前回の憲法9条問題に続いて、自民党の憲法改正推進本部で「緊急事態条項」の扱いについて議論が行われた。災害や有事などの緊急事態の発生時に、迅速かつ効率的に政府が国民の生命・財産を守るべきか、という問題意識が憲法改正時の緊急事態条項の議論へとつながった。

 

緊急事態令の宣言で言うと、ここ数年ではパリで発生したテロの後にフランス政府が実施した例が記憶に新しい。我が国の緊急事態条項による憲法改正の論点としては、総理大臣への権限集中、財産権などの人権の一部制限、国会議員の任期延長及び解散制限が上げられる。東アジア情勢の緊迫化などを背景に緊急事態条項の必要性を訴える議員もいれば、議論の進み方が拙速であると反論する議論もあった。

 

大災害時には、救援車両の通行が放置された車両に邪魔される事例が多発した。車の所有権が絡むため、自衛隊といえども許可なく撤去することが出来なかったためだ。極端な事例に聞こえるかもしれないが、現代日本で実際に起こったことでもある。東日本大震災時の救援作業時の反省から法律が一部改正されたが、まだまだ不十分である。

 

また住居なども同様に人命救助の妨げになることもあるから、場合によって「居住及び移転の自由」を制限せざるをえない状況も想定される。万が一にも住人の思い出が詰まった住居を撤去しなければならない事態については、事前にしっかりと議論しなければならない。個人の権利と公共の福祉は時に対立する場合もあるが、国の安全を預かる政府としては個人の権利へ可能な限り配慮しながらも、公共の福祉を優先せざるを得ない時があると考えている。

 

緊急事態条項とは、こういった個々の事例に対して、平和ボケの思考から脱して、如何にして一人でも多くの人命を救助できるか、ということでもある。佐藤は今後も議論に参加し、行方を注視していきたい。