欧米関係がギクシャクしている。イギリスのインテリジェンス情報がアメリカを通じてロシアに流れたことに、メイ英首相は激怒したという。NATOの防衛費負担問題で揺れている、欧米間の緊張を象徴するような出来事である。慶應義塾大学の細谷雄一先生から「欧米諸国の現状とNATOの将来」と題して、このような現在の欧米間の軋轢について、詳しく解説いただいた。

                              

現在欧州は、様々な脅威に取り囲まれている。東の脅威はロシア、南の脅威はイスラム過激主義や難民・移民、そして内なる脅威はテロやイギリスのEU離脱など。そしてNATOを軸とした対米関係では、財政事情が厳しい中で防衛費の負担率を求められている。米国がGDP比で3.5%以上の国防予算を支出しているにもかかわらず、欧州の多くの諸国はGDP比2%以下というのが現実だ。痺れを切らしたトランプ米大統領は、NATOとの首脳会談で、NATO条約5条に記載のある集団防衛条項を確約する文言を削除するよう要求した。前代未聞の出来事である。こういった経緯から、今後のNATOとアメリカの関係は不透明であり、NATOの存在意義も揺らいでくるであろう。

 

細谷先生は講演の最後に、日米同盟にもおいても同様の議論が起きないよう注意すること、そして日米貿易で軋轢が生じても安保問題に転嫁させないよう注意することが重要であることについて言及された。NATOと米国との関係を対岸の火事として放置せず、今後の日米関係維持への参考にしなければならない。