おはようございます。今日はクリミア共和国でロシアへの編入を問う住民投票が行われます。

それを巡り、国連では住民投票無効とする安保理決議案が提示されたが、露の拒否権で否決され、ウクライナ国会ではクリミア自治共和国最高評議会の全権を緊急的停止する決議を採択する等住民投票無効或いは無力化する欧米のいろんな動きが出てきています。

一方、露やクリミア政府は一歩も引かない姿勢を崩しておらず、クーデターで政権を奪取した現ウクライナ政府を認めていない。クリミアでの本日の住民投票は粛々と行われ、可決の公算大だ。それを受け、ロシア議会では21日からロシア編入が可能となる法案の審議が始まり、法的にクリミア共和国のロシア編入が可能となる態勢を整備する構えだ。

クリミアでの住民投票後の焦点はロシア対欧米の制裁合戦とロシアが実際にクリミア共和国を編入するか否かだ。

欧米の制裁合戦では、特にEUがどれだけ一枚岩になれるか、共同制裁は限定的との見方も強い。更に経済や電力等をウクライナに頼るクリミア共和国へのウクライナ政府による制裁も想定されるが、その場合、同じロシア系住民の多いウクライナ東部の治安は更に不安定化が予想される。

また、法的にロシアがウクライナを編入可能となる態勢を取ったとしても、実際に行うか否かはまだ不透明だ。グルジア紛争当時、南オセチア、アブハジアの独立をロシアは承認したがロシア編入は未だ行っていない。クリミア編入による経済的負担や欧米の反応特に経済制裁の中身を見ながら決定するとの見方もある。他方、ロシア国内の編入歓迎の世論もある。これから目が離せない側面だ。

地政学的にクリミア半島は、バルト海からボルガ川を経由して黒海・地中海へ進出する際の戦略的要衝。ロシアのボルガ川造船所から艦船を地中海に出す際にも重要な地点。同半島が欧米の影響力が強まることはロシアにとっては軍事的にも死活問題だ。まさに冷戦時代と同様、力による国益確保の動きがウクライナで生起している。

これは極東や西太平洋にとって他山の石ではない。

ロシア海軍の地中海進出にはクリミア半島が要衝だが、極東のロシア太平洋艦隊の太平洋に進出には宗谷・津軽海峡(北海道)が重要。同じように中国の艦艇が太平洋に進出するためには台湾・南西諸島(特に先島)が要衝だ。

特に中国はウクライナ情勢におけるロシア対欧米の駆け引き、国連等の動きを注視している可能性大だ。

自国民保護の為に軍隊を派遣する用意があるとするプーチン氏の言動は、中国がダマンスキー島占領時に農民保護目的で軍を派遣したことと同じ論法だ。

ロシアがクリミア共和国を編入或いは実質上支配下に置く動きは、中国が尖閣諸島や台湾を占領する際に活用できる教訓を多く提供する可能性は否定できない。

日本は力による現状変更は認められない立場を堅持すべきだが、力無き外交は無力だし、国際的規範が通用しない相手への備えを行う必要性深刻に認識すべきだと思う。

備えあれば憂いなし、が、憂いなければ備えなし 、になってはいけない。