来的には、低軌道衛星コンステレーションで常時監視を追求すべきではないか。また、②に関しては、偵察衛星や偵察機から地上を経由して戦闘機へ情報を伝達する場合は、速度が重要になってくる。③に関しては、哨戒位置から攻撃位置への移動は、弾の射程を考慮して行う。④将来的には、無人攻撃機が必要。その他にも、空中にあるアセットを守るためにSEAD(敵防空網制圧)が必要ではないかとの話であった。

次に、村川前海幕長から海の観点からヒアリングを行った。

「いかに戦うか?」を考えた場合、日米の情報共有、役割分担が重要である。また、「何が必要か?」を考えると、相手国にとって、対処困難な脅威でなければ抑止にはならない。「いつまでに?」という点に関しては、5年以内ならば、弾薬と燃料、5~10年であれば正面装備、10年以上ならば研究開発に重点を置かなければならない。現状、5年以内の脅威としてとらえるならば、現在保有している装備品を活用すべきであり、トマホークの導入が有効であると考える。イージス艦等に発射装置を付加すれば、使用可能であり、呉からなら北京、佐世保からであれば、更に南の広域までを射程範囲とすることができる。発射装置のVLSは、弾の充填状況は、外見から判断できないため、どこにどれだけ充填しているか知られることはない。現状、海自の艦艇において、イージス艦(あたご型×2、まや型×2):96セル、イージス艦(こんごう型×4):90セル、その他護衛艦(たかなみ型×5、あきづき型×4、あさひ型×2):32セル、(むらさめ型×9、ひゅうが型×2):16セルである。この様に、大量の武器を運ぶことが可能であり、遠くから攻撃できる艦艇をミサイルプラットフォームとして敵基地攻撃能力保有を有することは実現可能で合理的な選択であるとの話であった。

また、講演の最後に、イージスアショアの代替案についての質問に対して言及があった。村川前海幕長は、イージス・アショア導入が決まった時の海幕長。当時、弾道ミサイルの警戒監視を陸自が引き受けてくれることが決まった時は、本当に嬉しかったとのことだ。しかし、陸上配備が断念され、リグ案が困難である以上、BMD専用艦と新型イージス艦の2択となるが、それならば、米海軍との相互運用性や柔軟性・拡張性の高い新型イージス艦導入を検討すべきであるとのことだ。

人員が足りない問題は、事務官の定員削減の廃止や、豪州の様に陸海空で艦艇を運用するなど、一朝一夕にはいかないが、課題解決に取り組まなければならないとの話であった。

予算や人員不足の問題は、政治課題である。これは、国会議員が真剣に取り組まなければ、根本的な問題解決とはならない。引続き、ミサイル防衛に関する勉強会を重ね、わが国にとっての最善の選択を追求していく。