本日、参議院本会議にて、佐藤が自民党を代表して、「国家安全保障戦略」、「防衛計画の大綱」および「中期防衛力整備計画」について質問しました。要旨は以下の通りです。

1.国家安全保障戦略について

昭和32年に策定された「国防の基本方針」に代わる国家安全保障戦略の策定は、戦略性をもった防衛力整備を実施する上で、長く待望されていたものであります。昭和30年代から現在まで、冷戦の終結、中国の台頭、北朝鮮の核・ミサイル開発など、我が国の安全保障を取り巻く環境は大きく変わりました。そして何より、我が国自身が大きく成長し、成熟しました。50年以上という時の長さを考えると、新たな戦略の策定は、むしろ遅すぎたと言えます。

 一昨年の総選挙で総理は、民主党によって大きく傷つけられた外交を取り戻すと主張し、国民の信任を得ました。確かに民主党政権時、総理が日米中正三角形論を公に唱え、「日米と日中の辺の長さが同じなのはおかしい」と指摘されると「必ずしも三角形の辺の長さが同じとは認識していない」と変節。辺の長さが違う三角形は正三角形とは言いません。

普天間飛行場移設もそうです。当てもなく「国外だ、最低でも県外」と公言し、迷走の末に「学べば学ぶにつけ沖縄海兵隊の抑止力の意義が分かりました」と辺野古に戻った。これでは沖縄県民も自衛隊の現場も堪らない。私も連隊長時代、隊員に「君たち一人一人の汗と頑張りが日本の抑止力に繋がる。耐えろ!」と言っていたのに、最高指揮官の総理が「抑止力が分からなかった」と言われたら組織が成り立ちません。

総理は、一昨年の総選挙時、民主党外交・安全保障政策の何が問題だと考えたのか、また、それを解決すべく、どのような方向性を今回の安保戦略に入れ込んだのか、お聞かせ下さい。

 また、安保戦略には、国家安全保障政策を支える社会的基盤の強化として、「我が国と郷土を愛する心を養う」ことを掲げています。愛国心を安保戦略に入れ込んだ理由と、それを涵養するための具体的方策について、総理のお考えをお聞かせ下さい。

 総理は、今年の年頭所感で、「『強い日本』を取り戻す戦いは始まったばかり」、「これまで以上に、世界の平和と安定に積極的な役割を果たす」と明言されました。その中心にあるのが、国家安全保障会議であると思います。国家安全保障会議は、昨年12月4日の設立から4か月が経ちましたが、設立以前とは何がどう変わったのでしょうか。国家安全保障会議のこれまでの活動に関する評価をお伺いします。

2.大綱中期について

次に、防衛大綱・中期防について伺います。

民主党政権下で策定された前大綱中期は、情報収集・警戒監視を過度に強調したもので、抑止力という観点では疑問がありました。抑止力はやられたら痛いと相手が思わなければ抑止にはなりません。即ち警戒監視だけでは痛くもかゆくもなく、警戒監視から対処力までがあって初めて抑止が効いた防衛力と言えます。また、目玉であった「動的防衛力」の考え方も判然としませんでした。防衛力を単に保持するだけでなく、運用水準や活動量を高めることが抑止力になる、という説明でしたが、そんなことは当たり前です。そもそも防衛力は動的なものであって、動的でない防衛力など存在しません。

前大綱中期で、防衛予算や定数を削減したことも大きな過ちです。中国が20年以上にわたり国防予算の2ケタ増を続け、米国は国防予算の大幅な削減を行おうとする中、「思い切った効率化・合理化」を掲げるのは時代錯誤であり、我が国の安全保障を危機に陥れる恐れがありました。現在の大綱中期が示す、防衛力の「質」と「量」を必要かつ十分に確保するという考え方こそが、現状にふさわしいものだと考えます。

また、現行の大綱中期には、各種事態に「シームレスに対応」して、領土、領海、領空を守り抜くとの強い決意が示されています。この方針について、全く異論はありません。ただ、「グレーゾーンの事態を含め、我が国の主権を侵害しうる行為に対して実効的かつ機動的に対処する」との記述だけでは、国民に対し、現行の法制・態勢で十分対応出来るのだという誤解を与える恐れはないでしょうか。警察力を超え、防衛出動に至らない、グレーゾーン事案に対応する法制・態勢については、さらなる整備が必要だと考えますが、総理のご認識と対応方針を伺います。

南西諸島の防衛では、部隊の事前配置に加えて、航空・海上優勢の下で、焦点となる地域や島に戦力を集中する事が必要です。そのために鍵となるのが、輸送力です。この点で、現行の大綱中期は「統合輸送能力の強化」や「民間輸送力の積極的な活用」が明記されており、以前よりはるかに良くなっています。しかし、それでも自衛隊の輸送力には限界があります。民間の輸送力についても、情勢緊迫時や有事の利用には制約が出ます。輸送力の確保について、具体的な方策をどうお考えか、総理にお伺いします。

また、南西諸島防衛では、離島に住む国民の保護が重要課題になります。尖閣のような無人島ばかりではなく、有人離島も多いのが実情です。しかし、大綱中期には、国民保護に関する具体策が書かれていません。南西諸島の港や空港のインフラは脆弱で、自衛隊の艦艇や航空機が運用できない所も多くあります。南西諸島における国民保護に関する課題と、それを解決するための具体策を総理にお伺いします。

 現行の大綱中期では、編成定数について、25年度末の定数で現状維持、つまり下げ止まりとされました。前大綱・中期防と比べると大きな改善です。しかし、現状維持では、既存部隊の廃止・縮小をしなければ部隊の新編は出来ないことになり、実質的な要員確保は困難です。
例えば、海自の潜水艦は16隻態勢から22隻態勢となりますが、海自の人員は増えず、今いる隊員の中でのやりくりであり、艦艇部隊の中には充足が70%で運用しているものもあるようです。また、新装備の導入にあっては、第一線部隊から要員を抜いて教育訓練を実施するため、部隊の人員不足が常態化する恐れもあると考えます。これらの点について、どう対応していくのか、防衛大臣のご説明を願います。

現中期防の予算水準は「24兆6,700億円程度」とされました。3期ぶりの増額は大変喜ばしいことです。しかし同時に、「調達改革等を通じて、おおむね7,000億円程度の実質的な財源の確保を図る」とされております。

 防衛装備品の調達については、これまでにも様々な効率化が図られてきました。この7,000億円の捻出のために行われる部品等のまとめ買いは、確かに単価の低減となるものの、継続的な調達ができないため、生産基盤の弱体化につがる恐れがあります。また、スペックダウンや器材整備の次期中期への先送りなどを危惧しております。これは装備の稼働率低下につながり、戦力の低下にもなりかねません。こうした調達に関する問題をどうお考えか、防衛大臣のご見解をお聞かせ下さい。

最後に、隊員の処遇について伺います。安倍政権になってから、厳しい財政状況にも関わらず、隊員の実員数は2年連続の増となりました。現行の大綱中期では、隊員の処遇に関わる事項も充実し、特に初めて栄典について記載されました。現場の隊員は名誉と誇りがあれば、それがたとえ危険な任務でも、総理の命令に従い、任務完遂に全力を尽くします。隊員に焦点を当てたのは画期的なことであり、安倍総理のご英断だと思います。そこで、隊員の名誉・処遇の充実に関し、我々自民党が求める統合幕僚長の認証官化も含め、さらなる措置を訴えるとともに、総理のお考えをお伺いして、私の質問を終わります。