7月31日(金)、日本会議関東(準)・首都圏合同議連研修会において佐藤がパネリストを務めました。杏林大学名誉教授である田久保忠衛日本会議会長の基調講演「中国の南シナ海での軍事基地化がもたらすもの」に引き続き、パネルディスカッションをしました。テーマは「中国の米戦略について」と「我が国のシーレーンの経済封鎖について」です。

中国の米戦略については、中国が主導するアジア・インフラ投資銀行(AIIB)に対しては注意を要することを指摘し。そして、中国の軍事戦略である「接近阻止、領域拒否」(A2AD)についてお話をしました。

50ヶ国が署名し、本格的に始動したAIIB。しかし、融資に関しては公正なガバナンスが確立できるか否か依然として不透明なままです。出資比率などにおいて中国が大きな影響力を持つAIIB。中国の国益に資するような投資が行われないか、客観的に監察していく必要があります。

A2ADは、中国と第1島線の間の海域を自分の海とし、第2列島線より大陸側の海域において米軍が自由に作戦を展開することを阻止するという戦略構想です。特に中国は、第1列島線より大陸側の海域での優位性を確立すべく活発な動きを見せており、例えば、2013年には「防空識別圏」を東シナ海に設定しました。

我が国のシーレーンの経済封鎖については、海上交通路(シーレーン)が事実上1本しかないこと。そして、日本船籍であっても事実上外国人船員たちによって運航されていることを指摘しました。

日本は経済活動や生活に必要な石油の8割を中東に依存しています。つまり、主要なシーレーンが南シナ海、マラッカ海峡をとおる1本しか事実上ないのです。南シナ海における中国の人工島の建設や、飛行場の建設などが、如何に我が国の安全保障に大きな影響を与えるのかが、この1つの事実からも見て取れます。

日本船籍を運航する外国人船員については、仮に航海の安全が確保できないような事態が生じた場合、乗船拒否や運航拒否に至るリスクが考えられます。「何で、他国のために危ない目に遭わなければならないのか」となるのが普通でしょうから。そうなると、船員を雇用するコストも上り、保険料も上り、さらに、危険海域を迂回するため日数的にも燃料的にもコストがかさみます。石油のみならず、生活物資の9割以上を海運に頼る日本にとっては、例えば南シナ海が不安定化するだけでも大変な事態です。

本日は様々な角度からお話をしましたが、日本の平和を実現する上で何よりも大切なのは、日本が置かれた状況を直視することです。日本を取り囲む国々が、実際にどのような動きを見せているのか関心を持っていくことが、現実的かつ必要なな施策を前に進める大きな原動力になります。