7月28日(火)、ついに参議院において平和安全法制関連法案の質疑が始まりました。佐藤は最初の質疑者を務めました。


今回頂いた質疑時間は118分間。佐藤からは法律の必要性、安全保障環境の変化、平和安全法制によって実現できること、リスク論に関連した自衛隊の処遇改善、そして法案に対する地方議会の声など、様々な視点から質問をしまた。





まず法律の必要性についてです。平和安全法制は安全保障環境が厳しさを増す中、現実問題として法的隙間がある現行の防衛法制を改善しようとするものです。根拠法規がなければ、これから対処すべき事態が起きようとも、自衛隊は1ミリたりとも動けないからです。


では、何故今なのか。実は自衛隊は、根拠法規ができたからといえ、直ぐに任務が遂行できるわけではありません。必要な予算を得て、人員と装備を整え、必要な訓練を繰り返すことではじめて任務を遂行できるようになります。つまり、時間がかかるのです。現時点においても法的隙間がある。換言すれば十分に対応できない事態がある。しかも、それらの事態はいつ生じるか分からない。だからこそ一刻も早く法的隙間を埋め、対応できる体制を整えなければならないのです。


安全保障環境の変化については中国の活発な海洋進出の動きなどについて紹介の上、質問しました。中国は1950年代以降、“力の空白”を埋めるかのように、時に武力を用いて周辺地域に進出しました。その顕著な例が西沙諸島や南沙諸島への進出です。しかも、それに類する動きが東シナ海でも見られます。それが16基もの構造物を設置しつつ、一方的に中国が開発を進めている、日中の地理的中間線付近におけるガス田開発です。16基の構造物と中国が設定した防空識別圏(ADIZ)を重ね合わせると、ガス田群がADIZの真ん中に構築されていることが分かります。資源エネルギー庁の説明によれば、商用として採算が見込まれるほどの埋蔵量ではない同海域。そうした場所に、これだけの規模の構造物を設置するとは不思議なものです。


平和安全法制によって実現できることについても質問しました。取り上げた論点の一つは在外邦人等の輸送について。例えば、朝鮮半島において存続危機事態が生じた場合です。日本は直接攻撃されていないものの北朝鮮による韓国への武力攻撃が発生した場合、韓国に滞在している日本人や諸外国の民間人を日本に避難させることが想定されます。現在、韓国に滞在する日本人は短期滞在者を含め約5.6万人。それに諸外国の民間人も併せて避難させるとなると十万人規模の輸送を行うことが見込まれます。この規模に対応するには民間船舶や民間機だけでは限界があり、米国の艦艇なども輸送作戦に参加することになります。しかし、仮に邦人を輸送中の米艦艇が北朝鮮などから攻撃を受けた場合でも、現行法では米艦を防護することはできません。日本が攻撃されていないにも関わらず米艦を防護することは国際法上、集団的自衛権の行使に当たり、現行法ではそうした事態を想定していないからです。つまり、国民のいのちが危険にさらされていても、現状、自衛隊は対応することができないのです。平和安全法制ではこの法的隙間を埋めるべく法改正をし、自国や自国民を守る場合に限り、限定的に集団的自衛権を行使し、米艦を防護できるようにしています。


佐藤が当選以来一貫して取り組んでいる自衛隊の処遇改善についても、いわゆる自衛官のリスク論に関連して2つの質問をしました。1つ目は「生存叙勲」に関する件です。自衛隊の幹部の中でも現場において中心的役割を担う、いわゆる「B幹部」(部内選抜を経て曹士から幹部になった自衛官)の中で受賞資格者はわずかに2%。一方、いわゆる「C幹部」(曹長を経験した者のうち選抜を経て幹部になった自衛官)は90%以上が受賞資格者となります。国としてもっと、現場において中心的役割を担う「B幹部」の処遇に目を向け、努力に報いることが必要です。本件、防衛大臣から、処遇改善に向け「不断の努力をしていく」旨ご回答を頂きました。


2つ目は「賞じゅつ金」についてです。賞じゅつ金とは、隊員が任務に従事する中、万が一の事態に至った場合に支払われる、いわば補償金のことです。現状、自衛官の賞じゅつ金は原則6000万円となっています。一方、地方公務員である消防吏員の場合は9000万円です。国家国民のために業務に邁進する自衛官。やはり、自衛官にも相応の配慮が必要です。本件、総理から、「今後も任務に相応しい名誉を付与すべく努めていく」旨ご回答を頂きました。


質疑の中では、法案に対する地方議会の声として、7月14日に可決された石垣市議会の意見書「安全保障関連法案の今国会成立を求める意見書」にも触れました。参考までに、以下、全文をご紹介します。


(以下、原文ママ。下線部、佐藤事務所追記)


安全保障関連法案の今国会成立を求める意見書


 安倍内閣は、去る5月14日に平和安全法制について閣議決定を行い、翌日の15日に国会に提出し、充分な審議時間を確保するため今国会の会期を9月27日まで大幅に延長した。
 近年、アジア太平洋地域をめぐる諸情勢をはじめ我が国を取り巻く安全保障環境は、いっそう厳しさを増しており、私たちの住む石垣市の行政区域の尖閣諸島においても中国公船の領海侵犯が日常茶飯事の状態にあり、漁業者のみならず一般市民も大きな不安を感じている。こうした状況から国民の生命と安全、平和な暮らしを守るのは、国、政府の最も重要な責務となっている。
 我が国の安全を守るためには、日米間の安全保障、防衛協力体制の信頼性、実効性を強化することが求められており、そのためには、平時からあらゆる事態に対処できる切れ目のない法制を整備する必要がある。
 また、我が国の平和と安全のためには、これまで我が国が果たしてきた役割と実績を踏まえ、国際社会の一員として責任ある国際協力活動を行うための法制を整備する必要がある。
 よって、国におかれては、我が国の安全と国民の生命、そして国際社会の安全を確保するための平和安全法制について徹底した議論を進め、平和安全法制の今国会での成立を図るよう要望する。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

平成27年7月14日
石 垣 市 議 会


(以上)


これが国境に位置する現地の声です。沖縄県の国境の島からの切実な意見書。重く受け止めたいと思います。


佐藤は平和安全法制に関する特別委員会(平安特)において(筆頭)理事を務めます。これから約2ヶ月、目まぐるしい日々が続きますが、一人でも多くの方にご理解を頂けるよう、誠心誠意、全力で取り組んでまいります。


佐藤学校仮入校