国家安全保障会議設置関連法案 代表質問

(平成25年11月8日 参議院本会議)

 自由民主党の佐藤正久です。私は自由民主党を代表して、安全保障会議設置法等の一部を改正する法律案について質問致します。

1.国家安全保障会議の創設について

 国家安全保障会議すなわちNSCの創設は、第一次安倍内閣以来の、総理のかねてからの持論でありました。当時も関連法案が国会に提出されましたが、安倍総理が辞職された後、残念ながら廃案となってしまいました。

 それから現在までの間に、北朝鮮の核・ミサイル開発の進展、尖閣諸島をめぐる中国との緊張の高まり、海外で邦人が巻き込まれるテロの発生など、我が国の安全保障に関わる懸案が数多く発生しています。これらの中には、必ずしも我が国が有効に対処できたとは言えない事例もありました。NSCが早期に設置されていれば、我が国としての対応も変わっていたのではないかと思うと、当時の法案が廃案になったことが悔やまれます。

日本は、かつて一国平和主義、消極的平和主義との批判をされたこともありましたが、強く、そして誇りある日本を取り戻すのが安倍内閣の使命であり、私は、その中核機能がNSCであると確信しています。

 塩野七生さんの名著「ローマ人の物語」に、「国家にとって最大の責務は、国民の安全を守ることであり、それを支えたのは、ローマ市民の負託を受けて、軍事・政治両面に責任を持っていた帝王である」との記述があります。

 日本の安全保障の最高責任者たる安倍総理の、法案成立に向けた思いを、総理ご自身の言葉でお聞かせ下さい。

2.国家安全保障戦略について

次に、NSCの創設とあわせて策定される「国家安全保障戦略」について伺います。12月に策定を予定している国家安全保障戦略は、これまで我が国に欠けていた、外交と防衛にまたがる基本戦略を作るということであり、大きな意義があると考えます。

この戦略は、日本の国家安全保障の基本戦略を示すとともに、NSCにおける意思決定の基本方針となるものだと考えますが、具体的には、どのような内容を考えているのでしょうか、総理、お聞かせ下さい。

 米国や英国の国家安全保障戦略では、軍事力の基盤となる経済力の強化という観点も強調されています。更に米国では、沖縄返還に係る課題、国連安保理改革などについても、幅広くNSCで議論されたと聞いています。

我が国の国家安全保障戦略は、4大臣会合で議論されることとなりますが、経済力の強化や国連安保理への参加といった点についても、十分に盛り込むことができるのか、総理、お伺いします。

また、国家安全保障の基盤として、安全保障に関する国民の理解も重要となります。そのための教育・啓発の推進、さらに言えば、国民の軍事アレルギーを取り除くための方策、そして、わが国の政策や考え方についての対外情報発信も重要であると考えます。

現在、中国、韓国などが、領土、歴史認識などについて、独自の主張に基づく広報や宣伝戦を展開しています。我が国が如何に正しい政策や考え方を持っていても、それが対象国や国際社会に確実に伝達されなければ、意味を為さないものと考えます。

 これらについても、具体的な実施手段とともに、国家安全保障戦略に盛り込むべきだと考えますが、いかがでしょうか。

3.我が国安全保障政策の不断の見直しについて

  

次に安全保障政策の見直しについて伺います。

政府は、NSC創設と併せ、年末までに国家安全保障戦略、そして新防衛計画の大綱を策定予定ですが、日本を取り巻く安全保障環境の厳しさ、そしてその動きの速さを勘案すれば、こうした取り組みは一刻の猶予をも許さないものと考えます。

 他方、安全保障分野における憲法解釈の在り方に関しては、いわゆる「安保法制懇」での議論が続けられておりますが、その結論は安保戦略・新大綱策定に間に合わない、即ち安保戦略や新大綱は、必ずしも憲法問題に対する政府としての検討結果を前提としないものとならざるを得ません。


自衛隊が、国内外でさまざまな任務を果たしていくうえで、集団的自衛権の行使の可否をはじめとする憲法の解釈は、極めて大きな前提であります。自衛隊が活動し得る範囲、活動に際しての武器使用の在り方、日米共同の在り方など、憲法の解釈は我が国安全保障政策の根本を規定するものであります。例えば、これから最重要課題の一つである日米ガイドラインの見直し、ひいては周辺事態における我が国の取り組みの在り方にも、極めて大きな影響を及ぼすと言わざるを得ません。
 したがって、この問題に関する政府としての結論が下された暁には、国家安全保障戦略や防衛計画の大綱などの前提は大きく変わることになります。

また、最近における安全保障環境の変化は、目まぐるしく、我が国としても、この激しい国際情勢の流れの中で、その時どきに最適な姿となるよう、外交・防衛政策を絶えず調整していくことは当然であります。

 かく考えるに、如何に素晴らしい安保戦略や新大綱を策定し得たとしても、政府は、決してその成果を放置することなく、緊張感をもって、我が国安全保障の根本的なあり方を不断に検討していかなければなりません。

 総理、私は、その時々における重要問題への対処とともに、日本の安全保障の在り方に関するこうした不断の問いかけこそ、我がNSCが日々取り組んでいくべき一番大切な事柄だと思います。我が国の平和と安全について、何かがあったときだけ、或いは何かを決めるときだけNSCということではなく、日常的に緊張感をもって関係閣僚が不断に考えていくということこそが、今回のNSC法案における、最も大切な趣旨なのではないかと考えます。総理のお考えをお聞かせください。

4.政府としての情報要求の在り方について


 防衛大臣政務官として務めた経験等も踏まえつつ、我が国政府の情報面での取り組みについて一点申し述べたいと思います。
 政府の各情報部門は、日々しっかりと任務に取り組み、適切な情報を収集し、上げてきてくれます。光を浴びることは希ながらも、我が国の安全保障を情報面でしっかりと支えてくれている彼らに対し、心から敬意を表したいと存じます。

 他方、政府の情報要求については、かねてから、私は私なりに、強い問題意識を抱き続けてきました。
 

情報に関して一番大切なのは、如何なる情報をどういった視点で、そして如何なる優先順位をもって、集め、評価し、伝えていくかということです。
 例えば、北朝鮮のミサイルの発射に関してどういった事象に注意を払うべきなのか、核実験の兆候に関してならどんな情報が必要となるのか、そうした事柄について、政府が何をしようとしているのか、どんな判断をしようとしているのかに照らし合わせながら、政策部門から情報部門に対して、的確に情報要求を出していかなければなりません。

 今回の法案でNSCとともに、これをしっかり支えていくための国家安全保障局が発足することになります。NSCが真の意味で我が国安全保障の司令塔となるためには、内閣総理大臣の意図、政府の課題をしっかり踏まえた上で、適時適切な情報要求を出していくことが何にも増して必要となるのではないでしょうか。


 こうした観点から、情報分野におけるNSCの役割について、総理のお考えを伺い、私の質疑を終わります。


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