佐藤が外務省公務で海外出張中の為、外交国家ビジョン策定プロジェクト・参議院自由民主党朝鮮半島問題プロジェクトチーム合同会議の様子を秘書から皆様に報告いたします。

 

 本日、参議院にて掲題の合同会議が行われ、「平和主義に基づく現実的外交・安全保障について」と題して、 政策研究大学院大学 学長 田中明彦氏の講演がありました。講演の要旨は以下の通りです。

 

 現在、国際社会は日本の繁栄の礎となってきた自由主義的な国際秩序が挑戦に曝されている状況にあります。リーマンショックの頃からグローバル化や自由主義経済の停滞感が漂い始めましたが、ロシアはジョージアで戦争を行い、クリミアを武力で併合しました。中国は南シナ海を埋め立て軍事要塞化し、地政学的な観点から実力行使をしています。北朝鮮は核・ミサイルの開発を進めており、日本の直接的な脅威となっています。

 

 北朝鮮は、制裁強化によって核・ミサイルを放棄するかといえば、その可能性も低いと思われます。1年や2年で解決するシナリオを現実的ではなく、5年、10年、20年とかかるかもしれません。米国は冷戦の初期の1950年に対共産圏輸出統制委員会(COCOM)で共産主義国への輸出規制などを行い、長期的にソ連を封じ込め、1991年の崩壊まで待ったという例もあります。誤算や誤認によって北朝鮮が暴発する懸念もあるので、日本は弾道ミサイル防衛を強化し、敵地反撃能力を持つなど抑止力を高める必要があります。 

 

日米首脳会談でも話題になった「自由で開かれたインド太平洋戦略」は、昨年アフリカ開発会議(TICAD)で日本が提案したものです。カリフォルニア、メキシコ、ペルーからニュージーランド、オーストラリア、インド、南アフリカくらいまでの地域を想定しており、今後、成長が見込まれ、経済の中心となる地域と日本が連携していこうという考え方です。しかし、アジア・アフリカ地域は、活力に溢れる地域である一方、紛争が多発している地域と隣り合わせです。こうした地域では人間の安全保障が脅かされているので、日本の外交戦略として「世界の人間の安全保障を考えるのが日本である」ことを訴えていくのはいかがでしょうか。学校建設、職業訓練など、日本は長期的に和の精神をもって、相手国が自立できるような支援を行ってきた実績があります。 インド太平洋地域が平和で安定することが、日本の長期的な利益になるのです。 

 

アメリカは自国第一主義を掲げ、理想を語らなくなってしまったので、日本が世界の自由主義的な価値を守ることを訴えなければならないのではないか。そうでなければ、経済規模からして中国が独自の価値観でその役割を果たしてしまいます。アメリカは依然、世界最強の軍隊を持っており、自国の能力に自信を取り戻したら、必ず揺り戻しがあって、国際社会に帰ってきます。それまでの繋ぎでも良いから、日本が人権や法の支配といった自由主義的な価値観を守ることを国際社会で訴えることが必要ではないでしょうか。  

 

出席した参議院議員からは、同感である、大変感銘したとの感想が聞かれました。