【世界遺産登録:韓国徴用工は"victims"(犠牲者)なのか?】

7月10日(金)、内閣部会・外交部会・文部科学部会・国際情報検討委員会合同会議が開催されました。テーマは、注目が集まる「産業革命遺産の世界文化遺産登録」についてです。

先日、ユネスコ世界遺産委員会において、「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産一覧表への「記載(登録)」が決定されました。8県11市にまたがる23資産が、世界遺産として登録されたことは、本当に喜ばしいことです。

しかし、そんな喜びに冷や水を浴びせる事態が日本の外で起こっています。情報発信と世論形成を巡る韓国との駆け引きにおいて、日本が事実上劣勢に立たされているのです。

韓国は「明治日本の産業革命遺産」が登録に向けて本格的に動き出すと、歴史問題を絡めて積極的な情報発信を行い、日本による「強制労働」が過去にあったとする自国の主張に同情的になるよう世論の形成に取り組みました。結果、例えばイギリスで大きな影響力のある新聞では、今回登録された日本の世界遺産において「奴隷労働」があったとする報道まで出る始末。また、今回日本が、世界遺産登録決定に際し発表した声明を見てみても、「forced to work」(働かされた)という表現が盛り込まれています。これはforced laborという違法労働ではないとの政府の説明ですが、against their will and forced to work 並べた表現であれば、正当な労働とは取らない人がほとんどだと思います。ネイティブに聞いてもほぼ同じ意味で取る方も多いようで、forced laborの意味を聞くとforced to workという答えもあるようです。やはり、広報戦で負けています。

さらに、佐藤が驚いたのは、日本の声明文書の中で、労働者を「victims」(犠牲者)と表現していること。産業遺産で働かされた、朝鮮人(当時は日本人)労働者は「victims」であると、日本政府が認識していることを世界に知らしめたことになります。これは過去の見解にはありません。

本日の部会の議論を通じて浮かび上がったのは、「登録ありき」という姿勢。登録を焦るあまり、現実問題として国益を害する結果との批判もでようかと思います。今回の一件は、韓国で盛り上がりを見せる徴用工問題にも飛び火する可能性があります。更に松下村塾や佐渡金山の世界遺産登録にも影響が出ると思います。まさにこれからが大事。

情報を巡る戦いは、日本国内で認識されている以上に壮絶で、日本への影響も深刻です。これ以上国益を害するような事態が起きないよう、あらゆる努力をしなければなりません。佐藤もそのために、ますます汗をかいていきます。