本日、自民党本部にて国際局の外交関係勉強会が開催され、「最新の朝鮮半島情勢について」と題して、神戸大学大学院国際協力研究科教授、木村幹氏の講演があった。講演の要旨は以下の通り。

 

  日韓関係と南北関係について関心が高まっているが、マスコミで誤った報道がされることがあり、そのあたりの誤解を解くように話をしたい。また、韓国外交についても触れたい。

慰安婦合意を巡って、文在寅は支持率の底上げのために、慰安婦問題を提起したといわれるが、これは明らかに間違った説明だ。昨年12月末から今年1月初旬の段階で、文在寅の支持率は約70%と極めて高く、支持率底上げの必要はなかったのが事実である。そもそも対日関係の問題提起をしても、支持率はほとんど動かないのが、現在の韓国の国内状況である。また、平昌五輪と南北対話を巡って、文在寅政権は「従北左派」で、北朝鮮との対話はアメリカの意思に反しているとの説明がされることがある。しかし、実際には文在寅政権は北朝鮮よりも対話に前向きで、対話に向けて、アメリカからの了承は何度も取り付けている。実際に、2017年7月の米韓共同声明では、トランプ大統領は朝鮮半島の平和統一のための環境作りあげるにあたり、韓国が主導的役割を果たす事を支持している。

  文在寅政権においては、具体的な対日外交の目標が欠如しているようで、言い換えれば、「特に成し遂げたものは存在しない」とも言える状況にある。例えば、文在寅の慰安婦合意についての対応をみても、具体的な問題解決への関心は低い。昨年8月18日には徴用工の対日請求権は認めないとする従来の日韓両政府の共有認識を覆したが、1週間後の安倍総理との電話会談では、「昭和40年の日韓請求協定で解決済み」との認識を示し、行き当たりばったりの対応が目立っている。韓国外交においては、日本の重要性が著しく低下しており、韓国は日本を重視しているという前提は通用しない。よく言えば柔軟、悪く言えば場当たり的な相手国の外交にどう対処するかが課題となる。

 

  出席した国会議員からは、「日本には明確な外交戦略を持っていないということだが、南北対話を通じて韓国は北朝鮮と何がしたいのか」との質問があった。木村氏からは「戦争を回避し、現状を維持しようとしている。20代から30代の若者達は、自分たちの生活に影響がなければそれが一番いいと思っており、南北会談も熱狂的に歓迎しているわけでもない」とのコメントがあった。

 

 木村氏による韓国の世論動向や外交姿勢の分析は、拉致、核・ミサイル問題に直面する日本にとって、厳しい現実を突きつけられているようだ。しかし、佐藤は外務副大臣として、日米韓の連携を重視している。激動する朝鮮半島情勢、同盟国アメリカの動向も注視しながら、日本外交をリードしていきたい。