朝鮮半島の緊張が非常に高まっています。韓国には在留邦人が3万8千人、短期渡航者の邦人は1日当たり約1.9万人います。有事の際に、どうやって彼らを保護するかは喫緊の課題です。本日の外交防衛委員会で在韓邦人の保護について防衛省・外務省に質しました。
 
一番の問題点は、在韓邦人保護を目的とした自衛隊と韓国軍・韓国警察当局との共同訓練を行ったことがないことです。民航機や民間船舶で輸送できれば良いのですが、緊張が高まった場合、組合等が反対すれば運行は不可能ですし、政府も命令できません。実際にイランやイラクでの例もあります。自衛隊の輸送手段も使えるようにしておく必要があります。平和安全法制の下、外国での邦人保護は現地の警察当局との連携が条件ですが、韓国政府と自衛隊の受け入れ協議ができていない状況です。ただ、朝鮮半島有事には多くの韓国の方々が日本に避難してくる為、韓国政府は受け入れを要望するでしょうし、在日米軍や日本の協力無くして韓国防衛はままならない現実もあります。であれば、自衛隊の輸送手段の韓国受け入れ・連携の協議も無理筋の話ではないはずです。
東日本大震災の際に自衛隊が活躍できたのは、大地震を想定した訓練を、事前に行っていたからです。有事に備え、万全の態勢を整えるためには、韓国軍や在韓米軍との事前訓練は欠かせません。この点に関し、防衛省は「検討していく」としました。
 
次に、ソウルが被害を受けた場合の具体的な問題点を防衛省・外務省に指摘。国境付近の京畿道、ソウル、仁川には約2600万人もの人口が集中しています。有事の際は大混乱の恐れがあり、その中には邦人も含まれます。
 
「ソウル日本人学校」には360人の子供達が通っています。この日本人学校は以前は漢江の南側にありましたが、現在は北側にあり、校舎はガラス張りで砲撃に脆弱です。また、シェルターはなく、近くの龍山基地に逃げ込もうとしても、有事の際、閉鎖される可能性も高く、日本人だけ優先というわけにもいかず、また、北朝鮮の砲撃目標でもあります。実際、米軍は北朝鮮の砲撃を避けるため、南方の平沢基地に移転予定です。さらに、金浦、仁川の両国際空港は漢江の南側にあり、川幅が1キロある為、朝鮮戦争の時に北朝鮮軍を阻止する為に橋を爆破したように、万が一、川を渡れなくなった際には退避は困難になります。利便性ばかり追求し、安全面を考慮せずに設置した結果です。この点を外務省に指摘し、日本人学校に職員を派遣している文科省にも視察の必要性を促しました。
 
また、短期渡航者の情報把握も課題です。外務省からは「旅レジ」への登録や「スポット情報」の提供を推進しているとの回答がありましたが、それらは一般国民に浸透していないのが現状です。個人情報保護の観点から航空会社の持つ渡航者情報も、緊急時でも外務省に渡せません。短期渡航者の把握ができないのが現状です。法改正等の必要性を、外務省に質しました。
 
最後に「国民保護ポータルサイト」のモバイルサイトの整備を内閣府に働きかけました。スマートフォンからのアクセスでも、容易に情報が得られるように改善していくとの回答がありました。
 
自衛官出身の安全保障と危機管理の専門家として「憂い」があるのに「備え」をしないような無責任を見逃すわけにはいきません。今後も、最悪の事態を想定し、わが国の「備え」に尽力します。