「米国トランプ政権について」と題して、慶應義塾大学総合政策学部教授、中山俊宏氏の講演があった。講演の要旨は以下の通り。

 

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この4月に訪米し、トランプ大統領の支持率が高い地域を中心に回って、オピニオンリーダーの人達と意見交換をしてきた。今日はそうした情報も踏まえて、トランプ政権の現状や特徴について話したい。

 

トランプ政権は不支持率が常に50%~60%で極めて高いが、スキャンダルやロシア疑惑がある中でも支持率が35%以下にはならない。アメリカ中西部の州では、依然高い支持率を維持している。アメリカのメディアは、完全に分断されていて、各人が見たいテレビ局のニュースしか見ないという状況で分断に拍車が掛かっている。トランプ大統領には分断を乗り越えよう努力する姿勢は見られない。

 

アメリカの保守主義と言えば、小さな政府、強い対外政策、伝統的な価値観の3つが重要な価値観とされているが、トランプ大統領は、そうした価値観には背を向けている。この為、11月の中間選挙で出馬せず、引退を表明する共和党議員が出てきている。特定の議員名は出さないで共和党、民主党のどちらを支持するかを尋ねた調査では、民主党が高い支持率を示す調査結果が出ており、共和党は焦り始めている。

 

トランプ外交の特徴としては、既存のやり方を壊したいという衝動が根底にある。エスタブリッシュメントを無視し、パリ協定や国連などの多国間の枠組みを軽視している。また、ディールメーカーとしての衝動もあり、自分の立場を示すことができないとディールから身を引いてしまう。無駄な介入はしないが、強いリーダーであることを示したい衝動もある。オバマ大統領が躊躇したシリア攻撃を行ったことは、その典型である。他方、専門家にまかせてしまうという側面もある。昨年末に発表された一連の戦略文書「国家安全保障戦略」、「国家防衛戦略」、「核戦略の見直し」のカバーレター以外は、専門家が作った内容で意外性はなかった。

 

今週行われた日米首脳会談で、両首脳は、「貿易に関する新たな協議」を開始することで合意したが、会談の場では双方の立場を確認するに留まった。現在の厳しい安全保障環境で、良好な日米同盟を維持する為には、トランプ大統領が「日本に圧力を掛けた結果、こうした成果が得られたのだ」というお土産を準備する場面が出てくるかもしれない。しかし、こうした場面でも日本は決して卑屈になる必要はない。

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今後、日米関係は、貿易交渉で難しい場面があるかもしれない。佐藤は副大臣として、長期的な国益を見据えながら、慎重な外交の舵取りに努めて参りたい。

 

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