本日(6月10日)、「防衛省設置法」改正案が成立した。


法案の内容は、防衛装備品の研究開発から調達まで適正かつ効率的に遂行するための防衛装備庁新設、統合運用強化のため部隊運用に関する業務の統幕への一元化などが盛り込まれているが、目玉は、内局の所掌事務規定の見直し、そして、制服組と背広組の関係の見直しだ。


これまで同法12条では、「官房長及び局長と幕僚長との関係」に係る条文で、以下のように規定されていた。


官房長及び局長は、その所掌事務に関し、次の事項について防衛大臣を補佐するものとする。
1.陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊又は統合幕僚監部に関する各般の方針及び基本的な実施計画の作成について防衛大臣の行う統合幕僚長、陸上幕僚長、海上幕僚長又は航空幕僚長(以下「幕僚長」という。)に対する指示
2.陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊又は統合幕僚監部に関する事項に関して幕僚長の作成した方針及び基本的な実施計画について防衛大臣の行う承認

3.陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊又は統合幕僚監部に関し防衛大臣の行う一般的監督



この条文の下線をつけた文言が、防衛大臣に対する軍事の「最高の専門的助言者」(自衛隊法第9条2項)たる幕僚長の上に、あたかも内局官僚(文官)が位置し、大臣の行う指示、承認、一般的監督をすべて「補佐」することとなっており、これが「文民統制」ならぬ「文官統制」の悪しき根拠となっていたのだ。


本来の「文民統制」とは、国民から選挙によって選ばれた政治家たる防衛大臣が、制服組、背広組すべてを統制するものであるが、警察予備隊創設を主導した占領軍総司令部民政局別室(略称:CASA)の意向であった「シビリアン・スプレマシィ」(文民優位)を、CASAの二世通訳が「文官優位」または「文官統制」と誤訳したことが原因であり、そして旧内務官僚の「軍人はほぉっておくと、何をするかわからないので、しっかり押さえつけねば」という考えによって、誤訳が放置され、かつ悪用されてきたという見方もある。


法改正後は、条文が「官房長及び局長並びに防衛装備庁長官は、統合幕僚長、陸上幕僚長、海上幕僚長又は航空幕僚長が行う自衛隊法第9条第2項の規定による隊務に関する補佐と相まって、第3条の任務の達成のため、防衛省の所掌事務が法令に従い、かつ、適切に遂行されるよう、その所掌事務に関し防衛大臣を補佐するものとする」と改正されることとなる。


法律に書いてある文章は難解だが、平たく言えば「軍事」に関する補佐は各幕僚長が、「政策」的補佐を内局官僚が、それぞれ専門的見地から行うことになるということだ。


今回の法改正について、一部のメディアや野党から「文民統制の弱体化を招き、制服組が暴走した場合に歯止めが利きにくくなると懸念される」のように、いかにも「再び軍靴の響きが」調の意見も聞こえていたが、それぞれの専門的な立場から、一丸となって大臣を支える組織に、成長してくれることを切望してやまない。


また、このテーマは、佐藤の当選直後から、防衛関係議員の石破大臣、浜田大臣、中谷大臣ら諸先輩方とともに、防衛省改革の一環として推進してきたものだが、民主党政権時に反故にされ、今回、ようやく法改正に至ったものであり、大変感慨深いものがある。
今回の法改正で、初めてわが国の防衛体制において、健全な「シビリアン・コントロール(文民統制)」が顕現されることとなる。






佐藤学校仮入校