またもや中国の法律戦!実質的な「海洋識別圏」設定だ。

中国が、南シナ海で自国の管轄権が及ぶと一方的に主張している海域(ほぼ南シナ海の全域)に他国の漁船が入る場合、中国の関係部局の許可を取ることを明確に義務付ける漁業法規則を1月1日から施行した。違反行為があれば、中国当局が船を没収できる等の強制力を伴う法律だ。

中国が一方的に設定した海域は台湾やベトナム、フィリピン、マレーシア等が自国の管轄権が及ぶと主張する海域や西沙、東沙、南沙諸島も含まれているようで、到底他国は受け入れることなどできるはずもない。

まさに東シナ海に一方的に設定した防空識別圏の海洋版そのもので、今後、南シナ海に設定すると標榜している南シナ海防空識別圏の布石とも取れる動きだ。

一方的に自国の都合が良い国内法を整備し、それを他国に強要し、それに対する周辺国や国際社会の反応を瀬踏みし、反発が少なければ、更に新たな国内法を設定する等の法律戦を仕掛けるのは中国の常套手段だ。

ベトナムやフィリピンは強く反発し、米国も「挑発的行為で潜在的に危険な行為で、国際法上の根拠も示していない」との懸念を表明してはいるが、「全ての当事者は緊張を高める一方的な行動を取るべきでない」とするだけで規則の見直しは求めていない。これでは中国の翻意や行動は止められない。

東シナ海防空識別圏の設定時に、米国はそれを批判はしたが、民間航空会社が飛行計画を提出を容認した上に、バイデン副大統領が訪中時に習近平主席に、防空識別圏撤回は求めなかったことを思い出さざるをえない。今度の南シナ海の「海洋識別圏」についても、懸念は伝えるものの、事実上、関与せずの方針なのか?

これでは中国は、この規則を元に、連動した心理戦や宣伝戦を仕掛けてくる可能性は高い。即ち、武装した中国海警の大型巡視船で、無許可の他国の漁船や巡視船を威嚇し、或いは見せしめに射撃や没収等の強制措置を取る等の心理戦を仕掛けてくることは十分予想される。更に、その結果を宣伝したり、その結果、事前に漁業許可を求めた国があれば、それも大々的に宣伝することも考えられる。

南シナ海は日本の重要なエネルギーのシーレーンでもある。南シナ海の中国の覇権や管轄権強化は他人事ではない。

今後、自民党領土特命委員会としても、政府と本事案への対応を協議する。