参議院自民党の政策審議会において、米国政治研究の第一人者である東京大学久保教授の講演会が開催された。

 

講演では、アメリカが置かれた状況やトランプ氏の当選を支えた支持層の分析から始まり、日米関係まで幅広い話題に及んだ。白人労働者の多くがトランプ氏に傾いた理由については、失業率、貧困率、平均寿命の低下、自殺率、薬物・アルコール中毒などのデータを引用しながら、具体的にお話いただけた。アメリカ社会の変容を考慮せずに、トランプ氏の当選は説明できないとのことである。これを久保教授は、白人労働者による疑似革命と呼んでいたのが印象的であった。

 

またトランプ政権の性格について、久保教授はかなり悲観的な見方をしていた。政策実行の責任主体が曖昧であり、事務方への介入が続けば、トランプ政権は今まで以上に混乱する可能性を指摘。一方トランプ大統領個人に関しては、政策の細部への理解が浅く事実誤認の多いことを、久保教授は懸念していた。ホワイトハウスの伝統に染まっていないという意味で型にはまらない大胆な政策を打ち出す可能性がある一方、直感・衝動・無知に基づいた決定には、今後も世界各国が振り回されることも十分考えられるとのことだ。

 

日米首脳会談が成功に終わり、首脳間の信頼関係が深まったことは事実だ。しかし、今後ホワイトハウスが主導して安全保障問題に取り組むのか、それとも国防省や国務省などの実務家が担うのかによって、日本への姿勢も変わってくる可能性がある。首脳間の個人関係に安心することなく、米国の出方をしっかりと見極めていきたい。